薄墨潤に出会ったのは入学して1ヶ月経った頃のことだ。彼は目立っていた。理事長の関係者であり、日常に慣れたいということから外国帰りの御曹司であるという噂が流れていたからだ。

君が、ここの組織の一員か?

木原 悠月

そうだけど……

 防衛隊の前に立っている男。すらっとした背の高い男で制服を着崩すことなくきっちりとしている。
 悠月は名前を訪ねると、噂の転校生、帰国子女であることがわかった。本当4月に入学するはずだったらしいが、都合が悪くて5月になったらしい。

実は理事長から頼まれてね。ここに入ってくれって

木原 悠月

あんたが?

日常というものを学べと言われたのさ。君は個性が強く出すぎているとね

木原 悠月

協調性の問題?それって他人にべらべら話していいわけ?

 薄墨潤は初対面からとても人懐っこい人だ。
 初対面の自分に彼自身の任務であろう詳しい事情を話す男だ。
 言葉遣いはとっつきにくいが、何やら態度はそうでもないというか変人っぽく見える。

いいのさ。この私を否定したんだ。確かに問題はあることは自覚している。けれど、私の何が悪い!

 そしてそのまま幹部室に入って、薄墨潤の人生相談みたいなものが始まった。
 薄墨潤は人間関係がうまく築けないことが問題である。
 一応、初対面の人とは仲良くできるそうなのだがすぐに疎遠になる。
 その理由は彼の強烈な個性である。辛い物をこよなく愛し、甘い物が苦手。
 そして何より彼が嫌うのは、醜い人である。

私は人間が嫌いだ。特に金になるとうるさい人間だ。大体、金になるとなんで人は争いをするのだ

 その人間嫌いになったきっかけは彼が特殊な世界にいることからだろう。環境が彼にとってはよくなかったそうだ。

それで、防衛隊に入れって言われたのだが何かしらの試験とかあるのか?

木原 悠月

あー、特になかったな。この町を守りたいとか志高い人とか適当に居場所を求めて入った人もいるから

しかし、幹部というのだろう?君は

木原 悠月

将来の見込みもあってのことかな。その、薄墨くんも何かしらの功績さえ起こせば先輩たちも君を幹部に推薦するかもね

 ここは特に幹部になるための仕組みなどはない。
 先輩たちの信頼、防衛隊としてどんなことをしたのかという結果さえあれば幹部になれる。
 元々ここは不良校であるため、何かしらの規律というものが全体をまとめるのに必要だったし、街自体もあまり治安が良いとは言えないところのため防衛隊が生まれた。

信頼と功績ね…。私にできるのだろうか

木原 悠月

なんか、自信ありそうであまりないのね

私は自慢ではないけれど、仲が悪い人が多いのだよ

木原 悠月

そんな悪い事を堂々と言うなんて立派な自慢にしか聞こえないよ

 悠月は変な人が入ってしまったと思った。けれど、薄墨はそれゆえに孤独な人。薄墨の親戚である理事長が悪くはない薄墨を心配する気持ちがわかってきた気がした。

木原 悠月

そして潤は心が醜い人が嫌いっていう理由で校内のいじめ問題を撲滅に走ってこの人はリーダーにふさわしいって感じになったってわけ

薄墨先輩ってすごい人だったんですね

木原 悠月

彼は男女平等に容赦なかったからね。それ以来ここでは嫉妬によって狂うことは美徳に反するっていう空気が流れたからね。きーちゃんがひどい目にあったら、潤が駆けつけるだろうね

 そうして悠月が桐子に潤の伝説を話していると、本人がやってきた。

きーちゃんか…。とても可愛いあだ名だな

 今度は潤にきーちゃんと呼ばれて少し頬が赤くなる。
 これで自分のあだ名が決定してしまった。正直これから自分がきーちゃんと言われるのが少し、きついけど悪い居心地はない。

よろしく。きーちゃん

よ、よろしくお願いします

 こうして、桐子は少し前に進める一歩を歩み始めた。
 生きている人間が少し好きになっていく大事な出来事であった。

薄墨潤、変人で孤独な人

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