--あれは2015年8月の事。









































美咲さん!
結婚しよう。

美咲

ファッ!?



































サイクリック



































金曜日の昼下がり。


人気の少ないオフィスビルの屋上。


心地よい風の中。









面識のない彼の口から飛び出たその言葉に、


私はあっけにとられた。



美咲

……何を言っているんだろうこの人。

美咲

きっと頭がおかしいんだ。


それが、その時の私の率直な感想だ。




美咲とは名ばかりの、


一重瞼の地味な顔立ちに


度の強い眼鏡と無造作な髪型、


そして、貧相なスタイル。






性格はと言うと、


話が苦手で人の輪に馴染めきれなず


干渉を避けるタイプ。














それが私。











そんな私の憩いの時間は



オフィスビルの屋上で1人お弁当を食べること。









美咲

もう……
お箸落としちゃったじゃない……。

ジッ……。








しかし、今日その聖域に突如彼が入り込んできた。







いや、入りこんだだけならまだしも、


強烈な爆撃を食らわせてきたのだ。







美咲

あぁ……。
なんてまっすぐな瞳で
こっちを見るんだろう……。



私の前に立つ彼の名は


間木 一心《まぎ いっしん》。






先日、中途採用で


同じプロジェクトに配属になった


エンジニアだ。




同じプロジェクトと言っても、


私はイラストレーターなので


作業内容はほとんど被らない。





会話と言えば自己紹介の時に少ししただけ。













彼は優秀な人間らしく


入社したてなのに既に引っ張りだこだ。







この前はディープラーニングやらの


人工知能のプロジェクトに


駆りだされていたのを覚えている。







そんな人物が私にプロポーズをしてきたのだ。















間木

ニコニコ……

美咲

……彼は私をからかっているのね?



























学生時代から、



こういった"からかい"は日常茶飯事だった。








美咲

あれ?

お、斎藤それラブレターじゃん!
モテんな―!!!

クスクス……。

美咲

ふぅ……。

あっ!

なんだよ、ホントつまんねーやつだな、斎藤って。










特に怒りもせず



受け流す私も悪かったと思う。





けど、まじめに対応するほど



馬鹿げたことはないと思っていた。



















美咲

……私が恋愛対象になる事なんて

美咲

ない。











それが私の自己評価。




























あれから数年後…。







社会人になってまで、


からかわれるのは想定外だったけど、


同じように対応しよう。










美咲

スッ!

間木

美咲さん……。
















私は彼に相対し、こう言い放った。


































美咲

喜んで!

























私たちは婚約した。





















斜め上からのプロポーズ












つづく

斜め上からのプロポーズ

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