今までのおさらいをしようか

野川 詩音

あらすじだね。大事なところだね

桐子と詩音は夜、出かける前に確認していることがある。瑞希が猟奇的な殺人鬼に殺された可能性が高いこと、そして瑞希の前にも後にも同様の手口の殺人があることを確認した。

野川 詩音

殺人鬼は何かを主張したいのよね。死体を画用紙に、

そして、血で描く

二人は独学で学んだ。殺人鬼には何かの主張があるらしい。そして、その主張を読み取れば犯人がわかるとか。
犯罪心理を扱う海外ドラマを見たり、理事長先生が調達してくれた心理学の本などを読んでいる。

野川 詩音

なんて、いつもふざけて言っているけどさ

うん

と一瞬の間が入る。
詩音はうつむいて、そして吐き出した。

野川 詩音

ふざけんなよ。まじで殺してやるよ

詩音は今日も本気で演じるのだと桐子は思った。詩音は瑞希が死んでから不安定になったと思う。明るい時と暗い時と、常識がすべてぶっ飛んでいる時と、不条理を許さない時があるからだ。
殺人鬼ってそういうものなのよと詩音が言っているのだが、実際のところ詩音の精神状態はどうなのだろうと桐子は不安に思っていた。

野川 詩音

そう言っている私は今日も完璧に狂っているかしら?

桐子はうなずいた。とにかく肯定が必要だ。
詩音は満足そうに立ち上がって、出かける準備を始めた。
桐子も鞄にデジカメとノートと筆記用具と懐中電灯などを入れて玄関へと急いだ。

街のパトロールをしていると昨日はなかった落書きを発見する。
赤い文字で書かれていた。

野川 詩音

えーっと…

水に浮きし赤き花って書いてあるよ

野川 詩音

ってことは次は川かしら。ここら辺、川しかないよね

赤き花ということはいつもの刺殺か…。

現在ここは橋の下。適当にぶらぶらと歩いてメッセージを探している。
殺人鬼には特徴がある。
それは殺人予告を町のどこかに落書きするのだ。

野川 詩音

水辺か…。どこかで殺して捨てるのでしょうね

そうだろうね。早めに見つかってほしいね。水死体ってあまりよくないものだから

水死体はあまり好まない。
腐敗が進んで、皮膚がずるっと脱げてしまったということがあるらしい。これはサスペンスドラマで学んだ。

詩音と桐子は殺人鬼のことを知りたがっている。
殺人鬼の主張は何なのか、そしてどうして人を殺しているのかわからない。
そもそも相手が何者なのかは殺人鬼であること以外知らない。

伝えたい事を知らなければ、この殺人は終わらないよね

野川 詩音

伝えるのが苦手だからってこんな手段を使うのは嫌ね。社会のごみだわ

詩音の言うことは至極まっとうである。
しかし、たまにそれは強すぎる正論となって様々な立場の人と対立してしまうのだ。

世の中、器用な人ばかりじゃないよ。自分にはできないからと言って、社会のごみなんて言っちゃだめだよ。
自分が気に入らないからと言って社会という言葉を借りて主張するのはどーも、好きじゃないね

野川 詩音

あー、やばい。私言い過ぎたわ

詩音は悪い子ではないけどねと、桐子は思う。言いたい事をずばっと言うところは素敵だ。
しかし、なんでも決めつけすぎるのは悪いところだと思った。

殺人鬼さんは悪いことをしている。許されないことをしている。
でも、許さないからと言って、私は殺人鬼に対して対等に対処するよ

野川 詩音

そうね。殺人鬼も人間だものね…。自分の一方的な意見や感情にまかせすぎていけないものね

桐子のような冷静さがうらやましいと詩音は思った。
自分にそのストッパーがあったら、人間関係の維持に困らないだろうなと思っていた。
彼女は集団の中で自然といじめっ子になってしまうのが悩みであった。
何気ない一言で傷つく人をばかばかしく思うのだが、言葉の恐ろしさを教えてくれたのが、桐子と瑞希からだった。

野川 詩音

人生の恩人である瑞希のために、早く見つけないとね

二人で故人を偲んでいたところ、突然邪魔者が現れた。
懐中電灯を照らしてまぶしくて目を閉じる。
警察かと、警戒したが違うようだ。

ほう、こいつらが理事長の申し子か

さすが、可愛いこばかりじゃん

桐子と詩音はそれぞれの武器を構えて距離を取った。

すべてが器用とは限らない。それが世界というものだ

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