敬介は美咲の話で少しずつだが、
真実を知り始めていた。
影人間?
俺を襲ってきたやつのことか。
そう。
そいつが形山君の命を狙ってたの。
敬介は美咲の話で少しずつだが、
真実を知り始めていた。
でも何で俺なんかを……。
目的は一体……。
それが分からないのよ。
シャドー(=影人間)が一般人を襲ったって話はあるけど……。
思い当たることはないの?
何か最近あったこととか。
さすがに、美咲も敬介が襲われた理由を知らなかった。
いったい何が原因なのだろうか。
そういえば……、
やつは襲ってくる前に取り返す?
とか言ってた気がする。
たしかに、
襲われる直前にそのような言葉を耳にしていた。
取り返す?
もしかして……、
影石(えいせき)……、
えっと、
ガラスの破片みたいなもの持ってたりする?
名前は分からないけど、
そんな石なら拾ったよ!
ちょうど、土曜日に天野さんと曲がり角で会った時に拾ったんだ。
その影石は今は敬介の部屋の机に置いてある。
しかし、
今日部屋を出てくる前に机の上を見ると、
粉々に砕け散っていた。
昨夜のショックもありあまり気にしていなかったのだが、
まさか今回の件に関係してくるとは予想外であった。
そっかぁ。
それを持ってたのなら狙われちゃうね。
その影石はシャドー達にとって、
命のようなものだから。
命?
うん。
それがあることで私達の暮らすこの世界にいられるみたいなの。
エネルギー源みたいな感じかな。
だから、形山君が影石を壊してしまう前に取り返そうとしたんだと思うの。
でも、まだ不思議なのよね……
何が不思議なの?
本来、シャドーは光術士のような特別な力を持っていないと
見たり、触ったり、感じたりできないはずなの。
何で形山君には……。
それに、シャドーから助けた人が誰なのか。
そう、
敬介には自分を守る術がないのに、
謎の光によって救われた。
美咲の話によると、
襲われる瞬間にシャドー自体の存在が消滅したから、
机の上の影石は砕け散っていたのだろう。
ということだった。
敬介は、安心し始めていた。
でも、とりあえず助かったからよかったよ。
天野さんにも色々聞けて安心したし。
ありがとう。
そんな、
私も安心したし嬉しいよ。
美咲は敬介の感謝に喜び、
とびっきりの笑顔を見せた。
かわいい、またもこの感情が敬介の頭を巡り始めた。
そして、興味本位で聞いてみた。
そういえば、
天野さんはどうして光術士なの?
家系がそういう感じとか?
違うよ。
実は私も3ヶ月前までは普通の女子高生だったんだけど、形山君みたいにある事件がきっかけでシャドーに襲われたの。
その時に助けてくれた人が私に自分を守る力を教えてくれたんだ。
だから、今度は私が誰かを守ってあげれればなぁって思ったから光術士になったの。
人それぞれ様々なことに事情というものがあるが、
まさか、美咲も同じような体験をしていたとは。
敬介のなかで、一つの感情が芽生えた。
……るかな?
え?何、形山君?
ぼそぼそと呟く様に言った言葉を
美咲はよく聞き取れなかった。
できるかな?
俺にも。
誰かを守ってあげること。
敬介の表情は真剣だった。
どこにも迷いがない、澄み切った目で言った。
形山君……。
敬介の真剣さを感じてくれたのか、
それとも自身と同じように
今後のために自らを守る力を教えたほうがいい
そう思ったからなのか、
それは分からないが、願いは叶いそうであった。
できるよ。
でも、そのためには"ある人"に会ってもらわないといけないんだ。
ある人?
うん。
私を助けてくれた"先生"にね。