▼Sheep9.Old Sheep

あの日から、どれくらい経っただろうか。

小さな村で生まれ、たくさんの仲間と一緒に穏やかな日々を過ごしていた。

そんな平和な村で、姉は結婚し、番いとの間に子供も生まれた。きっとこの時、たまらなく幸せだったのだろう。

子供が生まれれば、村の皆が祝福して。その都度、笑ったり泣いたり馬鹿騒ぎをしていた。

―幸せだった。あの日姉が、行き倒れていたオオカミを助けるまでは。

姉は、とある森で行き倒れのオオカミを見つけた。心優しかった姉は、一度は躊躇ったものの、村の皆を呼んでオオカミを村に運び、看病した。

一時はどうなるかと思ったが、目を覚ましたオオカミは、誰も襲うこともなく世話をしてくれた姉に、とても感謝して帰って行った。

それからというもの、その時のオオカミが何度か村を訪れ、恩返しだと言って食べ物をたくさん持ってきた。

次第に、村の皆とそのオオカミは親しくなり、完全に心を許していた。

そんな矢先、突然そのオオカミは村にこなくなった。

突然やってこなくなったオオカミを、村の皆は心配していた、また行き倒れているんじゃないかと。

そしてある夜のこと―小さな村はオオカミの大群に囲まれた。

村の動物たちの悲鳴が木魂し、絶望する暇もなく食いちぎられる仲間。

穏やかだった日常が、血で一気に地獄へと塗り替えられる。

肉片に群がるオオカミの中に、見知った顔をみつける―あのオオカミだ。

姉さんの助けたオオカミが、大勢の仲間を引き連れてやってきたのだ。

オオカミの中をかいくぐり、姉さんと姉さんの子供を連れ必死で逃げた。

突然のことで動揺していたが、そんな状態でもすぐに分かった。

裏切られたのだと。

物陰に隠れても、においですぐに見つかってしまう―何もかも限界だった。

最後に姉さんは

分かっていたんだ、姉さんは助からない―それでも逃げるしかなかった。

姉さんの大切な子供のために。

 

To be continued.

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