【41】真実の扉
そうか
本をひととおり読み終えて
俺は顔を上げた。
わかったの?
うん。
紙の名っていうのはこの本の話数、
塊っていうのは空白行で仕切られた地文ごと、それと台詞のことだ
みっつめの数ってのは、その塊の文頭から数えて何番目の文字を指す。
つまり、
最初の「3-43-15」は第3話、本文の43番目の塊の文頭から数えて15番目の文字
「鐘」
2番目の「6-3-31」、3番目の「6-3-32」は
第6話の冒頭台詞の次の地文、31・32番目の文字「へ」「と」
そうやって見ていくと
「鐘へと上る階段のうらがわ」となる
……階段、
杏子は上に釣り下がっている
巨大な鐘を見、
そこから伝うようにして
機械の中に溶け込んでいる
古びた階段に目を向けた。
行ってみようぜ
今にも崩れそうな木の階段の裏側、
時計の機械に埋もれるようにして
その扉はあった。
こんなところに
これが外につながっているのだろうか。
それともこの先には
また螺旋階段が
待ち構えているのだろうか。
あの応接間になっていて
みんなが
「遅かったね」と
振り向くんじゃないだろうか。
もしかすると
鎖を引きずった巨大な獣が
唸り声を上げているんじゃ
ないだろうか。
ノブの下には小さな鍵穴がある。
俺は最後に残った
銀色の鍵を取りだした。
これ、だよな
もうそれしか残ってないもんね
杏子が頷く。
開けるぞ
……
……朱梨
杏子は思い詰めたような顔で
俺の手元に目を落とした。
その薔薇、あたしに頂戴?
薔薇?
俺の手には
黒ローブが差し出して来た
黄色い薔薇がある。
「嫉妬」を花言葉に持つ花。
あの本の主人公が
精霊の姫に
差し出したとされる花。
俺としても
黒ローブが何故これを
手渡して来たのかわからない。
なんで?
せっかく時計の元にいるんだもの。
ちょっとは精霊の姫の気分を味わいたいと思わない?
は?
扉を開けようとした矢先に言う言葉か?
そんな不審が顔に出たのだろう、
杏子は慌てて手を振った。
あ、いや、ええっと。
やっぱり変だよね、こんな時に
……
女と言うものは
こんな時にそんな気分を味わいたいと
思うものなのだろうか。
と思ったけれど
こんな時計台の上になんか
もう来ることもないんだし
何かに使うあてもないし
欲しいっていうなら別にいいか、
とも思う。
しかし!
しかしだ!!
改まってそんなことを言われると
意識しちまうじゃねーか!!
畜生!
そんなこっ恥ずかしいこと
させんじゃねーよ!!
と思うのも確かなことで……
黄色い薔薇を
A:渡す
B:渡さない