澄んだ川に向かうベンチに腰掛け、僕は言葉を漏らす。
なあ、僕の知らない真実を、教えてくれよ
澄んだ川に向かうベンチに腰掛け、僕は言葉を漏らす。
川を乗り越えて、冷たい風が肌を伝うのが心地いい。風がそばにある木の葉を揺らす。ひらひらと、一枚の葉が彼のひざ元に落ちた。
それを拾い上げ、顔の前でくるくると回し、彼はゆっくりと口を開く。
そろそろだとは思っていたよ
どこか寂し気な表情で彼は言った。
この世界が。決して僕を受け入れることのないこの世界が、もしも僕の予想通りだとすれば。
彼もまた、僕と同じようにこの世界にとっては異物であり、矛盾なのだ。
まず聞く。お前は、もう俺たちの、いや。あいつらの身に起きた悲劇を思い出したんだな?
ああ。怖いくらいに、鮮明に
なら、話そう。あの後お前がしたことを聞いて、俺が何をしたか
彼の口から、僕も知らない真実が語られる。
悪い、電話だ
大樹からかな?
みたいだな。もしもし、大樹。そっちの様子は・・・何!? ホテルに青葉と咲月が取り残された!? 黒須も? ・・・そいつは知らないが。それで、羽鳥たちは?
取り残されたって、ホテルで何か起きてるの!?
ああ。あいつらはエレベーターで下りたんだな? 都、お前は今どこなんだ? はっ!? トロピカルアイランド? あの時の女性を探してるって? お前何を!? あ、おい! ・・・くそ、切られた
ねえ。どうしたの? みんなに一体何があったの!?
悪い三枝。俺は今から行くところがある。頼むからお前はここにいてくれ。今は、ホテルに戻っちゃだめだ。分かったな!!
そんな!? 私にも何があったか教えて・・・藤峰くん。待って! ああ。行っちゃった
ってことは、美樹ちゃんは無事なんだな?
僕との通話の後の話を聞いて、質問を挟む。一番気に掛かっていたことだ。
おそらくは。その後は三枝を見てないから、何とも言えないが・・・
それで、藤峰もその後あの女性の所を音連れたんだね?
ああ。そしたら少し前にお前が来て「ミヤコワスレ」手に旅立ったって聞いたから、「俺も同じ場所に」って頼んだら部屋の中に連れられて、気付いたら大学の前にいたんだ
やはり、藤峰も僕と同じ道を来たらしい。
だったら、彼女たちの事に気付いているか? ここにいるって事は、生きているんだよな!?
それについても、話すよ
目を逸らし気に、藤峰は言った。ここからは僕の知らない物語。
僕が世界を旅だった。希望に縋り手放した、本当の世界の悲しい真実。
それを、後々聞かなければと後悔することになる。
あらあら、そんなことを言ってしまって。聞かなければ何も進まないというのに
良いんですか? あなたも見たでしょう? 呪いの副作用は、もう目に見えるところまで迫っていますよ