いや、無理でしょ

依頼内容を聞いて俺が最初に発した言葉だった。

なんで普通の高校生がこんなファンタジーに巻き込まれるんだよ

レーナ

そんな!
話が違うじゃないですか!

簡単だって聞いたから来たんだぞ?
無理だよそんなの

ガウェイン

心配せんでよろしいぞ。
君たちには勇者の代理を頼みたいだけじゃ

浩也

どういうことですか?

ガウェイン

いまどき勇者なんて飾りなんじゃよ。
戦闘力なんていらん。
見てくれがよくて、剣を持てればそれでいい。

むちゃくちゃだなぁと思いつつ話を聞く。

ガウェイン

昔は勇者の成り手はたくさんいた……でも今は違う……
魔法使いや戦士……
自分の特技を生かし、やりがいのある仕事につきたいという若者が増えた……

万能なのは器用貧乏と紙一重ってことですか

ガウェイン

そう思えるのだろうな……
魅力ある仕事なのだが……

ファンタジーのファンタジーじゃない部分を見た気分だ。
勇者の人手不足を一般人に嘆くなよ。
ってか、この世界にそんなに勇者要るのかよ。

浩也

俺やります!
勇者やります!

浩也の唐突な発言にその場にいた全員が固まった。
俺含めて。

マジかよ。
いやマジかよ

ガウェイン

引き受けてくれるのか!

浩也

はい!

俺は慌てて浩也の首根っこを捕まえる。
そこにはキョトンとした浩也の顔があった

お前もうちょっと考えてから行動しろよ

浩也

でも、困ってる人はほっとけないだろ?

そうかよ……

普段はおっとりしてるくせに、やると決めたら突き通す。
こいつはそう言うやつだからな……

わかったよ。

ガウェイン

いいんですか?

あいつこういう奴なんで。
何も考えずに困ってる人をほいほい助けちゃうようなね。
そう考えると勇者向きなのかもしれないですよ。

冗談めかして言ったが、おっちゃんは気に入ったらしく、しきりに頷いていた。

それからの動きは早かった。
服を着替え、剣を持たされ、あれよあれよと勇者(みたいに)なっていった。

ガウェイン

なかなかにあっていますよ

浩也

ありがとうございます

にしても早いなぁ。
1時間くらいで勇者かよ
簡単だなぁ

浩也

悠もやりたくなった?

バカ言え

ガウェイン

はっはっは。
では、気をつけて……

俺たちの会話を見てこれなら心配ないと思ったのか、おっさんたちは笑顔で見送った。

浩也が心配だという理由で俺もついていくことにしたが、周りには戦闘力の高そうな人間がうろうろしていて、それはそれで落ち着かない。

レーナ

不安ですか?

浩也

ちょっとはね
でも、レーナたちがいるから

そういって浩也は笑う。
こういうところが主人公だよなぁ

レーナ

着きましたよ

いかにも魔王の城って感じだな

レーナ

中に入りましょう……

表情の読み取りにくい彼女だったが、心なしか表情が引き締まったように見えた。

魔王

来たな……

扉を開けた先には角の生えた女性が立っていた。

浩也

お前が魔王……

魔王

そうだ……
私がこの城に住まう……魔王だ!

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