とある夏の夜、時計の針は20時を指していた。
身体にまとわりつく風を振り切りながら、
家を目指す。

ジメジメして気持ち悪いし
雨が降る前に家に帰りたいなぁ~

いつもと同じ道を歩いているのに、
いつもと違う感じがした。
それは、頭上の積乱雲のせいだろうか?
それとも、身体にまとわりつく風のせいだろうか?
そんなことを考えながら、ひたすら歩く。

公園を横切れば、家はすぐそこにある。
いつもと同じ様に横切ろうとする僕の気持ちとは
裏腹に、足が公園のほうに向かってく。
いつもなら気にも留めない筈なのに、
無性に気になってしまった。

公園に近づくほど、
身体が気だるくなっていく気がする。
いつも見ている風景なのに、
今日はいつもと何が違うのだろうか?
気になる。

一歩、また一歩と歩みを進めていく。
気がつけば公園の中心部いた。
滑り台・砂場・鉄棒と順に視線を配らせていたら
ジャングルジムに視線を合わせた瞬間、身体が硬直して、視線を移す事が出来なくなってしまった。

大丈夫、誰も居ない公園。
チョット疲れて、
身体が固まっただけだから
すぐに動けるようになる。

次の瞬間!!

少女の笑い声が、耳横から聞こえてきた。
背筋に何か走るものを感じ、
身体が凍り付くような感覚となった。
そして・・・。

少女と僕の顔の距離が5mmまで迫ってきた!
表情は現実離れしていたが、
どこか悲愴な面持ちであった。
そして何かをされるわけでなく、
突然姿を消したのであった。

動けるようになった僕は、
その場から逃げるように家に帰った。
鏡で自分の顔を確認すると、
そこには映っていたのは、僕が目の当たりにした
少女の顔そのもだった。
そして、身体には無数の手形がついていた。

それ以降の僕は、自分の顔を取り返す為
夜な夜なジャングルジムの前で姿を現し
心配そうな目で見つめる人から、
顔を頂戴している。

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