【43】渡さない
そっ、
そんなこっ恥ずかしいことさせんじゃねーよ
俺は思わずそう言ってしまっていた。
杏子は
……
黙っていたけれど
冗談、冗談。
どうするかなーって思ったんだ
あはははははは
その後で
誤魔化すように笑い声をあげた。
声の中に
表情に
明らかながっかりした感を感じる。
だが、こればっかりは
勘弁してくれ。
俺のキャラじゃない。
それに、
花言葉が嫉妬なんて言う花を
貰って嬉しいのかお前は。
でも、
いや、
やっぱり無理。
だって杏子は幼馴染だし
彼女……じゃないし
開けるぞ~
ああ、もう!
俺は早く元の世界に帰りたいんだ。
購買部のパンが
売り切れることだけを
心配すればいいような、そんな
平凡な日々に――
朱梨、
なんだよ
……あなたに、精霊の加護がありますように
……は?
ふふ。ちょっと言ってみたかっただけー
アホかい
なにか言いたげな杏子に背を向け
俺は鍵を回した。