ニオミヤ

ちょっとだけ、待っててもらってもいいかな。

グレイル

どうした?

ニオミヤ

ちょっと、やり残した事、あってね。

ニオミヤ

ね? 妃さま?

―――――。

グレイル

この高貴っぽそうなのは誰だ?

ヴィクターJr.

あー、なんかね、鏡探してるって言ってたよ!

ヴィクターJr.

あと、白雪姫がヴィクター探してるから近付くなって言ってたかな?

グレイル

えーっと……

グレイル

何重要参考人を隷従させてんだよ!?

グレイル

で、その鏡って言うのは?

ヴィクターJr.

知らない。

グレイル

どんな形?

ヴィクターJr.

知らない

グレイル

これに関しては、何にも進まないな。

ニオミヤ

彼女なら、何とか救えると思って。

ヴィクターJr.

え?

ニオミヤ

え、じゃなくて。

ニオミヤ


完全に隷従した人間でも、
私が知ってる人で、
貴方が作った契約なら一人解く事出来るから。

やったことないけど、理論上では

ヴィクターJr.

良く分からないけど、すごい

ニオミヤ

すごいでしょ。

ニオミヤ

――結構、雑に術式使った?

ヴィクターJr.

ちょっと、苛立ってたから。

ニオミヤ

……そんな感じが出てる。

はい、手。

ヴィクターJr.

手?

ニオミヤ

噛んで。

ヴィクターJr.

う……うん。

ニオミヤ

痛っ……

ヴィクターJr.

ああっ、ごめんね!?

ニオミヤ

ごめん、なんて口にしないで。

王になる為にしたことなのに、
堂々としてないと浮かばれない。

ニオミヤ

謝るぐらいなら、どうしてこんなに沢山を隷従させる必要があったの。

貴方がやった事は本当は許されない

ヴィクターJr.

それは、人間だからで、人間と吸血鬼なんて…。

グレイル

どっかで聞いたことある

ニオミヤ

うるさいわね!?

ヴィクターJr.

ああっ、ごめんなさい!!

ニオミヤ

ごめんなさい、二回目。
その台詞言えば助かるとか思ってる?

どうせ、また繰り返すから何しても良いとか考えてる?

ヴィクターJr.

そうじゃ……ない…けど…

ニオミヤ

私はね、考えてた。
もしかしたら、今も考えてる。

ちょっとふざけるなって感じだよね?

ヴィクターJr.

……そう、なんだ…。

ニオミヤ

けれど、最近になって、妖精が「この世界はちゃんと終わる!」って本気で信じ始めてて。
なんだかすごいなあって。

コイツに負けたくないから、もうちょっと頑張ろうかなって。

ニオミヤ

私も、そろそろ、繰り返されるからって諦めで逃げたくないの。

ヴィクターJr.

……そう。

ニオミヤ

ちょっと、両目に触るわよ?

ヴィクターJr.

血だらけの手で?

ニオミヤ

だからこそ

ヴィクターJr.

う、うん。

ヴィクターJr.

なにか、青い色が見えるね。

―――――。

ニオミヤ

指を離すから、
そうしたら眼を瞑って。

3.2.1――――


そうして、ニオミヤは彼が眼を閉じてから、

妃の目にその指を合わせる。

ニオミヤ

ヴィクターくん、その青い世界で、何が見える?

ヴィクターJr.

青い………髪?

ニオミヤ

紙?

ヴィクターJr.

たてがみ。ライオン?
大きな身体、大きな街、小さな屋敷。

ニオミヤ

――そう。


そういうと、妃から指を離して、
彼女を中心とした大きな円を描く。

そして、その円をなぞるように
この国の紋様に似た記号を描く。


袋から、金貨を2枚取り出し、
そこに獅子を描く。

その金貨は妃の両手に一枚ずつ置いた。

―――――――。

ニオミヤ

もう少し、待っててくださいね。

ヴィクターJr.

ね、ねぇ、これ、どうしよう……!?

ニオミヤ

ヴィクターくん。

それは、好き? 嫌い?

ヴィクターJr.

まだ、嫌い。怖い。うわ、二体になった…!?

そっと、ニオミヤは、
少年をゆっくりと抱き締める。

ニオミヤ

大丈夫。それはこわくない。
それは怖くないから。

ヴィクターJr.

こわい。嫌だ。
だって、それは……。

ニオミヤ

両手を真っ直ぐ出して。

ヴィクターJr.

こう?

ニオミヤ

そう。

ヴィクターJr.

えっ、何これ。迫ってくるよ!?
嫌だ、逃げないと…!

ニオミヤ

貴方に、隷従された人たちは
皆、逃げる事さえ出来なかった。

ヴィクターJr.

そ、そうだけど…!?

ニオミヤ

まっすぐ、まっすぐ、ただ近づいて来るソレを見ているだけで良いから。

ヴィクターJr.

と、止めて…!?

ニオミヤ

もうすこし、

ヴィクターJr.

いやだ、だってこれは――

ニオミヤ

大丈夫だから

ヴィクターJr.

えぐっ……何で…こんな……!

ニオミヤ

精神的で、深層的で、幾何学的な痛みが、必要不可欠だから。

ニオミヤ

あと、ちょっと大きめの後悔も。

ヴィクターJr.

あ……う……う、うわあああああああああああああ!?

グレイル

なんか、すごかったな。

目瞑ってるだけにしか見えなかったけど

フォーリ

普通の顔してましたけどね

グレイル

お前、ニオミヤの変顔好きすぎだろ、

ヴィクターJr.

……って、あれ。

目が開けれる!

ニオミヤ

お疲れ様ー。
ゆっくり眼を閉じて休んでいいよ

ヴィクターJr.

けど、なんだかスッキリしたかも!

叱ってくれてありがとう。

ニオミヤ

ニオミヤ

良く分からないけど、嬉しい。

あれ、此処は?

ニオミヤ

お疲れ様。お久しぶりです、お妃さま。

……え、匂宮?

ニオミヤ

カオルじゃなくて、ごめんなさいね。

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