安藤と深月はロビーを経由し、階段で二階に上がった。もちろんロビーも確認したが、犯人が残したと思しきものは何もなかった。

 二階の構成は、幼児向けの『プレイルーム』が一つ、ダンスなどの練習として使われる鏡張りの壁を持つ『練習室』が一つ、囲碁や将棋といった卓上遊戯専門の『囲碁・将棋室』が一つに、長机が並べられた『学習室』が二つ、そして関係者以外立入禁止の『事務室』が一つある。

 肝心な犯人からの出題についてだが、一つ目は囲碁・将棋室で見つかった。

五十嵐深月

安藤くん。これ、オセロに紛れてたよ

 見れば、オセロの駒の白面に『ヤ』の文字が彫られている。正直、爪で引っ搔いてみるまで安藤はわからなかった。

安藤

よくこんなの見つけられたね

五十嵐深月

安藤くんこそ、きちんと探している? さっきからわたしばかり発見しているような気がするんだけど

安藤

いや、うん。面目ない……

 次に文字が見つかったのは練習室。レコードの裏面がそれだった。

 もちろん、これを見つけたのも深月である。

 今度は『キ』という文字。やはり、これだけでは何のことだかわからない。

五十嵐深月

安藤くん

安藤

いや、これを見つける深月がすごいんだって

 正直、深月が隠した張本人なのではないかと疑い始めたくなる。もちろん口には出さないが。

 プレイルームも学習室も見たが、そこにはこれといたものは何もなかった。最後に残ったのは『関係者以外立入禁止』と記された事務室だが、予想に反し、ここにも入ることができた。

 安藤が壁周りを、深月がデスク周りを担当し、入念に手掛かりを探す。

 捜索中、見慣れた字面を目にし、安藤は足を止めた。それはショーケースの中の、金メダルから伸びたリボンに記されていた。

 金メダルは手のひらほどの大きさで、二枚並べられている。立て札には『青少年センター卓球大会 小学生の部』と記されている。

 そして片方のリボンには『橘千代子』、もう片方はメダルに隠れて途中までしか読めないが『五十嵐――』の名前があった。

 小学生のときに深月と千代子がここの卓球大会で優勝したということなのだろう。

 ということは、と安藤は思案に耽(ふけ)る。

安藤

これは――、いや、ここは、五年以上前の世界、ということにならないか?

五十嵐深月

安藤くん。見つけたよ

 呼ばれて我に返る。深月はデスクトップパソコンの電源ボタン下に貼られた小さな付箋紙を示していた。

『M V E M J S ? N』

 全八文字で、後ろから二番目を除いて全てアルファベット。

五十嵐深月

結局二階は全部わたしが見つけたね。解いてくれるのが安藤くんだと思って良いのかな?

安藤

うん

五十嵐深月

え? まさかもう解けたの?

 意地悪のつもりで言ったのだろう、平然とした態度で返された深月は目を丸くした。

安藤

とりあえず、みんなにも問題を共有しておこう。僕が二階のを送るから、深月は一階で撮った問題の画像を送ってもらって良い?

五十嵐深月

ええ、わかったわ

 安藤がメールを一斉送信する。と、立て続けに他のメンバーからもメールが届いた。

『送信者:橘千代子
 本文:三階の千代子です。永田先輩と一緒にいます。
 暗号らしきものを見つけましたので共有させていただきます。

O T T F F ?

 ご確認ください。
 よろしくお願い致します』

『送信者:橘太一
 本文:こちら四階。

 ✕✕✕✕◯=A
   ◯✕✕✕✕=P
 ✕◯◯◯✕=N
✕◯✕✕◯=?

 これって何のこと? 全然わからない』

『送信者:結城亜美
 本文:五階の亜美でーす。
 なんか計算問題みたい。ということで、永田先輩、ちゃちゃっと解いちゃってください!

D=100?
25?=Q
?=P

 イミフ!』

五十嵐深月

さあ、安藤くんの出番だね

安藤

ちょっと待ってて……

 一応、それぞれが独立した問題のようだ。知識レベルも高校生に合わせてある。どこか良心的な犯人だ。

 十分ほど掛かってしまったが、全ての問題は解けた。現れた解答もきちんと意味を成すので、恐らく正解だろう。

 さらにもう五分待っても誰からも最終的な答えが示される気配がない。仕方なく、自分が全員に指示を出すことにした。

 安藤はメールにこう打った。

『  階の     に集合しよう』

(※安藤のメールを完成させるようにして解答をコメントにご投稿ください。
 わかる部分だけ答えていただいても結構です。
 ご参加をお待ちしております)

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