「時は金なり」とはよく言ったものだが、実際眠気の前には何もかなわない。

いくら前日に「よし、明日は早く起きよう」と思っても、起きたら余裕で時間が過ぎている。

仮に、しっかりその時間に目が覚めたとしても「んー、もう少し寝れる~」と、眠気に負けるものだ。

延彦には「早寝早起きしっかりしろよ」とはよく言われるが、実際にやろうと思って出来るものではない。

少し、ネガティブな思考から離れよう。

俺から言わせてもらうと「果報は寝て待て」という素晴らしいことわざがあるではないか!

みなさん。何事も慌てないで気長にまとうね!

という訳で、今日も時間ギリギリまで寝てました。

大野信一

ぜーぜーぜー

伊村延彦

お前、今日は随分と凄いパフォーマンスしてたな。俺さ、教室にスライディングして入ってくる奴初めて見たわ

大野信一

だ、だろー

美濃麻実

ゲホン! ゲホン!! 今は何をする時間か言ってみろ! 伊村!

伊村延彦

げ! 何で俺なんすか!

美濃麻実

お前は喋る理由がないだろ!

伊村延彦

そ、そーっすけど…えっと、まみたんの話を聞く時間…って事でいいんですよね?

美濃麻実

その通りだ。お前達はそんな時間にもかかわらず、話していたんだぞ? どうなるか、わかるよな?

伊村延彦

責任とって、先生と結婚します

大野信一

バ、バカ! 何でこのタイミングでボケるんだ! 罪がよけい重くなるだろ!

美濃麻実

しょ、しょーだ! いいみゅら! お前ら後ろに立っとけ!!

伊村延彦

はーい

大野信一

はーい

罪重き俺達二人は、廊下では無く教室の後ろに立たされた。

てか、ごめんな延彦。

俺のせいでお前まで怒られて。

でもな、忠告で済むはずだった物を立たされるところまでもっていったのは、お前といって差し支えないからな。

でも、走った後すぐに据えあるるより立ってた方がいいのは確かだから、今日の所はいいとしよう。

美濃麻実

よし、それじゃ~気を切り換えてホームルーム
をはじめるぞ

それから、先生は超簡潔に内容をまとめて話した。

正直、この人のまとめる能力凄いと思うよ。

これで、生徒の無駄な時間を削ってくれてるのか~。ありがとうございます。

美濃麻実

…以上だ。質問はあるか? ないな。 よし、じゃあ解散

…うん、自分の無駄な時間を削ってるだけのようだ。

美濃麻実

よし! 伊村達も座っていいぞ。あと、大野。 次、あんなギリギリに来たら切り下げアウトにするからな。覚悟しとけ

そんな…理不尽な…。

・・・

俺の睡眠時間を先生は制限すると言うのか!

寝る子は育つんだぞ!

伊村延彦

信一、諦めろ。お前の言いたい事は全部わかる。でも、相手が悪かったな。まみたんの後ろには、委員君をはじめとするクラスの男子がいるんだぞ。‥俺も含めてな

大野信一

くそ!

俺は唇を噛ましめ、人の靴を舐めるような思いでその場を後にした。

実際そこまで思う必要ないだろ。…と思ってる奴も中にはいるかもしれない。

だが、俺にしてみれば死活問題だ!

睡眠は俺のエネルギーなんだ!

絶対に負けない!

…何に? 先生に?

今になって冷静になったけど、たかが少し早く登校すればすむ話じゃん。

何で俺ってキレてるの?

まあいいか。

羽島桜

し、信一くん!

大野信一

ん? 桜か。どした?

桜はどこか緊張してるのか、裏返りかけた声で俺の後ろから声をかけてきた。

何でそんなに顔が赤いんだ?

羽島桜

そ、その…

大野信一

どうしたんだよ?

羽島桜

う~…

桜は黙りこんでしまった。

俺も俺で動く事ができず、凄く気まずい感じになっている。

だが、すぐにその雰囲気も壊れた。

早川実

桜~、調子はどう?

羽島桜

み、実さん!

大野信一

あれ? 実どうしたんだ?

早川実

あー、ちょっと桜と話に来たんだ~

・・・・・・・あれ?

いつから仲良くなったんだ?

