僕がこの屋敷に来て二日目の朝がきた

魔界の朝はもうちょっと
暗いものだと思ってたけど
今は人間界の朝と全く同じで
鳥達がさえずり容赦なく
僕を起こしにかかり

山から覗いてきた朝日が
容赦なく僕の目を突き刺した




.......なんで僕の寝る場所だけ
カーテンが無いんだろ





ネム

ふぁぁぁぁぁ.....
やっぱり朝早く起きるのは
苦手だなぁ.....

僕はもそもそと着替えた後
階段を下りて広間への
廊下を開ききってない目を
擦りながら向かった

ネム

ロウドウさーん?
おはようございまーす。

扉を開いて挨拶をすると
光が差し込んだ広間には
まだ誰もいなかった

ネム

あれ?おかしいなぁ....
まだ来てない

むしゅしゅしゅしゅー......

ネム

折角早起き頑張ったのに
.....まさかロウドウさんが
寝坊って事は~...ないッスもんねー

むぴゃっ....りゅどたん~~ぴゃぴゃぴゃ

とりあえず立ってても仕方がなかったので

丁度白いクッションと黒いクッションが
置いてあるふかふかのソファーが
目に入ったので僕は座る事にした

ネム

よいしょっと.....

悲鳴を上げた黒クッション

んぴゃああああああああああああああああああああ

ネム

うぇっっえぇぇええええええええええええええ??!!!

突然お尻に敷いた黒いクッションが
座った途端、車に引き潰されたような
悲鳴を上げた

悲鳴を上げた黒いクッション

ぷぷぷぷぷぎゃーーーー!!!!!
何するんらお前ぇぇぇ!!!!!
中身が出るトコだったぞーーーー!!!!!

ネム

クッションが
喋った!!!!!!

悲鳴を上げた黒いクッション

ムキャーーーー!!!!ポーを下敷きにした挙句クッションと間違えるなんて...
お前とんでもないな!!!

ネム

ご、ごめんっっ!...........
って言うかこの生き物何??!!

ポー

ポーをこの生き物呼ばわりするなのら!!
更にとんでもないな!このヒョロヒョロチビ!!!

ネム

めちゃくちゃ口悪っっこの生き物っ

ポー

またこの生き物って言ったーーー!!!!

しばらくパタパタと
小さな翼を羽ばたかせた
この生き.....ポーと言う
まるっこい何かと言い争っていると


銀トレーを脇に抱えた
ロウドウさんが奥の扉から
戻ってきた

ロウドウ

......楽しそうですね。
何を朝っぱらから遊んでるんですか

ネム

うわぁぁぁぁんロウドウさん~~~
どこ行ってたんスかぁぁぁぁ
この丸っこいの何とかして下さいッスーー!

ロウドウ

クロ様に寝起きのお茶を淹れに行ってたんです。

ネム、起きたらまずは厨房へ行って
クロ様にお茶を出すのが先ですよ

ネム

は、はいっ申し訳ないッス....!

..............

ネム

じゃなくって!
じゃなくってロウドウさん!!

ロウドウ

なんですかも~

ネム

あの物体一体何なんスかぁー!!!

ポー

まいう~まいう~!辛うま~ぷみゃーー

ロウドウ

..........。

ロウドウ

こらっっポー!何をしてるのですか!

ポー

ぴゃ?なーんらロウドウか

ロウドウ

「なーんら」じゃないですよ!
可愛くないっ!またクロ様の
お菓子を勝手に食べて!

ポー

ぶわぁ~はははははは!
ぺちゃんこおっぱいにくれてやる
お菓子なんて無いのらー

食べて平らなもんが大きくなる訳が
ないからポーが代わりに食べて上げてるのら

ネム

言い方っっっ

ポー

ぴゃぴゃぴゃぴゃ!成長期過ぎて
あれじゃこの先長い事生きてても
ぺちゃんこのままぴゃ~!

クロ

...........................。

ネム

あ"......

ポー

しかもあのぺちゃんこおっぱい
牛みたいにバクバク食べる癖に
体重とか気にしちゃって!

この間なんかケーキの食べ過ぎで
胸よりぽんぽんがこーんなに膨れて...
ぷひゅひゅひゅーーー

クロ

.....................................。

なんだか急に部屋が冷えたと思ったら
無言で佇むクロ様がいつの間にかそこに






いた。







正直ぼーっとしている印象から
魔王に強烈なビンタを喰らわせられても
そこまで恐くはないだろうと
僕は舐めてた.......舐めていた.......


