雨が一層強くなったのだろうか。

さっきまで顔に当たってた雨が、シャワーを浴びてる様な感じしかしない。

ここまで来ると、清々しいね。

早川実

羽島桜


さっきまであれほど騒いでいた二人も、今は黙りこんでいる。

俺の発言から、もう何分経っただろう。

俺も、暑くなりすぎた頭を少しでも冷やそうと思っていたが…ダメだ。

大野信一

俺さ、嬉しかったんだよ…。実と桜があんなに仲良くなってて。

大野信一

でもさ、聞く限りじゃただの芝居かよ

偽りの関係だったんだよな。
悲しく思えるよ。

大野信一

正直、凄いガッカリだ…

早川実

全部あんたが悪いのよ!

羽島桜

そうです! 信一くんが全部悪いんです!!

大野信一

…え?


えー、逆ギレですか。

早川実

私達は信一を奪い合って、あんなに喧嘩してたのに…本人がこんなんじゃ本末転倒じゃん

羽島桜

そうですよ。お弁当だって、信一くんに振り向いてもらうために、私は作りました! 信一くんに振り向いてもらうために、実さんはそれを邪魔しようとしました! ほら、全部信一くんを思ってやってるんですよ!


…何て言えばいいのか。

俺を奪い合っていた?

ドユコト?

あーなるほど。

やっと全部繋がった。

早川実

この際聞くけど、信一はどっちがいいの?

羽島桜

そうですよ!! この際はっきりさせて下さい!


どっちがいいか…?

そんなもの、聞かれる前から決まってるさ。

大野信一

俺はどっちかを選ばない。もちろん、選ぶ必要なんてないだろ? もう、二人とも友達なんだからさ!!


ふっ!

決まったぜ。

桜は、転校してきて初めて出来た友達だから大事にしたいんだよな。

実は、それを見てやいてるんだよな。

わかる! みんなわかるよ!!

…が、二人の目線が凄い冷たい。

なんだ…この視線のレーザービームは…。

早川実

サイテー

羽島桜

死ねばいいです

大野信一

…え?


ふと、俺の視界が一気に狭まった。

鼻の辺りに、熱いものが上がってくるのがすぐにわかる。

あ…実に顔面殴られたんだな…。

俺は、その場に倒れこんだ。

雨でグチョグチョになった土の上に。

少しずつ意識が薄れていくなか、二人の会話が少しではあるが耳に入ってきた。

早川実

で、桜はどうする? こんな奴だけど諦める?

羽島桜

そんなわかりきった事w

早川実

今回の件、本当に反省してる…。だから…

早川実

正々堂々、勝負しよう

羽島桜

はい! 勿論です!


反省…? 勝負…? なにそれ美味しいの…?

俺の意識は完全に吹っ飛んだ。

気づいた時には保健室で一人、ベッドに横になっていた。

一応運んで来てくれはしたんだろうけど…結局、一人かよ。

窓から差し込む太陽の光、その色を見る限り今はだいたい5時くらいか?

気づけば雨も上がり、太陽がこんにちはしている。

大野信一

はー、今後どうなるんだろうな~


重たい気持ちの中、俺はベッドから立ち上がり、保健室を後にした。



本当に誰も待っててくれなかった。

~翌日~

いつもと違う。

家を出ようとした時からいつもと違うのだ。

出たのは、いつもと同じ時間。

だが…

早川実

信一、おはよー。一緒に行こ~

羽島桜

信一くん、おはようございます! 私と一緒に行きましょう


俺を置いて先に帰った二人。

一体どうしたんだ?

早川実

桜~、邪魔しないでよ。信一は私と登校するんだから

羽島桜

いいえ。信一くんは私と登校するんです~

大野信一

みんなで登校すればいいだろ? 減るもんじゃないし

早川実

ダメ!

羽島桜

ダメです!

大野信一

えー


俺にはどちらかを選ぶしか選択肢は無いらしい…

それなら!

大野信一

お先に~

その日から、俺と彼女達の修羅場った日常が始まった。

第10話 俺が選択肢をおられたら?

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