荒い呼吸のままに体育館へと走り込んだ。
涼太は無事だろうか。
涼太とは幼い頃からの付き合いで、涼太が一度このちを離れ、先月、涼太がこちらへ戻って来てからは高校へ通う都合上、同じ家で暮らしている間柄だ。
うちの父親は幼い頃に両親を亡くし、近所に済んでいたという涼太の祖父母に育てられたのだという。
そのため、少しばかり疲れた様子で戻って来た涼太を家に住まわせる事になったのだ。
丁度、兄が大学進学で家を出たばかりであり、その部屋を使う形で、涼太は高校生活を再スタートさせた。
いろいろあったのだ。
この片田舎の学校でゆっくりと過ごす事も悪くないだろう、そんな風に語っていた両親や、祖父母の会話が蘇る。
ゆっくり過ごす。
本人もそう願っていたはずなのに、この状況は何なんだ。
あの化物は誰かがいたずらをしているという訳ではないのだろうか。いや、きっとそうに違いない。
そう思う一方で、傘立ての直撃をくらって腕がもげたのは、どう説明したら良いのだろうか。
作り物にしてはやけにリアルだった。
カメラ越しにならば騙される物でも、実際に目にするとその細部の違和感はどうしても残る。つまるところ、作り物で肉眼を騙す事は結構難しい。
金をかけたアトラクションならともかく、こんな風に学校でいきなり仕掛けるいたずらとしては、やけに手が込んでいる。