13.現状

くぅ~・・・疲れたぁっ!

特訓が一段落して、
私と芹ちゃんは図書館へと戻った。

いや、芹ちゃんが戻した。

お疲れ様、かなり進歩したね

んふふっー、私ってば天才なのかも

最初は難しいと感じたけれど、
やればやるほど上手くいくようになっていった。

ふふっ、確かに天才かも

でしょでしょー

どうしてこんなに上手くいくのか、
自分でも不思議なくらいだ。

でもそれが今の自分に
必要なことであることは間違いないので、
もっともっと上達していきたい。

それにすっごく面白いね

本当に魔法みたいだし

そしてそこに楽しみを見出せているのは、
良い傾向なのではないだろうか。

その気持ちは分かるよ

私も初めての時は
無駄にはしゃいじゃったし

はしゃぐ芹ちゃん・・・それは見てみたいな。

きっと可愛いんだろうなぁ

さて、
それじゃあ茜さんについての
話をしようと思うんだけど、
いいかな?

茜ちゃんの?

うん

茜さんの夢に介入する以上は、
知っておいた方がいいと思うの

なるほど・・・それは是非知りたいかな

どういう話かは想像できないけれど、
知っておくべきなのは間違いない。

分かった

それじゃあ、話すね

茜さんの現状とか、
白髪鬼が何かとかを

白髪鬼・・・か

どういうものかは分からないけれど、
言葉の響き的に
あまり良いものではないのは分かる。

まずはそうね、
白髪鬼について話そうか

白髪鬼っていうのは、
字面の通り白い髪の鬼を意味しているわ

まんまだね

ええ、まんまよ

ざっくり説明すると、
白髪鬼と呼ばれる鬼が
天災として世界を巡り、
虐殺の限りを尽くすお話

む、無茶苦茶物騒だね・・・

ちなみに同じタイトルの
作品が実在するけど、
関係はないみたいよ

白髪鬼ってタイトルの本を
読んだことあるの?

うん

私はそのタイトルに聞き覚えがないので、
きっと本を読まない奴だったのだろう。

それに引き換え
芹ちゃんはなんて博識なのだろうか!

どの時代をモデルに
しているかは分からないけど、
とにかく片っ端から
人が死ぬ描写があるわ

スプラッタ作品かな?

映像化したらまさにそれね

笑っているけど、実際の所は笑い事ではない。

だってそんな物騒なものに、
茜ちゃんは囚われてしまっているのだから。

話のオチとしては、
その世界から白髪鬼以外が消えて終わり

その消えるっていうのは、
白髪鬼が殺して、って意味だよね?

そういうことになるわ

それを聞いて、
嫌な予想が脳裏を過ぎった。

もしかして茜ちゃんの夢に
人が誰も居ないのって・・・

あなたの考える通りだと思う

白髪鬼からの侵食によって、
茜さんは人を殺して回る夢を
見せられたんじゃないかな

だからその結果、
あの世界には茜さんしか存在しない

待って

その言い方だと最初は
茜ちゃんに意識があったってこと?

どうしても気になって、
聞いてしまった。

もちろんあるわ

じゃ、じゃあ、
茜ちゃんは意識ある状態で、
自分が人を殺して回る悪夢を
見せられたっていうの?

全部私の予想だから
本当かは分からないけど、
その可能性は高いと思う

だとしたら、
あんまりだよ

茜ちゃんの人柄は知らないけれど、
確かにあそこに存在していた茜ちゃんが、
そんな酷い目に遭っていただなんて・・・。

あなたを助けた時、
あの夢にはもう
茜さん以外の人は居なかったわ

それはつまり、
それだけ侵食が進んでいるってこと

だからもうあんまり時間がないの

茜さんの自我が完全に消える
のも時間の問題だと思う

き、消えるとどうなるの?

夢を本に乗っ取られる

乗っ取られると・・・どうなるの?

その夢に根付いて、
次の相手を探し始める

そうなったらもう、
私達は干渉できなくなる

で、でも、
さっきやったみたいに、
本を破いてそれを鍵にすれば

誰かの夢に根付いた本は、
ここから消えるわ

そうしたらもう追えないし、
その後どうなったかすら
分からなくなる

まぁ
自我が消されているのだから、
良い結果には
なっていないと思うけど

確かに話を聞いた限りでは、
その結末が良いものであるとは到底思えない。

で、でも・・・
助けられるんだよね?

現に芹ちゃんは
茜ちゃんを助けようとしていたはずだ。

それはつまり、
その手段があるということで・・・。

うん・・・助けられる

その為に私は、ここにいるんだから

それは、どうやって?

それはね――

それを聞いた私は、
その意外な方法に・・・心底驚くのだった。

pagetop