都 大樹

なあ、僕の知らない真実を、教えてくれよ

澄んだ川に向かうベンチに腰掛け、僕は言葉を漏らす。

川を乗り越えて、冷たい風が肌を伝うのが心地いい。風がそばにある木の葉を揺らす。ひらひらと、一枚の葉が彼のひざ元に落ちた。

それを拾い上げ、顔の前でくるくると回し、彼はゆっくりと口を開く。

藤峰 明人

そろそろだとは思っていたよ

どこか寂し気な表情で彼は言った。

この世界が。決して僕を受け入れることのないこの世界が、もしも僕の予想通りだとすれば。

彼もまた、僕と同じようにこの世界にとっては異物であり、矛盾なのだ。

藤峰 明人

まず聞く。お前は、もう俺たちの、いや。あいつらの身に起きた悲劇を思い出したんだな?

都 大樹

ああ。怖いくらいに、鮮明に

藤峰 明人

なら、話そう。あの後お前がしたことを聞いて、俺が何をしたか

彼の口から、僕も知らない真実が語られる。

藤峰 明人

悪い、電話だ

三枝 美樹

大樹からかな?

藤峰 明人

みたいだな。もしもし、大樹。そっちの様子は・・・何!? ホテルに青葉と咲月が取り残された!? 黒須も? ・・・そいつは知らないが。それで、羽鳥たちは?

三枝 美樹

取り残されたって、ホテルで何か起きてるの!?

藤峰 明人

ああ。あいつらはエレベーターで下りたんだな? 都、お前は今どこなんだ? はっ!? トロピカルアイランド? あの時の女性を探してるって? お前何を!? あ、おい! ・・・くそ、切られた

三枝 美樹

ねえ。どうしたの? みんなに一体何があったの!?

藤峰 明人

悪い三枝。俺は今から行くところがある。頼むからお前はここにいてくれ。今は、ホテルに戻っちゃだめだ。分かったな!!

三枝 美樹

そんな!? 私にも何があったか教えて・・・藤峰くん。待って! ああ。行っちゃった

都 大樹

ってことは、美樹ちゃんは無事なんだな?

僕との通話の後の話を聞いて、質問を挟む。一番気に掛かっていたことだ。

藤峰 明人

おそらくは。その後は三枝を見てないから、何とも言えないが・・・

都 大樹

それで、藤峰もその後あの女性の所を音連れたんだね?

藤峰 明人

ああ。そしたら少し前にお前が来て「ミヤコワスレ」手に旅立ったって聞いたから、「俺も同じ場所に」って頼んだら部屋の中に連れられて、気付いたら大学の前にいたんだ

やはり、藤峰も僕と同じ道を来たらしい。

都 大樹

だったら、彼女たちの事に気付いているか? ここにいるって事は、生きているんだよな!?

藤峰 明人

それについても、話すよ

目を逸らし気に、藤峰は言った。ここからは僕の知らない物語。

僕が世界を旅だった。希望に縋り手放した、本当の世界の悲しい真実。

それを、後々聞かなければと後悔することになる。

あらあら、そんなことを言ってしまって。聞かなければ何も進まないというのに

良いんですか? あなたも見たでしょう? 呪いの副作用は、もう目に見えるところまで迫っていますよ

pagetop