旧校舎内を歩いていたら、素敵な場所に着いた。
ここは本当に学校の中なのだろうかと思うくらい、素晴らしい場所だ。
 ステンドグラスがキラキラと輝いていて、それを見て興奮した心臓がすーっと落ち着いていった。
 動きすぎて気分が悪い。気分が悪すぎて吐きそうというのを考えないようにして適当に椅子に座る。
 周りは椅子と机、そして本棚には参考書がある。自習室なのかわからないが、とても静かな場所だ。

なんて馬鹿なことをした

 桐子は自分が弱すぎることを反省した。
 しかし、あのまま部屋に居続けたら体調が悪くなって余計にひどいことになっていたかもしれないと思った。

野川 詩音

桐子…

 桐子が黙って立ち上がって出て行った。詩音は桐子に手を伸ばしたが、叩かれて強く拒絶される。
 悠月は桐子が険しい顔をして、睨みつけていった理由が気になっていた。

て、おい。追いかけなくていいのか

 桐子の動作に驚いたが、颯太がすぐに意識を切り替えて詩音に言う。
 しかし、詩音は首を横に振って再び座りなおす。

野川 詩音

しばらく一人にさせる方がいいのです。桐子は体調が悪い時は機嫌も悪いから

 詩音は桐子の体調の変化、そして苦手な事に対して気を配ってなかったことに反省した。
 瑞希がいたときは、平和だったなあと思い出す。自分と桐子と詩音の3人でとてもいい関係だったのだ。 バランスを築けていて、詩音も桐子も呼吸が楽にできていた。

野川 詩音

桐子、人間嫌いだから少し限界だったんです。ごめんなさい

木原 悠月

ここは俺が見に行くから、あとはよろしく

 部屋を出て、見張りに桐子の行方を訪ねて、まっすぐ行った先を指さす。
 見張りは桐子が突然出て行ったことに驚いて、そして心配していた。

早く追いかける方がいいですよ、なんか変でした

木原 悠月

変?

呼吸が乱れていて、苦しそうでしたから

 見張りも心配して声をかけたが、桐子に睨みつけられてしまい何もできなかった。
 悠月は潤専用の自習室にいるのだろうとみて、歩き出した。

 桐子を見つけた。
 ステンドグラスに感動しているのかじっと見つめている。表情は無表情だが、目が輝いていた。

木原 悠月

よかった。ここにいたんだね

……

 桐子は悠月に気付いて立ち上がり、じわじわと逃げようとしている。しかし、後ろの他の椅子に腰をぶつけて悶えた。

木原 悠月

無茶しちゃだめだよ

……

 桐子は失態を見せてしまい、恥ずかしそうにうつむくが悠月は気にしてない、むしろかわいいなあと思いながら手を差し出す。
 桐子は差し出された手を握って椅子に座る。

木原 悠月

今日はいきなり連れ出しちゃってごめんね。色々と慣れないことあったから大変だったと思うけどね

…いえ、私の方こそすみませんでした

 話をしてみると、桐子の表情は変わらない。潤の自由奔放な事情聴取の時もそうだったし、昼休みに呼び出した時も同じだった。
 さっきの可愛い表情が見たいなあと悠月は桐子の名前を呼んでみる。

木原 悠月

それで、桐子ちゃんだっけ

桐子でいいです。ちゃん付けは、苦手なので

木原 悠月

せっかくこれから協力関係に入るからね、ちゃん付けは無理なのか…

 名前にちゃん付けで呼んでみたが、表情は変わらない。しかし、頬がぴくっと動いていたことに気付いてもう一息かなと悠月はまた読んでみる。

木原 悠月

じゃあ、きーちゃんでいいかな

きーちゃん!?

 きーちゃん、それは桐子にとって大打撃だ。頬が赤く染まり、そわそわしだして可愛くなった。

もういいですよ。きーちゃんでもいいです。で、話はこれからよろしくって話ですか?私は断りますから

木原 悠月

え、どうして?

あなたたちと一緒にいたら目立ちますでしょ。何かしらの嫉妬に狂った人に狙われたら嫌とかそれなりの代償に対応できない、不器用なんです

 桐子の心配は杞憂である。
 確かに、特別な人に平凡な人が近づいたら特別な人にあこがれる者たちは近づいてきた平凡な人に対して良くない思いを抱くだろう。
 しかし、そんな問題は起こらないと保証する。

木原 悠月

大丈夫だよ。いじめとか何かしらそういう衝突は起きない。起こさせない

……

木原 悠月

うちのリーダー、潤は許さないからね。そういうの、キーちゃんと同じくらい嫌いなのさ

 悠月は潤を怒らせるとどのようになるのかを語った。
 辛い物が好きな優秀な変人の恐ろしい伝説だ。
ここが平和な理由っていうのは潤のおかげである。

すべてが恐ろしい。予期せぬことばかりだから

facebook twitter
pagetop