早川実

って事で、ちょっと桜借りるねー

大野信一

お、おう

そのまま、桜を教室の外に連れていってしまった。

~3分後~

早川実

ただいま~。じゃーね、桜

羽島桜

はい、さようなら

一体何を話してたんだ!?

めっちゃ気になる。

羽島桜

あの、信一くん!

大野信一

ん?

羽島桜

今日のお昼、一緒に食べて下さい!

大野信一

あ、いいよ

羽島桜

え! 本当ですか!?

大野信一

うん、もちろん

羽島桜

ありがとうございます!

大野信一

いや、どこにお礼を言う所があるんだよ

羽島桜

別にいいんです。私が言いたいだけですから

大野信一

へー、変わってるな

羽島桜

変わってますよーだ

という訳で、俺は桜と昼飯を食べる事になった。

男子高校生なら一度はしてみたい夢の状況が…。

しかも桜と…。

凄いワクワクしてきたー!!

と言っても、俺の分を用意したとは言われてないんだけどね。

まあ、可能性はゼロじゃない。

少しでもあるなら、それにかけるか!

果たして、ラブの神様が舞い降りるか! コメの神様が舞い降りるか!

どっちだ!!

~昼休み~

羽島桜

…でですね! 日本とはだいぶ違って凄く困りました!

大野信一

へ、へーそうなんだ

はい。僕の分のお弁当が見当たりませんね。

羽島桜

あの…信一くん? 私と一緒にお昼を食べるのはつまらないですか?

大野信一

そ、そんな事はないよ!

羽島桜

そうですか…

桜はどこか不安げに、卵焼きを一つ口の中に運んだ。

卵焼きを舌の上に乗せ、卵焼きを崩さない様に舌で卵焼きを包み、口の中に運ばれる。

・・・

その仕草が色っぽいと思うのは俺だけだろうか?

羽島桜

うぐぐ…

桜は泣きそうな目をして、噎始めた。

大野信一

だ、大丈夫?

羽島桜

は、はい。大丈夫です

落ち着いたのか咳を止め、持ってきていたお茶を流し込んで、一つ大きな溜め息をついた。

大野信一

そんなに丸ごと食べるからだぞ

羽島桜

はい…ごめんなさい…

大野信一

バカだな~

羽島桜

・・・

それにしても、卵焼きを口に入れるだけで噎せるなんて…なんでだ?

羽島桜

あの…卵焼き…信一くんも食べてくれません?

大野信一

いや、悪いって。おかず減るじゃん

羽島桜

いえ、全然かまいません!

桜は強引に卵焼きを箸でつまみ、「あーん」と俺の口の前まで箸を動かし始めた…「あーん」!?

こ、これはまさか!

あの、「あーん」か!

しかも箸は桜ので、間接キスになる!

よし、 俺も男だ。

食べてやる!

でも、俺はチキンだから目を閉じて食べさせて頂こう。

嗚呼。

女の子から食べ物をもらうとか、何年ぶりだろう。

ん? 「実からチョコをもらったろ」だって?

あれはノーカウントでしょ。

しかも、お菓子じゃん。

俺のなかであれはただの残飯処理でしたないからな~。

おっと、そろそろ来るかな?

大野信一

あー…ん?

あれ、いつまで経ってもお口に卵焼きが届かないのだが?

そっと目を開けると、俺の前には桜はいなかった。

大野信一

あれ?

一瞬テンパりかけたが、すぐに状況を理解できた。

それで悪いんだけど…お願いできる?

羽島桜

はい。わかりました

先生に呼ばれて行っただけのようだ。

羽島桜

ごめんなさい。少し用事ができてしまったので、席を外しますね。…残りのお弁当…食べてもらってもいいですか?

大野信一

喜んで!!

俺は即答した。

羽島桜

それじゃ! お願いします

桜は駆け足で、教室を出ていってしまった。

大野信一

よーし! 何から食べよう

残っているものは、

卵焼きが一つに、ウィンナー、野菜とご飯が少々。

女の子のお弁当ってやっぱり小さいな。

まあ、まずはさっき食べれなかった卵焼きに手をつけるのが妥当だろう。

大野信一

それじゃ、いっただっきまー…

豪快食乃

ちょっとまった!!

大野信一

ご、豪快食乃!!

