【42】渡す
俺は薔薇を見た。
ま、別に使うもんでもないしなー
黒ローブがなんの意図で
これを寄越したのかは定かではないが
俺が持っていようと杏子が持っていようと
そこは別に問題じゃないだろう。
ほれ
俺は薔薇の枝を
突き出した。
杏子が苦笑する。
……もうちょっと雰囲気が欲しいなぁ
そんなところまで要求すんな、馬鹿
えへへ
それでも杏子は
嬉しそうに笑って、
さあ、行こう。朱梨
と、俺の袖を引っ張った。
そして小さく一言。
……あなたに、精霊の加護がありますように
? おう
あの本の台詞だろうか。
俺は物語Ver.をまともに
読んでいないからわからないが。
薔薇を貰って精霊の姫にでも
なったつもりなのかもしれない。
「女の子はいつまでたっても
お姫様なのねw」
なんて鳥肌が立ちそうなキモいことを
思うつもりはないが、
ちょっと照れくさい。
開けるぜ
俺は鍵を回した。