自分より弱い人を見ると、助けたくなる。どうしてかと言うと、自分の過去にあるからなのだろう。
希(のぞみ)、希望に満ち溢れていた彼女の名前だ。
その彼女は死んだ。自殺だ。
誰も使っていないボロボロのビルから飛んで、死んだ。
自分は死ぬ瞬間を見ていない。見ていたら余計に精神的に何かきついものが来たのだろう。

大人になるなんて、嫌だなあ

あの日、あの時、希の悩みはとても大きいものであることを気付けなかった。ただ、単に言っているだけだと思っていたからだ。
日常の延長した先の話、人生論とかそういうものだと思っていたからだ。

私は、なれるのかな。年、とりたくないもん

どうして?と聞くと老けたくないからだと言う。醜くなりたくないからだと言った。

お母さんを見るのが嫌なの。すごく疲れた顔をしていて、そんなの見ているこっちも気が疲れちゃう。

どうすればよかったのだろうか…。
彼女にとって一番いい方法はなかったのだろうかと今も思う。遺書はとても明るいものだった。
ちょっと一足先に死を体験してみるという軽い感じだった。
最後の姿は覚えている。
何もやる気がなくて、目は死んでいた。忍からお姉ちゃんの様子が変ということで見に行ったら部屋はひどい有様。少女漫画に囲まれていたのだ。

永遠のまま生きていたいなあ…

私って生きている意味あるのでしょうか

きーちゃん。彼女は自殺する気でもあるのか、いや、それは考えすぎなのだろうか。少し怖い気がする。
もし、あのままきーちゃんと一緒にいたら、俺は彼女を殺していたかもしれない。

防衛隊に入った理由は、暴走を止められたからだ。
希が死んでからは、次々と生きていることに真剣に、深く悩みすぎている人に出会った。すべて女子。
そういう子に好かれてしまう性格なのか、性質なのか。
最初はいい。問題なんて起こらない。
しかし、生きるか死ぬかということになって、俺は彼女らの首に手をかけた。
生きていることを実感させるため。

お前…女じゃないな

高校に入ってからも首を絞めて説教するという変な癖は続いた。ある日出会った女の子にさっそく首をかけてみたが、感触が違う。
喉仏が妙に大きい。女の子の喉仏はそんなに大きくはない。
自分が首を絞めた相手は、女の子じゃなかった。

さすが、ただの女好きではないとは

女装を解き、姿を現す。
薄墨潤だった。最近転校してきたばかりの変人であり天才である彼だ。
俺は驚いて後ろに一歩下がる。
潤はそれに気づいてすぐにくいっと詰めてきた。

いい機会だ。君が欲しい

は?

実は、幹部たちに試験というものを与えられていてね。その試験が仲間を作れというものなのさ。最後のメンバーは君だ。

いや、なんで?

理由は説明すると長くなるから言わない。まあ、とっととついてきてくれ

そして防衛隊の部室に連れていかれて見事に合格。成り行きで入ってしまったというなんとも滑稽な展開。
断るという選択もあったのに、未だに俺はここにいる。
鍵を解除する力、とか自然に建物に侵入する方法を学んだりしてなんとなくうまくいっている。

生きていてもいいんじゃないかな。そんなの、誰かに許可を取るとかそういう問題じゃないと思う。自分を許せるかどうか、じゃないかな

きーちゃんに俺の言ったことが届いたら、いいなと俺は思う。
夢を追ってしまった彼女になってしまわぬように。
そんなことを祈った。

醜くなるなら、私は死ぬ。永遠の若さのまま、死ぬ

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