伊集院エリカ

全く……、やれやれですわ。碧人、貴方は幽霊とかそういうもの、信じていらっしゃいます?

榛葉碧人

信じていない、と言えば嘘にはなるが、好んでいるわけではないな

伊集院エリカ

意外ですわね! 私はてっきり……。貴方にも怖いものがありましたのね

榛葉碧人

誤解だ。単純に然程興味が無いというだけで怖くはないぞ

伊集院エリカ

うふふ、いいんですわよ、私しかいないのですもの。正直に話して構いませんわ

榛葉碧人

あのなぁ……

伊集院エリカ

それはさておき……。音楽室でしたわね

榛葉碧人

ああ。夜中、音楽室のピアノの鍵盤に血痕が残っているという噂だ

伊集院エリカ

あら? でも、それなら翌日誰かが血痕を発見するのではなくて? 事件ですわよそんなの

榛葉碧人

ま、怪談なんてそんなものだ。どこかでおかしい部分が出るものだろう

伊集院エリカ

ふーん……。冷めますわね

榛葉碧人

なんだ、期待でもしていたのか?

伊集院エリカ

そりゃあ折角ですもの。調べて何もないなんてつまらないでしょう?

榛葉碧人

それもそうか

伊集院エリカ

……やっぱり血痕なんてないじゃない

榛葉碧人

入って一瞬でわかるというのも何も面白みがないな

伊集院エリカ

楽でいい、と思う事にしましょう。さ、委員長にメールを送りますわよ

伊集院エリカ

『音楽室は何もありませんでしたわ』っと……。

榛葉碧人

他の連中もこんな風なら、すぐに終わるだろうな

伊集院エリカ

折角ですし、誰かを脅かしに行ってもいいんじゃありませんこと?

榛葉碧人

……一応、委員長は真面目にやっているんだ、やめておかないか

伊集院エリカ

それもそうですわね。それじゃあ次に――

伊集院エリカ

……あら? 何か音がしまして?

榛葉碧人

確かに、軋むような音がしたな

榛葉碧人

何か違和感があるような……。何かがおかしいような気がするのは気のせいだろうか……

伊集院エリカ

ま、気のせいですわね。行きましょう、碧人

榛葉碧人

……! そういうことか

伊集院エリカ

碧人?

榛葉碧人

なぁ、伊集院。……ここのピアノはいつも蓋が閉められているよな

伊集院エリカ

そうですわね

榛葉碧人

俺達が入ってきたとき、最初からピアノは開いてたよな

伊集院エリカ

ええ。……誰かが閉め忘れたんでしょう?

榛葉碧人

いや、それは有りえない

伊集院エリカ

どうしてですの?

榛葉碧人

この教室を今日最後に使ったのは吹奏楽部で、最後に出た奴は確実にピアノが閉まっているのを確認してる

伊集院エリカ

何でそんなことが分かりますの?

榛葉碧人

その吹奏楽部が……俺だからだ。下校時刻を過ぎていたから、他の生徒はいないだろう。先生に追い立てられるようにしてここを出たしな

伊集院エリカ

貴方、吹奏楽部でしたの? ……じゃなくて

伊集院エリカ

だとしたら、誰か先生が開けたのでしょう。或いは急いでいたのですし、貴方の勘違いということもありますわ

榛葉碧人

……だが、恐らくは俺の考えは合っているよ

伊集院エリカ

え?

榛葉碧人

――先程から、俺はピアノの傍から離れられないんだ

榛葉碧人

……逃げろ、伊集院

伊集院エリカ

……?

伊集院エリカ

え…………

伊集院エリカ

い、一体、な、何が………

伊集院エリカ

こ、こんなの……嘘ですわ…………

――全ての七不思議が揃うまで、後一人

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