田舎町のお寺で起きたお話しです。

皆さんがイメージするお寺は、
年配の方が多く集まったり
故人を想いだしては神妙な空気感が漂ったり...
あまり良いイメージではないかもしれません。

でもこのお寺はちょっと違います。
週に一度は近所の子供たちが集まり
集会後には笑顔で帰宅するんです。

(;・∀・)何をしてるかって?

子供たちが「道徳」や「慈愛」の心を養う為に
「お経を唱えたり」「説法をしたり」「周りの大人に相談できない事を聞いてくれたり」...

子供たちにとっては、近所のお兄さんやお姉さんと仲良く話せる(じゃれ合いができる)良い場だったするんです。

そんなお寺ですが、
子供たちが夏休みになると「2泊3日」のお泊り会
が開催されます。

朝はジョギングと本堂の掃除から始まり
お昼や夜には読経や説法などを聞いたりする。
勿論、座禅の時間もある。
食事は精進料理を中心に振る舞われる。

この期間は親御さんは勿論の事、
外部との接触を禁止されます。
「集団生活の大切さ」「命の尊さ」「食事のありがたさ」などを学ぶプチ修行です。

プチ修行の中でも、
子供たちの一番のお楽しみは
実際のお墓と本堂をコースにした
住職お手製の肝試しです。

合宿に参加している中学生以上の子供が
お化け役を、ストーリーテラーは住職が行う。

お化け役の配置が終わったところで、
住職が手差し提灯に明かりを灯し、
一組ずつコースに送り込む。

お化け役は、その明かりが近くに来るまで
息を潜めて待ち構えている。

その時がきたら、各自が考えた手法で驚かせ
次のルートに進ませる。
その繰り返しである。

墓場に送り込まれる方も怖いが、
お化け役もかなり怖い。

ある程度、お化けの配置が離れているので
参加者を待っている間は、
一人墓場に取り残された感覚になったりもする

「早く来てくれ!」
そう思う事もシバシバあった。

そしてまた一組、近くにやってきた。

ベロベロバ~

子供騙しね!

ベロベロバ~って何!

馬鹿にされた!
あまり怖がられないように
したのに!

次行くから、どっち行けばいいの?

お化けに聞けって、
和尚も言ってたからね。

右にまっすぐ行って
竹藪の中に入るんだよ~

わかった~!

竹藪に入って行くのを確認して
もとの位置に戻り、また息を殺した!

-20分後-

さっきの組みが行ってから、
結構経つのに来ないなぁ~
どこかで止まったのかなぁ?

-5分後-

そしてまた一組、近くにやってきた。

うらめしや~

うらめしや~って、何?
馬鹿の一つ覚えなの?
怖くないし

おまえもか~
最近の子供はムカツク

右にまっすぐ行って
竹藪の中に入るんだよ~

あれ?
肝試しは2人1組なんだけど
あの子だけ1人って変だな~

あっそ!

-30分後-

お化け役に肝試しの終わりを示す、
赤提灯を持った最終組が私の前を通過した。

お化け役を終えて
私は就寝場である本堂に帰った。

(消灯までは時間があるので、皆はおしゃべりをしたりして過ごしていた。)

私はあの女の子が気になったので捜してみた。

そんなに人数も居ないので、
すぐに見つかると思っていた。

あれ?
居ないな~

ねぇ~
ピンクのカチューシャした女の子
知らない?

知らないよ。
そんな子!
いつまでそのコスプレしてるの?

コスプレって言わないでよ~
もうすぐ着替えるよ。

あっそ

ねぇ~
ピンクのカチューシャした女の子
知らない?

そんな子、参加してないよ。
何言ってんの?

え~
そんな意地悪言わないで、
教えてよ。
君たちの後に一人で来た子だよ?

今回は、肝試しだけの参加も居ない
って聞いたよ。
ココに居ないんだから、居ないんだよ!

うそだ~

そこまで言うなら、
捜したらいいじゃん。

まわりの大人にも聞いたけど、
その子の事を誰も知らなかった。

これは、前にもあった
お化け役に対する住職の逆ドッキリだと思い
私は探すのを諦めて、寝る事にした。

私は夢の中で、あの子と再会した。
夢にまで現れるなんて、
よっぽどあの子の事が気になっていたのだろう。

お姉ちゃん。
遊んでくれてありがとう。

肝試し楽しかったよ!

それは良かった。

お姉ちゃん、私とまた遊んでくれる?

良いよ!

夢の中での約束だった。
現実世界で話したわけでもない。
軽い気持ちで返事したわけでも無いけど
また遊びたかったのは事実だから。
だけど・・・。

-翌朝-

私は住職に女の子の事を訊ねてみた。
住職からも参加していないと言われた。

けれども、その女の子に似た子供なら知っている。
そう言って住職は話を続けた。

-20年前-

お母さん。
今日はお寺でお泊り出来る日
なんだよね?
早く行こうよ!
皆と早くお話ししたいよ。

まだ、早いわよ。
それよりも、準備しなさい!

はーい

準備も終わり、女の子は外で遊んでいた。

外からブレーキ音と鈍い音が聞こえた為、
お母さんは心配になり外に飛び出した。

ぐったりした我が子は、
まもなく帰えらぬ人となったそうだ。

住職は話をつづけた。

以前も私と同じ経験をした人がいるらしく
その人も女の子と遊ぶ約束をしていた。

女の子が毎日夢の中に現れるので、
ある日、女の子に別れを告げたらしい。

その日の夜、
その人は事故にあって、帰らぬ人になった。

住職によると、
怒った女の子がその人を連れて行って
しまったのだとか・・・。

住職は私に向かってこう述べた。

住職

その女の子とは、
約束しちゃイケナイよ。

約束をしたのなら、
守り続けるか、
女の子を怒らせず諦めさせなさい。

さもなければ、
君も同じ運命を辿ってしまうよ。

住職

私もその子との約束を守る為
毎年お泊り会を開催して
肝試しも続けているのだから。

だから肝試しをする際に、
いつも言ってるよね?

「お化けとは約束してはイケナイよ。
話しても良いけどね。」

30歳となった今でも、
私は夢の中で女の子と遊んでいる。

だって、
怒らせない方法なんて分からないだから。
この話を友達にしても、迷信だと笑われるけど
死にたくないから守ってる。


あなたも、ホントウの肝試しをしてみますか?
ホントウの肝試しって何って思いましたか?
それは、女の子と約束をして
怒らせないように断る事ですよ!

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