安藤

答えは『ゆうしようしや』、つまり『優勝者』か

 安藤は顎に手を当てて考える。

安藤

泥棒=優勝者なら、答えは決まっている

 自分でそう言った途端、安藤は強烈な違和感に襲われた。

 果たして、本当にそうだろうか? 他の可能性はないだろうか? このメッセージすらフェイクであるとは考えられないか? このメッセージに頼らない完璧な論理は立てられないか?

 全員の状況と発言を今一度整理する。

安藤

『うそつき』は太一だった。それは確実だ。でも、あの音楽室の金庫で二枚目の紙を取ったのも太一。
太一は自分が『うそつき』になるとわかっていながらあれをみんなの前に差し出したのか?
そもそも太一はまだ生きているのか?
千代子に匿われているのか、殺されたのか、それすらわからない……

安藤

当然のように千代子も怪しい。どうして最初の捜索のときにメンバーを入れ替えたことを黙っていたのだろう。
兄の太一を庇っているという説も説得力に欠ける。親友の亜美が生き返らなくなるのに犯人を庇う必要なんてあるのか?
ということは、やっぱり――

安藤

深月はずっと僕と一緒にいた。彼女にはアリバイがある。何より、深月が犯人だとは思いたくない。
ただ、いつもヒントを見つけるのは深月だ。深月が音楽室の金庫を見つけたときも、太一は不思議がっていた。あれは本当に偶然か?

それに、気になるのはパソコンのログインパスワードを伝えたときの深月の反応。
あの横顔は何だったんだ? まるで何かを決意したような表情にも見えた。例えば、そう、メンバーの抹殺とか、無理心中とか、ただならぬやつだ

安藤

僕が犯人である可能性は……? 犯人ではない。そういう自覚がある。でも、泥棒ではあるかもしれない。
もしそうだったとして、それを深月が知っていたとしたら、あのとき深月が見せた表情にも説明が付くんじゃないだろうか。
僕が泥棒で、深月が泥棒の使者。役割としてはそう捉えることもできる

安藤

今のところ、唯一信用できるのは凌さんということになるか。
凌さんは手錠を掛けられていて、亜美も実際に消失している。疑う余地はないだろう

安藤

同じ理由で、消失している亜美も疑うことはできないな

 いや、と安藤は慌てて頭を振る。

 亜美を疑うことができないのは彼女が消失しているからだ。

 もしも、と考えた。もしも亜美が消えたわけではなかったとしたら、今もどこかに潜んでいるとしたら、どうなるだろう。

安藤

あっ……!

 その瞬間だ。

 脳の裏側に白い光が走った。

 思考が飛躍する。

 そういえば、と思い出す。
 深月はペアについて『妥当』という言葉を使っていた。

 割れたガラスの破片を搔き集めるみたいに、急いで、しかし慎重に、散らばったヒントを手元に置いていく。

 手錠の『ルール』。
 
 事務室にあった金メダルと、本当の優勝者。

 金庫のロックナンバー。

『うそつき』というメッセージ。 

 実際に行動したペア、その組み合わせ。
 
 パソコンのログインパスワード、『ししゃ』、『死者』、『死』。

 並べたそれらは、組み立てるまでもなく一つの形を作ってくれた。

 代わりに、矛盾が、音を立てて崩れ去った。

安藤

わかった

 口が勝手に喋る。

安藤

全部、わかった

 犯人はわかった。ただ、それを立証するために確認しなければならないことが一つだけある。

 一つだけ質問をさせてもらおう。それで全てがわかる。

 そう思った瞬間のことだ。ようやくと言うべきか、深月が席を離れてからもう五分以上経っていることに気付いた。

安藤

まさか……

 安藤は図書室を飛び出し、トイレに向かって声を張る。

安藤

深月! いるか! 返事をしてくれ!

 しかし、何秒待っても返事はない。

 もう一度呼び掛けようとして開いた口を、閉じる。もうそんな時間すらない。

安藤

くそ! 間に合ってくれ!

 安藤は階段を駆け下りた。その最中で、呪詛のように犯人の名前を呼んだ。

安藤

なんでだよ。なんで犯人が


なんだよ……!

(※安藤の台詞を完成させるようにして解答をコメントにご投稿ください。
 これはミステリーとしての謎解きです。根拠は不要ですので、ご自身が予想する犯人を一名挙げてください。
 なお、お一人様一度まででお願い致します。コメントでは当たりも外れも公表致しませんのでご了承ください。
 一定数解答が集まり、かつ、その中に犯人の名前が含まれていた場合に次回の更新が決定致します。
 ご参加お待ちしております)

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