ホテルに戻るや否や、僕は青葉に向けてそう言った。
残念なお知らせと嬉しいお知らせ、どっちから聞きたい?
ホテルに戻るや否や、僕は青葉に向けてそう言った。
そうだな。両方とも察しは付いているが、取り敢えずは残念な方から聞こうか
実はさ、桐谷が高校の後輩に呼ばれて、さっき帰ってしまったんだよ
まあそこにいないからそんな気はしていたがな。それで? 嬉しい知らせというのは何なんだ?
その代わりとは言わないけどさ、美樹ちゃんがやっと合流できたんだよ
ああ。それならさっきお前と一緒にホテルに入るのを見かけたから知っているよ
何だ……面白くもないな。せっかく喜ばせようと思ったのに
真面目すぎるこいつの性格は、こういうところでは弱点だと思う。
喜んではいるさ。驚いていないだけでな
まあ別にいいんだけどな。それで、お前たちはもう風呂に入ったのか?
青葉たちがホテルに帰ってから30分は経っていたことを思い出しながら、僕は聞いた。
いいや。せっかくだからお前たちを待っておこうと、みんなでトランプをしていたからな。桐谷が帰ったのは残念だが、都と三枝と一緒に入れるのはいいことだろう
お前は、なんていい奴なんだ!?
え? ちょっと待って大樹くん。スルーなの? 今おかしいと思ったのは私だけ? ねえ桐斗君も、今さらっと言ったけど何かの間違い?
よく分からないが美樹ちゃんが狼狽えていた。
何を狼狽えているんだ三枝?
おかしなことを言うんだね美樹ちゃん
え? あれ? 一緒にお風呂に入るって言ったよね? 混浴? 混浴なの桐斗君? そしてそのことに対して何の疑問も抱かないの二人とも!?
混浴。……なんて素晴らしい響きなんだ
その為に水着を持ってきたんだし、問題ないだろう?
ワタシ……ミズギナンテモッテナイ……
美樹ちゃんはそのままでもいいんじゃない?
フロントで300円でレンタルしていたぞ
ちょっと借りて来る!!
フロントにダッシュする美樹ちゃんの後姿を見送り、僕は青葉に告げた。
ところで青葉。今夜は時間あるか?
まあ、ホテルで寝るだけだしな。何だ? なのか大切な用か?
そうだ。だからさ、今夜7時に、トロピカルアイランドに来てくれないか?
僕はそう言った。トロピカルアイランド。ホテルの近くにある遊園地だ。
前々から練っていた、作戦決行の場。
ふむ。まあいいだろう。じゃあ6時半頃に出発するか?
いや、悪いけど一緒には出れない。良ければ先に行って待っててくれないか
分かった。今夜7時だな。覚えておこう
助かるよ
約束は取り付けた。あとは美樹ちゃん次第だ。僕は密かに胸の内で、作戦の成功を祈った。
お待たせ。水着借りれたから、お風呂に行こっか!
フロントに走っていった美樹ちゃん戻って来た。二重の意味で、彼女の心臓はバクバク鳴っているだろう。
かくいう僕も、心臓が今にもはち切れそうである。
さて、それじゃあ早く温泉に入ろう!
僕はそう言って、颯爽と駆けて行くのであった。
* * * * *
こんにちは。ご覧いただきありがとうございます。
都の夢の話しも、早いことでもう6話目です。夢はここまで書こうと決めてはいるのですが、意外に長くなってしまい、『こんなに夢って長いっけ?』と自分に突っ込んでいます(笑)
読者様も、今しばらくお付き合い頂ければと思います。
それでは、今回はこの辺りで失礼します。