翌朝。



6時前に家を出た私は、


最寄りの駅から急行列車に飛び乗る。





最寄りの駅からは


空港行きの列車が出ていないので


まずは空港行きの列車が出る駅へと


向かわなくてはいけない。










私はドアの側に立つと


流れる景色を眺めながら、


胸元に手を当てながら一心さんを想う。




美咲

一心さん、これ喜んでくれるかな……。




懐のポケットには一通の封筒。






イラストレーターの私ができること。


それは想いを寄せて絵を書くこと。





昨日の夕方に思い立った私は、


思いの丈を描き綴り、


メッセージカードを作った。

美咲

一心さんより先に空港について出迎えよう。

美咲

そして、このメッセージカードを渡すんんだ。

美咲

どんな顔をしてくれるかな……?
なんて言うかな……?





順調な旅路の中、


私はそわそわしながら


通過駅と腕時計を見比べる。




あと30分もすれば


空港行きの列車に乗り換えだ。




美咲

……この電車ならフライトの2時間前に空港へ着けるわ。








そう思った矢先だった。







美咲

キャッ!




ブレーキの轟音とともに


停車する車両と波打つ乗客の影。





静寂のあと、


一息おいて流れるアナウンス。




車両トラブルのため
少々停車いたします。

美咲

……なんでこんな時に……。











--時間は刻々と過ぎゆく。





電車が停止してから




既に1時間が経過しようとしていた。






本車両の運行を休止します。
次の駅まで進行いたします。

美咲

……そんな……。






一心さんとは違う路線。




二人の向かう先は同じなのに、


私だけが立ち往生する。











列車が次の駅へ到着すると


乗客はみなホームヘと降ろされた。





焦燥感が私を責め立てる。


美咲

早く……早く来て……




しかし、


続けて来た電車は急行ではなく


各駅停車だった。









後続の電車に飛び乗ると


私は現状のメッセージを伝える。

美咲

……一心さんが心配すると行けないから……。





美咲

ごめんなさい。電車が車両トラブルで間に合わないかもしれないわ。



すぐさま届く


一心さんからの気遣い。


間木

美咲さんこそ、
無理しないで気をつけて。





優しい言葉が胸を締め付ける。


美咲

……あぁ神様、お願いです。
どうか一心さんに会わせて下さい。





















空港への直通電車へと乗り換えた後、



空港に到着したのは、



フライト時間の30分前だった。





美咲

走れば搭乗ゲートに15分前には着く。
……まだ間に合う。

美咲

すみません、通してください。
お願いします。





人波をかき分け


ロビーを走り


エスカレーターを駆け上る。




少しでも早くと、搭乗ゲートを目指す。










目的の搭乗ゲートが見えると


既に搭乗は始まっており


そ飛行機へ乗り込もうとする人で


ごった返していた。






そして、その中には


見覚えのある姿もあった。


美咲

いた!一心さんだ!












間に合った。















美咲

いっ……












走りながら名前を呼ぼうとしたその時、


一瞬の気の緩みが


足をもつれさす。






美咲

……っ




すぐに起き上がろうとするも、


ここに来て連日の疲労と


空港内を走った疲労が体の自由を奪う。



あなた、大丈夫?

美咲

……大丈夫です。




ようやく顔をあげるも


ゲートではすべての搭乗が終わっていた。



失意の視線の先には


もう一心さんの姿はなかった。



美咲

……一心……さん……。









私達は、再会を果たせなかった。

















捻れ





つづく

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