【39】試練8:”最初の問い”の謎
最初の問い、って……なんだ?
……レンガに彫ってあったやつかなぁ
虎次郎くんがいなくなった時の
あれにまだ他の答えが入ってるってことか?
そうだろうか。
だが、なにかが引っ掛かる。
”レンガの謎のことだって
たまたま
うさぎが飛び出して行った先に
あったからよかったものの、
本来なら見落としてもおかしくないし”
ホールへ向かう途中、
俺が考えていたことを思い出した。
そうだ。
2番目の暗号は
「ホールに行け」という指示の元に
見つけさせられたものだったけれど
あのレンガの暗号は
偶然見つけてしまっただけで
暗号を出す側からしてみれば
「最初の問い」のつもりじゃなかった
のかもしれない。
むしろ次の暗号に、と用意されているであろう「ホールで待ち構えている謎」を先に手に入れるべきじゃないかな
俺たちが見つけた謎の順序とは別に
暗号を出す側が考えていた順序
というものが別にある……?
だとすれば、
レンガのやつは、最初の問いじゃない
えっ?
他にあるんだ。偶然見つけて順序が入れ替わるより前の「最初の問い」が
でもレンガより前に指定された謎なんかなにも、
レンガの暗号は
うさぎが飛び出していったから
見つかった。
では、
うさぎは何故飛び出していった?
集められた全員に
記憶がなかったからだ。
「応接間に集え」という紙切れの
指示に従って集った俺たちが
皆一様に揃って
記憶がない、なんてオカルトじみた
ことを気味悪がって……
そうだ、あの紙切れ
俺はポケットを探り、
くしゃくしゃに丸めた紙片を
取り出した。
ここに来た時のことを
なにひとつ覚えていない俺たちは
いつの間にか持っていた
この紙きれの指示によって
応接間に集められた。
言いかえればこれが
俺たちが他のどの暗号よりも先に
暗号の主から受け取ったもの
にあたる。
だとすれば
最初の問いかけは
この中にあるんじゃないのか?
キリオが落としてみせた紙片。
俺だけが持っていなかった紙片。
あとでゴミ箱に捨てようと思って
捨てるのを忘れていたのが
今になって役に立つとは。
これに暗号が?
書かれているのはただ
「応接間に集え」という文字だけ。
短すぎて縦読みすらできない。
だとすればこの紙片に、
まだそれ以外のなにかが……
俺はその紙をかざして見た。
あ!
光を透かして
うっすらと別の文字が見える。
なんだこの数字の羅列は
上の文は
さっき黒ローブが言った言葉だ。
きっとこのハイフン(-)で
つなげられた数字のことを
言っているのだろう。
……これをどうしろと
そんな、
数字だけ並べられても。
50音にあてはめるのか?
アルファベットに変換するのか?
でもどれも違う。
頭を悩ませていると
さっきの精霊さんが言ってたじゃない?
全ての謎は歩んできた道のりに、って
杏子はそう言って
ここでのあたしたちの行動は、この本になぞらえてあるんでしょ?
応接間から持ってきていた本を
取り出すとページをめくった。
途中から白紙の本。
俺たちになにかがあると
内容が増えていく本。
実際、途中で
静物画の挿絵が増えたっけ。
そんなことを思いながら
ページをめくっていくと、
……なんか、話変わってね?
精霊の姫とその騎士が繰り広げる
ファンタジーな物語は
いつの間にか
あたしたちの話になってる……!
俺たちがこの城で遭遇した
様々な出来事の記録に
姿を変えていた。
一言一句違えずに。
だとすれば、
この本の中に
俺たちの過去が記されている――?
■試練8
暗号から導き出される文章はどれでしょう。
A:3時を示す時 短針がある場所
B:鐘へと上る階段のうらがわ
C:来た扉をふたりで再び開く
D:黄色の薔薇にその鍵を使え
本を読み返してみる?