【26】Bの選択
出て行こうとするオッサンに
うさぎは言い募る。
そりゃ、あたしだって置いて行きたくないわよ。
でも待っていればどうにかなるの?
絶対に、あたしたちが生きている間に配膳室に行けるって確証はあるの!?
安っぽい正義感や自己満足のために命をかけたいんならひとりでやって!
あたしはここを出る。
ここを出て元の世界に帰る
あたしだってキリオが必ず戻ってくるんなら待ってたいわ。
でも「必ず」なんて……
うさぎちゃん……
……
ふと、今のうさぎに
「キリオはひとりで脱出してしまったんだ」
って言ったらどうなるだろう
って思った。
彼も何処かで彷徨っているって
そう思っているからこその
信頼が
どう崩れていくんだろう……って
……
思って……やめた。
そんなことを言ってどうなる。
うさぎが傷つくだけで
俺にはなんのメリットもない。
それに
ひとりで脱出したにしろ
どこかで彷徨っているにしろ、
キリオがここにいないのは同じだ。
……はぁ
俺はひとつ息を吐くと
険しい顔でうさぎを睨んでいる
オッサンに声をかけた。
行こう、オッサン。
配膳室にあの犬のいる世界がつながっているわけじゃない。
虎次郎やキリオが美登里さんに会う可能性だって残ってる
俺たちがここにいてもなにも変わらない。進めって言う以上、俺たちは進むしかないんだ
……無事でいるんだ、って……信じるしかねぇよ
……
本心から言ってないってことぐらい
馬鹿な頭でもわかってる。
いつ化け物に破られるかわからない
扉のこちら側で
いつ繋がるかも知れない
配膳室を待ち続けるなんて。
美登里さんは心配だけど
そのために
自分が危険が及ぶのは嫌だ。
うさぎも杏子も
きっと同じことを思ってる。