黙って射殺すような視線を送る
クロ様は..........

ネム

うし....うし...うしろ....

ポー

ぴゃ?

ぎゃぁぁぁああああああああああああああああああ

中身っロウドウさん中身がぁぁぁぁっっっ

クロ様っ!カーペットがっ!!

そっち!!!!????

魔王リュド

おはよ~さんなのだー!

ロウドウ

.........おはよーさんなのだー
.....じゃないですよこの、馬鹿。
脳味噌賞味期限切れ馬鹿

ネム

......よく身体もつッスね.....
僕ある意味尊敬するッス.......

魔王リュド

えぇーーーーーーー!!!?
何で俺来た途端に責められて
同情されてるのだ!!!?

クロ

ムフーーー

魔王リュド

あっっクロ!おは......

ポー

うびゃあああああああああああああ
リュドたぁぁぁぁぁぁぁああああん

魔王リュド

うぎゃああああああああああああ超グロいのだぁぁああああああああああああ

さっきの惨劇によって飛び散った赤い物と
思い出したくない内容物で汚れたカーペットを
ひとしきり3人で落としまくったが
まっっったく落ちず


魔王様は全然悪くないのに
ものっすごい怒られた。


ほぼクロ様がぶちまけたのに
あの生き物の躾がなってないと
とても偉いのに正座させられて
ものっすごい怒られた。



クロ様はすっきりしたのか
滴る液体が付いた鈍器の様なモノを
持ってそのまま自室へ戻っていき







その光景を初めて見た僕は
「あっこの人だけは逆らわないでおこう」、と
深く心に刻み込んだッス

魔王リュド

あーあ....俺、なにもしてないのに......

ロウドウ

カーペット....カーペット......

ネム

魔王様......不憫ッス

魔王リュド

朝から超とばっちり受けたけど
ネムに紹介しとくのだ...

こいつはポー。
"俺に一番近い"やつなのだ

ポー

ブフッ大いに崇めて拝んで
称えていいのらよ人間

ネム

うわっ....イラッとしたッス。

一番近いって
ペットじゃないんスか??

魔王リュド

うーん....そういう"近い"じゃないのだ。何というかほぼ"俺自身みたいなやつ"だな

よく解らないけど。

ネム

魔王もよく解ってないじゃないッスか

ロウドウ

ポーは私がここに就く前の前、魔王が生まれた頃からずーっといるんですよ

ネム

へ~....なんだか兄弟みたいッスねぇ

魔王リュド

確かに兄弟みたいだな!でもそれ以上の
大事な友達なのだ

ポー

むふっリュドたんったらトモダチ
なんて水臭いのら~
そこはあのぺちゃんこおっぱいより
大事な大事な親友って言って欲しいのら

魔王リュド

クロはまた別格で大事だから

ポー

ムギーーーーーーーーー!!!!!!
リュドたんの一番ポジションを奪いやがってーーーあの断崖絶壁貧乳魔女めぇぇーーーーー!!!!!

ポー

魔法が使えないくせに馬鹿力でおしとやかの「お」の字もないッ!!いつかボッコボコのペッコペコにっっ....

ネム

!!!!

魔王リュド

!!!!?

ロウドウ

.....もう敷物は諦めました.....。

ポー

ぴゃー.....

クロ

.......だんがいぜっぺき....。

クロ

.......馬鹿力........

ポー

................てへっ☆

ゴスッ

クロ様が両手でスカートの端を振ると
どうやって入れてたんだ....いや
本来ならスカートにそんなものが
あるはずが無い

鈍器が

鈍い音を立てて出てきた。

クロ

....今日の朝ごはんは....
私が作る........

ポー

ぴぎゃあああああああああリュドたん助けてぇぇぇええええええええええ

魔王リュド

ぎゃああああああああああ来るななのだぁぁぁぁぁあああ
俺まで巻き添え喰らうぅぅぅううう

ネム

あんたさっき大事って言ってたくせにーーーー!!!!

魔王リュド

俺まだ死にたくないもんっっっ!!!!

ポー

リュドたんのうそつき~~~~~~!!!

その日は風もなく穏やかで
洗濯物日和な温かい日だった


庭に干されたシーツは気持ちよさそうに
日光を浴び、その隣には








その隣には真っ赤に染まった
カーペットが二枚






元からその色だったかのように
干されていた

ロウドウ

........やはり落ちない.....
買い直しですね........

ネム

はぅあぁああぁぁぁあああ
恐かった....恐かったぁぁぁぁあああ



......朝食が黒くなくて
ほんと良かったッス........

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