それは5月中旬のことであった。
山を隔てて建てられている神社と寺において男と女がそれぞれ魔剣を手を伸ばした。
それは5月中旬のことであった。
山を隔てて建てられている神社と寺において男と女がそれぞれ魔剣を手を伸ばした。
……くっ
寺の境内にある祠の前
全身血まみれの青年が、祠の中にに封印されている二振りの刀に手を伸ばす。
お前を手にすれば、アレを。沙織を殺したアレを滅ぼせるのだな……
左腕で抱きしめる愛しき女性の骸を一瞬見たあと、青年は右手を祠にむけて手を伸ばす……。
残された右目には、冷たい怒りの輝きが見え隠れしていた……
いいわ、それがあなたの答えなのね!
神社の本殿
祭器として奉られている女は両手で大剣を握りしめ叫ぶ。
その刀身には炎が宿り、その熱と魔力は、大剣をもつ女をも燃やさんと燃えあがる。
覚悟? そんなもの。ここに来る前からできているわ
痛みに顔を歪ませながらも、女は笑みを浮かべた。
位置にして10Kmの距離は離れているが、同一の龍脈上に封印されしそれらの魔剣は、互いの力により封印され、解かれることは不可能なはずであった。
……双方の魔剣の封印が同時に揺らぐような奇跡がおきなければ……
青年は刀の柄を強く握りしめた。
暗く冷たく彼の心を燃やす、愛する者を奪われた憎しみとともに
女は大剣の柄を強く握りしめた。
自分の命を全て捧げても足りないくらいの己の矜持(プライド)を込めて
二人は叫んだ。
覚醒(めざ)めろ!
……そして惨劇の幕が開かれた……