予告通り“奴ら”が店をぶっ潰しの来たのだと察するまでに時間は掛からなかった。

アラビアータ

おいボウズボウズボウズボウズボウズボウズ






土曜の忙しい店内で
アラビアータくんの声が
呪文のように自分に向けられる。


当然のように自分は無視するわけだが、




アラビアータ

おい、無視すんなよ。ボウズ。ちょっと来いよボウズボウズ。オラ





さすがにこっちも
イライラしてきたので、


本当は破壊王橋本の
爆殺シューターをお見舞いして
やりたいんだけれども、


その日の相棒スタッフは
パニック障害を持つ
17歳の通信高校生
(現在は退社)。



相手は仮にも4人組で
あまりに分が悪い。



そんな中、

今の自分が出来る事といったら




ピッツァ

心の中で“こいつら何かしたら全員ぶっ殺す”と唱えながら無口で仕事をする事だ。




アラビアータ君が
何度吠えようとも
自分は無言で仕事をしていた。



そして気づいた事がある。




どうやら他の三人は
無理矢理アラビアータ君に
ここに連れてこられた
ようなのである。



というのも、





ピッツァ

すいません。
うちは休憩だけして帰る人は厳しく断ってるんですよ!
次来てくれた時に一回でも遊んでくれたらウチも何も言いませんけど、
今日のところは本当に、本当に申し訳ないんですが、日を改めてご来店頂けないでしょうか?




と言った自分のセリフを
覚えていてくれたのか、


あの日アラビアータ君を
止めに入ってくれた少年Bが
自分に気を利かせるような
素振りで券売機に向かって行き、


一回数券を購入。




ちゃんと混雑する列を
順番待ちしてくれた上で







1ゲームプレイしてくれたのである。


少年C

い、意外と面白かったよ。へへ






と仲間内にアピールしてくれた。



もちろんアラビアータ君は
面白くない顔をしている。



だがしかし




ピッツァ

ベネ!これでお金使ってくれたから彼らをお客さんとみなし、注意(バトル)しに行かなくて済む!
これより徹底無視開始!!





という事で外見はムスッとした
メガネ坊主中年、
中身はチキンハートの作者は
念には念を。



不測の事態に備えて
パニック障害のスタッフにも
長めの休憩を取らせ、


カウンターに再びタケシ映画の
大杉漣ライクに仁王立ちしていた。









すると彼らが煙草を吸いながら
陣取るベンチ側から
ぼそぼそと会話が聞こえてきた。




アラビアータ

あの野郎、ずっと無視しやがって

少年B

なあ帰ろうぜ。ここに居てもしょうがねえよ

少年C

そうだよ、帰ろうぜ。絶対ヤバいって俺わかるんだよ
















あいつ絶対ヤクザに違いないって。
俺の中学の先輩にいたもん。
あんな奴。
















ピッツァ

…え?ちょ、それ…まさか俺の事言ってる?



え、何々?
この俺が?
一応、中学では学年三位以内をキープ、高校は県で一番の進学校出身だった
この橋本ピッツァ様が…



ヤクザに間違われるだと?

少年B

あー、わかるわかる。
俺もあの日からこの店ヤバい感じすげえしてた。
絶対裏でそこの○○組と繋がってると思うんだ

ピッツァ

ひーん話が飛躍してる!
ティーンたちよ!
ここをテキ屋か何かと勘違いしてやいないかい!?

少年D

俺も同感だな。こんなヤバい店さっさと出ようぜ?カラオケでも行こうよ、な?

ピッツァ

ヤバいのはお前らだろうが!?

アラビアータ

チッ!わあったよ

ピッツァ

…納得しちゃったよ。まあ、帰ってくれるのは嬉しいけど






アラビアータ君は帰り際、



作者にガンを飛ばし、



他三人は下を向きながら帰っていった。




ピッツァ

一体俺が何をしたというのだ





とりあえずオーナー不在で
何とかこの店の平和を守り切った。



そう安堵していた2、3週間後。

三度“奴ら”はやってきた。





ピッツァ

ひぃ!ゆとり世代にしてはしつこい!!






例のごとく、

店のピークタイムに気づくと
店内に入っていたパターン
なのでまたやっちまった。




だがしかし、



今回のパートナーは
わがバッティングセンターの
ケルベロス、



タルトフランベ君なので
面倒くさくなったら彼を
飛び道具に使う手もある。




タルトフランベ

はぁ?
ケーサツでもなんでもかかって来いって感じっすよ!!
※彼が数年前に納涼会で泥酔した時の発言

ピザを捲るとタルトフランベくんのエピソードが!



タルトフランベくんに
前回の経緯を説明しようと
するやいなや、



すでに彼は奴らの座る
レトロゲームに呼ばれていた。




ピッツァ

しまった!
奴ら外堀から削っていく作戦か!?
やられた、バイバイ、タルトフランベくん。
あとはオレがこのカウンターの金属バットで応戦を…






とシュミレーションしているうちに
タルト君が戻ってくる。




ピッツァ

てなワケで、あいつら俺とオーナーの前で暴れた奴らだったんだけど。何か因縁つけられなかった?

タルトフランベ

いえ、特に。
台枠にピンボールが引っかかっていたのでそれを取ったらちゃんとお礼言われましたよ。
あの年にしては聞き分けのある感じの良い子達でしたよ?

ピッツァ

え、マジ言ってんのソレ?
てか普通に未成年でタバコ吸ってない、奴ら?

タルトフランベ

ああそうですかね?
ところで今日の休憩どっち先にいつ入ります?
9時からマツコの特番やるんでそれまでには入っておきたいんですけれども。

ピッツァ

いま掘り下げる話題じゃねえだろソレ!





などと話している間に
気づけば今度は
シレッとカウンターに近い、



バスケットボールで遊んでいた。




ピッツァ

ひぃ、しまった!距離縮められてる!

少年B

負けねえぞ!

少年C

意外と面白くねえ?

少年D

たまにはアリじゃねえこういうのも、なあ?

アラビアータ

ん、ああまあだな。






そして群れから離れるように
アラビアータ君が単独で
カウンター側まで歩み寄ってきた。




ピッツァ

時は来た!…か。






緊張感の走る作者とは
対照的にタルトフランベくんは
呑気に場内のテレビを見て
クスクス笑っていた。




後半へ続く

アラビアータくん 中盤

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