グレイル

とりあえず、
此処で吸血鬼がどういう扱いなのか知りたい。

フォーリ

そうですね。

え?
吸血鬼?
そんなのゴロゴロいるよ?

グレイル

ごろごろ?

うん。

人間よりも、吸血鬼の方が多め?

あ、でも、吸血鬼狩人がいるから、
いつもサクッと処理される感じかなー?

私達でも、

十字架あれば簡単に処理できるし

グレイル

……あれ、時間軸とか国とか間違えた?

フォーリ

合っております。

グレイル

じゃあ、何であんなに人間の方が
アッサリ殺されてた…?

フォーリ

さあ。

グレイル

だよな。

あ。吸血鬼が出たー。

倒せー!

フフフ…。

グレイル

ほー

何かアイツ、凄く強そうな吸血鬼だなー

ヴィクターJr.

――アイツってドイツ?


ああ!吾輩はルーマニア人だよ!

うぐ……

グレイル

何だと!?

弱いなアイツ!

フフフ…例えオレが死んでも第二、第三のオレが……。

グレイル

弱いの集まっても
弱いだけなんだよコレが。

フォーリ

いいえ。

1ポンドを笑う者は
1ポンドに銃殺されます

グレイル

そーだな。
軽率なこと、言った

グレイル

……って。
何で、蚊に話しかけられてんの。

ヴィクターJr.

蚊?

違うよ、
れっきとした吸血鬼だよ。

グレイル

あ? 吸血鬼は、あっち、だろ?

さらば……だ…!!

ヴィクターJr.

ああ、あれ。
うん、あれは…変態だよ…。

グレイル

吸血鬼じゃないのか?

ヴィクターJr.

いや、吸血鬼だけど
一緒にされたくないんだよ。
あんな低俗。

ヴィクターJr.


僕の場合は、
パパとママが拾って来た眷属で、
ちゃんと血吸ってるし。

ヴィクターJr.

あはは、
ヴィクターJr.は高貴だから

グレイル

働けよ。

ヴィクターJr.

学校通ってるよ!

フォーリ

聞いて良いですか。

ヴィクターJr.

わあああ!
堕天使様だ!すごい!

グレイル

分かるものなんだな。

ヴィクターJr.

僕らは、匂いで大体分かるよ。

ヴィクターJr.

君は、聖者被れ…?
妖精…?

混ざり過ぎてて気持ち悪い
うう…鼻が曲がる…

グレイル

いやいやいや。

純血な人間。
周りが変なのばかりだし、
血約とかで可笑しくなってるだけ

ヴィクターJr.

いや、人間なわけないよね

グレイル

え?

ヴィクターJr.

ううん。

君が嘘を吐いてるとは
思ってないからいいや

ヴィクターJr.

ああ!
眷属ってこと?

ヴィクターJr.

吾輩、人間は好きだけど、眷属は嫌いだなぁ?

グレイル

主人―!
主人の方だからー。

ヴィクターJr.

あ!そうなの?

なら、いいや。

フォーリ

どうして、眷属は嫌いなのですか。

ヴィクターJr.

吸血鬼と仲良くしないから

怖い、殺さないでってしか言わないから

ヴィクターJr.


たまーに、
殺されるフリしてあげても、

一人二人こっそり逃がしてあげても、

人間のフリして仲良くなってから、
事実を言ったとしても、

ヴィクターJr.

怖い、怖い、怖い……そればっかり。

グレイル

フリなのか?

ヴィクターJr.

あ、でも、たまに、
逃がし過ぎて本当に殺されかける。

フォーリ

馬鹿ですか。

グレイル

その時はどうするんだ?

ヴィクターJr.

だって、眷属だよ?

殺すのなんて一発。

ヴィクターJr.

……なんで、あんなに弱いの。

グレイル

――そういうことか。

ヴィクターJr.

あと、旅の人?

なら、もうすぐ神の怒りが
起るから逃げた方が良いよー?

フォーリ

神の怒り?

ヴィクターJr.

うん。地面が割れて、世界が動く。

グレイル

地震か。

ヴィクターJr.

ああ、人間はそういう言い方もするね。

グレイル

なあ、眷属以外の人間の事は
知ってるか?

それとも眷属の人間ばっかり
見てるのか。

ヴィクターJr.

眷属以外知らない。

パパとママは、
あんまり外に出るなって
言うから。

ヴィクターJr.



――でも、海外出張に行ってから
帰って来なくなってきちゃって

ヴィクターJr.



……堕天使様、知らない?

フォーリ

自分で探しなさい。

ヴィクターJr.

知ってるの!?

フォーリ

教えたらつまらないので、探しなさい。

グレイル

オレには、教えてくれない?

フォーリ

簡単で残酷な答えが正解です。

グレイル

ほー
殺されたかー

フォーリ

あくまで推測ですが

グレイル

もう吸血鬼の時代は終わったーって感じかな。

フォーリ

ええ。
貴族のような吸血鬼は、彼で最期です。
とりあえずは

グレイル

とりあえず?

フォーリ

――そうですね。

フォーリ

例えば、「怪物のご希望」に
答えてあげるのも、彼、満足しますよね?

グレイル

吸血鬼を作れってこと?

フォーリ

それぐらい作れなくもないでしょう

グレイル

まー、そうだけどさー

グレイル

吸血鬼の名前、
ヴィクターJr.だから、
フランケンシュタインに
かけたんだろ?

悪趣味だなー?

フォーリ

あら。分かりましたか。

グレイル

だが、
その話の結末で、父親が選んだ答えは――

フォーリ

そうですね。

グレイル

――もう、彼のような存在を作る事は許されてはならない
彼の為に。

確か、そんな感じだったよな?

フォーリ

あら、酔狂の一つも言わないとは

グレイル

せっかくだから、

第二の人生、
まっすぐ生きてみようかと

フォーリ

……少し、浸食が足りなかったようで

グレイル

どうしたー?

フォーリ

私なら、面白いから増えても良い
と思いますけど。吸血鬼。

グレイル

増えたら、また、同じ悲しみを背負うのが
増えるだけだろ?

フォーリ

ソウデスネー

フォーリ

で。


結局、ソイツは探す予定ですか?

グレイル

あ。忘れてた。

2歩目…ヴィクターJr.

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