一瞬にして、思考は溶かされた。
悪魔の舌のような大きな熱が、
全身を覆うことを
抵抗もせずに、じっと見下ろすことしか
出来ない。
今回の私、久しぶりに関わったら、
案の定死ぬとか惨めね…。
やめてよ!
めちゃくちゃ隷従した僕の方が惨めだからね!?
別に、身体溶けて魂食べられるのは正直、毎回だから。
でも、今回は死ぬ間際だからこそ、神の怒りと白雪姫の関係――やっと分かるような気がするから試してみたい。
前回のことぐらいなら、覚えてるわ。
じゃあ、忘れても頼るよ?
次もちゃんと関わってくれる?
関わりたいけど、軟禁されてたら連れ出して欲しいなぁ。
そんなことされてたの?
確かに、全然来ない時あったけど。
……裏切られたと勘違いした…けど。
ヴィクターくんが、私を隷従して自殺しようとした回が続いて、過保護な人から軟禁受けてたの。
何その怖い僕…。
「僕を殺せ」って命令するとか相当野蛮だよ
……あのショップにいた時にいた、東に住んでそうな綺麗な奴?
そうそう。雨季さん。わりと過激だから
今回は睡眠薬盛ってたタイミングで出て来てるけど。
帰ろうものなら軟禁どころか監禁ね。
仕方ないよ。
大切な人を殺されたくなくて過激になってくれるのは正常だと思う。
グレイル、良い?
何だ?
口に出して言うと、白雪姫に聞こえてるから言えない。
だから、何が起こったか、観察していて欲しい。
あ、お、おー。
きっと、白雪姫はびっくりするような此処にいる。
びっくりするようなここ?
そうだよ!
地下牢に、いるといえばいる。
ややこしい言い方だな!?
言い方聞く限り、ニオミヤちゃんが住んでる所では繰り返しは起きていないらしい。
別に王は僕じゃなくても良いし、
もし今回にこだわるなら、
キミ一人でも勝算残しておくことも出来る。
――どうする? 地下牢へ入るのやめる?
……その言い方、卑怯だな。
良いよ、死んでやる。
ありがとう。
今回のキミのことは死んでも忘れない
言ったからには覚えてろよ?
あ!約束は出来ない!
お前なぁ!?
よく分からないけど、僕はどうすればいいの?
……カオル「ちゃん」の所へ、行きましょうか。
か、カオルちゃ……?
それって薫のこと?
そうです。
うん。
仕方ないから、会いに行くよ。
は?
流しで良いですか?
ヴィクター、落ち着こう?
それに今回は本人たちも流しって言ってるし
ニオミヤ、あれは放置で良いのか?
面白いから大丈夫よ。
でも、カオルちゃんは、ヴェッセルが付いてるから修羅場かも
え!?
修羅場なら止めようよ。
ちょっと見たいけど!
お前らもわりと愉快犯だよな。
――じゃあ、入るよ。
なんで、そんなに皆に槍持たせてんだ。
元気でしょ!
そうね、なんか、むさ苦しい。
オレら、むさ苦しい奴らと一緒に死ぬのか
ああ…流石にこうなると、雨季が恋しい…
これが必要だからだよ!
今から槍もって死んで!!だなんて暴君みたいな今じゃないと出来ないことだから、
―――やっぱりこの回は必要だったと思うんだ
それなら、オレは生きてて良かったか?
もちろん
槍ってことは遠くにいるのか?
んー。正しくは……相手が近づく、の方が正しいの?
どっちも違うよー。
まあ、一回も見たことないし、
ここら辺に住んだことない人ばかりだから、
想像つかないとは思うけど……
本当に、見えるか見えないか、だと思うし、一瞬で終わるから。
痛い?
あー……あー……あー……
痛いよ!!
……何だよ、それ…よく慣れれるな……。
でも、ほら、こうしないといけないから!!
こうしないといけないから!!!
わ、私は初めてよ…?
というか、白雪姫の実態が本当に全く分からないのだけれど
気付かない方が良いよ。
この考えが合っていれば、
僕ら、思った以上に酷な事させられてるよ。
変なこと言っていいか?
さよなら、とか言ったら怒るわよ?
オレだけ、繰り返しさえもない可能性がある
あ。そこは気付いていたんだ。
今回のグレイルがいたことは有意義なものだったと皆が言っているから、大丈夫だと思うよ
そんなこと言ったって、決めるのは
お前らじゃ――
認めない!
絶対に、戻ってくること!!
戻らないって言うなら、吾輩は全部自殺で毎回繰り返しにする!本気本気!!
わぁ、無茶振り来た。
これだけ言えば、大丈夫。
流石に、今回のグレイルは平気だと思うよ
もう、いい?
大丈夫だ、ありがとう。
あははっ、今からだよ。
君はちゃんと観察してくれないと困る
一瞬にして、思考は溶かされた。
悪魔の舌のような大きな熱が、
全身を覆うことを
抵抗もせずに、じっと見下ろすことしか
出来ない。
鈍い音がする――。
これは、きっと槍が刺さった音だろう。
――真っ直ぐに持っているはずの槍がどうして
刺さるんだろう。
そんなこと、どうでも良い。
熱い、温かい、溶ける、思考が、消えて、自分が、
――何かが、襲って来た…?
牙? 何かに貪られた感覚。
もう、自分の身体が見えない。
身体から滴る血が、ただ温かい。
そう、温かい。
もう熱いと言っていたはずなのに、
頭も、心臓も、手の先、足の先、全部が
燃えるように、凍えるように、
―――冷たい。
こんなものに抵抗なんて、出来るのだろうか。
こんなにも絶望に包まれて、
返って多好感と幸福と狂気に包まれた静かな死は――
毒になりそうなぐらいに魅力的に――
なる、わけには、いかない……。
たぶん、笑われると思うから先に申告しておく。
今から、自己紹介する。
何って自分が誰であるかちゃんと分かってないって
前に怒られた気がするからだ。
オレの名前はグレイル。
違うような気もしてきたけど、
そうやって呼ばれていた。
ヴィクターJr.が、
白雪姫を倒す為に存在し始めた
ヴィクターJr.は吸血鬼。
泣き虫で怖がりに見えてそうでもなかった。
詐欺だ。
色々考えてるし、良く分からない奴
でも、居て楽しかった気がする。
ニオミヤっていう友人が出来た
変顔が得意な可愛い美少女
真っ直ぐで、でも不安を抱えてるような人
聖水をかけられた気がする。
あと、フォーリちゃ……さん。
なんだろう、不思議な人な印象はあった。
大丈夫、まだ覚えている。
オレは死の状況を覚えて、次の回へ進む。
大丈夫、オレは、まだ続けても――
行こう、待ってる。