ガウェインは俺たちを笑顔で迎え入れた。
1日仕事だったように感じたが、実際はそんなこともなかったらしい。
よくぞ戻ってきてくれました
ガウェインは俺たちを笑顔で迎え入れた。
1日仕事だったように感じたが、実際はそんなこともなかったらしい。
それにしても、浩也さんにはとても大きな迷惑をかけてしまいました……
なんとお礼を言っていいものか……
お礼なんて……
浩也が照れるように言った。
頬を人差し指で掻くその顔は少し緩んでいた。
お前が突っ込んで行ったときにはホントにどうなるかと思ったけどな
俺は正直な感想を口にした。
本当のところ浩也があのまま帰ってこないかもしれないと考えた。
浩也はう~んと何かを考えるように手を顎に当てた。
何してんだ?こいつ
俺も正直なんとかなるなんて思ってなかったよ。
でも、少しでも時間が稼げればレーナさんがなんとかしてくれると思ってさ。
そういう発想になれるのがすげぇや
俺には一生無理だわその考え方。
第一そこまで冷静になれない。
いやいや、彼にはこのまま勇者として活躍してもらいたいものですな
さすがに無理だよおっさん。
そう思って俺は、浩也のほうを向いた。
当の本人は浩也はまんざらでもなさそうな表情をしていた。
なんでだよ
俺、勇者になろうかな……
レーナさんのこと……今度は俺が守れるようになりたいし……
なるほど……
なんだかんだ言いつつ、浩也は責任感の強いやつだ。きっと、魔王との戦いで、時間稼ぎしかできなかったことを悔やんでいるのだろう。
俺……レーナさんを守れるようになるよ。
だから……レーナさん!
浩也がそこまで言ったとき、レーナは浩也の唇に人差し指を当てた。
静かにしてというジェスチャーの様だった。
お気持ちは嬉しいです……ですが、あなたは元の場所に帰らないといけない。
ここに居続けることはできないんですよ
浩也はレーナの手をゆっくりと横にずらし、言葉を発する。
でも……
いつかまた、廻り合うことがあれば……
その時にこの話の続きをしましょう
お返事もその時に……
そう言ってレーナは手を広げた。
俺と浩也の立つ地面に青い魔法陣が広がった。
な!なんだこれ!
どうなってんだ!?
ありがとうございます。私たちの勇者
あなたたちの世界に……お戻りください
レーナがそう言うと、目の前に光の壁が出来た。
思わず俺と浩也は目を覆う。
まぶしさに耐えながらうっすらと目を開くと、そこには涙ぐむレーナの姿が見えた。
…り……う……
小声で何かを呟いているようだったが、その言葉を聞いとる暇もなく、俺たちは光に包まれた
ん?
目が覚めた時には病院にいた。
正直何が起こったのか分からなかったが、目が覚めると周囲がバタバタしていたことだけはよくわかった。
聞いた話によると、俺たちは路上で倒れていたところを通行人に保護されたらしい。
眠っていたのは半日ほどで、目立った外傷がないことから謎の昏睡状態ということになっていたようだ。
医者との会話の中で、夢を見ていたという話だけはしたが、まさか夢で勇者の代わりやってたのが原因だと思いますなどというバカなことは言わなかった
やっと退院か
長かった気がするけど、もうちょっといてもよかったかなぁ
ただでさえ勉強ヤバいんだから、のんきなこと言うなよ
それもそうか……
なぁ悠
なんだ?
眠ってる間に、夢見た?
みたけど?
それって、俺が勇者の代わりに魔王を倒しに行くって夢だった?
あぁ……そうだけど、なんで知ってんだ?
俺もその夢見てたんだよ
嘘だろ?
正直驚いた。
まさかあの出来事は夢じゃ無かったのかと思えるくらいに驚いた。
その後俺たちはなにごともないように学校を卒業した。
しかし、俺たちの中にはその思い出は今も二人をつなぐように残っている……っと
終わったか?
ちょうどな。
それにしても、あの体験を小説にするとはねぇ
確かにファンタジーな体験ではあったけど
ただの趣味だよ。
信じてもらおうなんて思ってないし、信じてもらえるとも思ってないよ
だよな
そう言って浩也はソファーにふんぞり返る。
お互い今は社会人として生活している。しかし、あの体験以降さらに仲良くなったせいか、大学卒業後もつるむようになっていた。
俺は、浩也の部屋へ小説の中身を見てもらいに来たのだ。
浩也はかなり気に入ってくれたようだった。
でも、俺そんなにフラグ折ってたか?
主人公にするには十分すぎるくらいにな
そう言って俺は笑う。
納得いかなそうな顔を浮かべる浩也だったが、ここだけは譲れない。
なにせ……
あら、できたんですか?
私にも読ませてください
あの別れ方は完全に今生の別れだった。
だが、そのフラグをへし折って彼女と結婚した。
お前は十分フラグを折る天才。
『フラグクラッシャー』だよ
二人の楽しそうな顔を見て、俺はぽつりとつぶやいた