鈴石茜

どうしたの? こんなところに唐突に呼び出して……

鈴石茜

アスナちゃん

伊納アスナ

…………

鈴石茜

伊納アスナ

いえ……その、ほかでもない生徒会長殿にちょっと大事な話をしたいと思っていまして

鈴石茜

大事な話?

伊納アスナ

ずばり、生徒会長殿はいつ佐島殿に告白をするおつもりで?

鈴石茜

何の話だ!!

伊納アスナ

ここのところ生徒会の活動って幽霊会員のアスナでさえ引っ張り出されるほどの忙しさじゃないですか

鈴石茜

うん、そりゃまあ今体育祭の前日だからね

伊納アスナ

そうするとどうしても目につくのですよ

鈴石茜

何が

伊納アスナ

生徒会長殿の、か、た、お、も、い

鈴石茜

うるさい!!

伊納アスナ

ちょっと手が触れるだけでも分かりやーすく反応するんですもん

伊納アスナ

一緒に準備をしていて気が気でなりません

鈴石茜

い…………

鈴石茜

今、そんなこと言っている場合じゃないでしょ!

鈴石茜

休憩終わったら開会式と閉会式のリハーサルやらなきゃだし、放送部との最後の話し合いもあるし……そしたらもう本番で……

伊納アスナ

まだ『生徒会長の挨拶』の原稿も頭に入っていないんですよね

鈴石茜

う……うん

伊納アスナ

佐島殿の前だと、緊張してしまって

鈴石茜

それは……

鈴石茜

ちょっと、違う

伊納アスナ

どう違うんですか?

鈴石茜

ほら、好きな人の前だといいとこ見せたくなるじゃん?

鈴石茜

で、頑張ろうとするでしょ?

鈴石茜

そうしていると、頭が真っ白になる

伊納アスナ

力みすぎってやつですか

鈴石茜

今までの会長挨拶は余裕だったのになあ

伊納アスナ

ほんと、今の生徒会長殿は不自然ですよ

鈴石茜

そ、そんなに?

伊納アスナ

アスナが真面目に仕事をするくらいに不自然です

鈴石茜

なん……だと!?

伊納アスナ

東海殿が急に饒舌になるくらいに不自然です

鈴石茜

そんなに!?

伊納アスナ

佐島殿が二次元グッズを捨ててしまうくらいに不自然です

鈴石茜

非常事態じゃないか!!

鈴石茜

でも……そんなこと言われても……ねえ

伊納アスナ

このままじゃみんなに心配されてしまいますよ

鈴石茜

んー……まあ挨拶の件については頑張るしかない

伊納アスナ

もしくは……

伊納アスナ

いっそ告って……

鈴石茜

それはない!!

伊納アスナ

えー

鈴石茜

こんな忙しい時にこ、告って……

鈴石茜

もも、もし振られたら私……立ち直れない、し

伊納アスナ

意気地がないですよ、生徒会長殿

伊納アスナ

そんなんじゃ会長失格です!!

鈴石茜

関係なくない?

伊納アスナ

どのみち、行事が終われば今度は受験を言い訳にして逃げるんじゃないですか?

鈴石茜

アスナちゃん……

鈴石茜

アスナちゃんってそんな頭冴える子だったっけ!?

伊納アスナ

否定しないんですね!!!

伊納アスナ

ていうか失礼です。アスナは数少ない眼鏡っ娘なんですよー。眼鏡っ娘は大抵頭がいい委員長タイプで……

鈴石茜

よーし、現実を見ようか!!

鈴石茜

でもね、逃げるとかそういうのの前に、ほんとに忙しいのは忙しくてさ

鈴石茜

だから、告白とかそういうのは、ね

佐島亮

あ、いた

鈴石茜

さ、佐島くん!?

佐島亮

探しましたよ……放送部の人が、開会式と閉会式の練習したいって

鈴石茜

あ、ごめんね。今行くね

佐島亮

まったく、二人でこそこそ何やってたんですか?

鈴石茜

あ……えっと

伊納アスナ

ちょっとした女子トークを

佐島亮

女子トークぅ?

佐島亮

そういうのはですね、美少女たちがキャッキャウフフと好きな男の子や昨日食べたスイーツなんかについて語る夢の空間のことなんですよ

佐島亮

この二人が女子トークとかありえないです!

鈴石茜

現実の女子にどんな妄想抱いているんだ!

鈴石茜

ん……現実……?

鈴石茜

私、いつからそんな『現実』『現実』って……

まあ、悪いことではないけど。

佐島亮

それともあれですか?
鈴石先輩は誰か好きな人でもいるんですか?

鈴石茜

な…………

伊納アスナ

…………

鈴石茜

さ…………

鈴石茜

佐島くんには、ぜんぜんっ関係ないことでしょ!

伊納アスナ

ツンデレ!!!

鈴石茜

ツンデレだー!!?

どんなキャラだー!!!

佐島亮

はいはい、男子は関係ないってことですか

佐島亮

いいから準備しましょうよ

鈴石茜

う、うん

よかった、何も気にしていない

鈴石茜

あれ? よかった、のか?

伊納アスナ

生徒会長殿、大丈夫ですか?

鈴石茜

え?

伊納アスナ

カンペ、地面に落ちてます

鈴石茜

あ……

伊納アスナ

…………

鈴石茜

…………

ダメだ

このままだと、アスナちゃんにも迷惑をかけちゃう

鈴石茜

へへ、ちょっとうっかり

伊納アスナ

鈴石茜

ほら、行くよ、アスナちゃん

伊納アスナ

え〜

伊納アスナ

なんという投げやりなごまかし方……

高屋敷梨華

生徒会の皆さん、早く集まってください

山吹真琴

王子様……早く、私と運命の共同作業を……

伊納アスナ

あ、アスナ急病を思い出しました

鈴石茜

急病を思い出すって何!?

伊納アスナ

頑張ってください、生徒会長殿

鈴石茜

あ、ちょっと!

山吹真琴

あぁ、王子様ぁ〜

佐島亮

鈴石先輩

鈴石茜

え? どうしたの、佐島くん

佐島亮

ちょっとお話があるんですけど

鈴石茜

佐島くんまで……一体何?

佐島亮

鈴石先輩……

佐島亮

気合い入ってますか!?

鈴石茜

え……

佐島亮

まったく、何に悩んでいるかは知りませんが、生徒会の仕事は仕事です

佐島亮

生徒会長が公私混同でおかしくなっていたら何もできません

鈴石茜

ま、まあね

佐島亮

受験と並行させて仕事を頑張るって言ったのは鈴石先輩じゃないですか

鈴石茜

まあ……

鈴石茜

正論だ

佐島亮

悩みがあるなら体育祭の後で個人的に聞きますから

佐島亮

今は僕たちを、引っ張っていってくれませんか?

鈴石茜

あ……

鈴石茜

分かった

鈴石茜

じゃあ終わったら、思いっきり打ち上げしよう!

佐島亮

了解です

不思議だな……佐島くんに言われただけで、気持ちが一瞬で切り替わった

佐島くんはいつだって、私を本気にさせる

鈴石茜

佐島くんは、やっぱりすごいなあ

だから、もっと好きになっちゃうんだけどね。

鈴石茜

よーし、頑張るか

そしてついに、体育祭が幕を開ける_

続く

佐島亮

…………

佐島亮

…………

好きな人…………?

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