さて小僧、あの時の借りを変えさせてもらうぞ

その身を焦がす炎をかき消し中から現れたのは、銀髪で左右の目の色が違う青年だった。

あの日、かぐや姫の運命を狂わせた、物語のレールから外れるきっかけとなった、冷たい鬼。

お、お前はあの時わらわにいきなり噛み付いてきた男!?

ふん。あの時のむかつく女か。だがしかし、お前は運が良い。今からあの小僧をヤルからお前のことは見逃してやる

青年はかぐや姫を一瞥し、ライトの方へ振り返った。

へえー。あんたみたいな雑魚が俺に勝てるとでも?

ほざけ、あの時は本調子ではなかったからな。幸い今宵は満月だ。俺様の力の本領を発揮できる!

満月ね。それは俺たち、月の民のホームだけどな!!

風のない、静かな夜だった。
一時の静寂が訪れる。

そして、トンッ、という軽い音とともに、両者の激突が始まった。

もらった!

激突の最中、ライトの剣が青年の右手を切り裂いた。

ち。いてーな

武器を持たないお前に、剣を操る俺に勝てる可能性はないさ

ふん、こんな傷俺様にとっては何でもない

気付けば、切られたはずの青年の右腕は、完全に再生していた。

再生能力か。厄介だな……

切られた腕は、すでに灰になっていた。

行くぞ

次に動きを見せたのは、青年の方だった。

剣を持つライトに向かって、恐れることなく素手で襲いかかる。

何度やっても同じことだ

向かい来る青年に向け、ライトは剣を振るう。青年はその切っ先を寸前で躱し、再びライトへ襲いかかる。

ちょこまかと、うざったい

言って、ライトは一度剣を鞘に納める。

はああああ……

ふん、諦めたか

その隙にと、青年は一直線を最短距離でライトの元へ詰め寄る。

だから。

零の型……月閃

その一太刀が、青年の左足を切り裂いた。

……

まだまだこんなものじゃないぜ

今度は剣を鞘に納めることなく、思い切り後ろに引いた状態で、腰を落とし勢いを溜める。

一の型……月花

片足を失ってもまだ飛び掛かって来る青年に向け、ライトは新たな一太刀を浴びせる。

今度は右足が吹き飛んだ。

そろそろ終わらせようか

それでも、青年の両足は既に回復していた。

ち、埒が明かないな

青年はそう吐き捨てる。

ライトは切っ先を青年に向ける形で構えを取った。

終の型……

ライトの構えに、青年が身構える。

そして、青年が技を放つ。

その、直前に。

青年よ、私の剣を使え――!!

そう言って、青年に向け隊長は自分の剣を投げた。

ふん。俺様を再生させた人間か。いいだろう。ありがたく借りてやる

刃の青い剣。

それを受け取り青年とライトは距離を詰める。

うおおお!!

はあああ!!

両者の剣が最大の力を込め激突する。

旋風が舞う。

二人を包み込むように、土煙が吹き荒れた。

風に巻き上げられそのまま地面に落ちたのは、一本の折れた剣。

そして、視界が晴れた先には……!?

まさかまたこのまま続くのじゃろうかー!?

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