豪快食乃

お前、まさかその箸で食べるつもりじゃないだろうな?

大野信一

ま、まさかな~

豪快食乃

そうか、それは安心した。てっきり、口の前にあるからそのまま運ぶものだとばかり思ったぜ

大野信一

っく!

豪快食乃

俺の口止めは何か分かってるよな?

大野信一

この飯の半分か?

豪快食乃

いいや、全部だ

大野信一

な、なんだって! 俺がもらった弁当なのに!

豪快食乃

嫌ならいいんだぜ? クラス中にこの事を少しもって広めるだけだからな

大野信一

く、くそ!…わかった

豪快食乃

わかればいい

大野信一

ただ、この卵焼きだけは見逃してくれ!

豪快食乃

うむ、いいだろう。俺もそこまで鬼じゃねー。そいつだけはお前にやらー

大野信一

ありがとう

よし!

卵焼きだけは守れたぞ!

大野信一

いただきまーす

俺は卵焼きにかぶりついた。

待つことなんてできない。

とにかくほしかった。

大野信一

ゲホッ!!

なにコレ! しょっぱい!

この卵焼き、絶対に塩入れ過ぎでしょ!!

豪快食乃

おい、俺の所に飛ばすなよ! 汚ねーな!

豪快は、俺が噎せたのを助けることもなく、ただただ弁当の中身を必死に守っていた。

豪快食乃

ふー、汚かったな。よし、俺もいただくか。

豪快が口の中にご飯を運んだ瞬間、俺の顔にそのご飯が飛んできた。

豪快食乃

ゲホン! ゲホン!

大野信一

きたねーよ。 何で飛ばすんだよ!

豪快食乃

塩が! この飯しょっぱすぎだ!

ご飯にまで塩を振っているのか。

よほど塩が好きなんだな。

花形海松良

どうしたの? 二人とも?

そこに、外から見ていた花形君がやって来た。

てか、クラスにいる人ほとんどがこっちを見てるじゃん。

豪快食乃

こいつの飯がしょっぱすぎるんだよ。もういらね~!!

豪快は吐いた飯をそのままにして、逃げてしまった。

なんだよアイツ。

大野信一

とりあえず、あいつが吐いたものを片付けるか

花形海松良

僕も手伝うよ

花形君優しいな~。すごい嬉しい。

花形海松良

残り物どうするの?

大野信一

食べるしかないだろうね

でも、全部しょっぱいだろうな。

花形海松良

わかった。僕も食べるの手伝うよ

大野信一

いや、花形君にそんな仕事任せるわけには‥

花形海松良

あん

言ってる側から食べちゃった。

花形海松良

うん、しょっぱいけど僕好みで美味しいよ

大野信一

え、しょっぱいけど大丈夫?

花形海松良

まあ、普通はそう思うのかもしれないけどね。僕の家の味付けって少ししょっぱいんだよね

大野信一

じゃあ‥!

花形海松良

僕が食べるよ

大野信一

ありがとう!!

と言うことで花形君に桜のお弁当を食べてもらい、しょっぱくないと思われるものを俺が食べた。

しょっぱかったけど。

羽島桜

ただいま~

仕事が終わったのか、桜が帰って来た。

羽島桜

お弁当どうでした?

大野信一

う、うん。美味しかったよ

花形海松良

僕も美味しそうだったからもらっちゃった。‥ダメだった?

羽島桜

い、いえ。でも、大丈夫でしたか? 信一くんの舌に合うようね、塩をたっぷりかけたんですが‥

・・・・・へ?

ナニソレハツミミ。

何で俺でも知らなかった俺の事を知ってるの?

大野信一

それってどこ情報?

羽島桜

はい。実さんです

うわ!
やられた。

あいつ、俺の事が嫌いだからって桜を使ってまでやってくるか!

ひで~。

大野信一

桜。俺あんまりしょっぱいの得意じゃないんだ

羽島桜

‥‥え?

大野信一

実に嘘の情報を流されたみたいだな

羽島桜

嘘‥情報‥

大野信一

あ、でもご飯事態はすげー美味しかったぞ!

羽島桜

騙された‥

大野信一

桜?

羽島桜

やられ‥た‥

大野信一

桜!

羽島桜

‥‥信一くん

大野信一

ん?

羽島桜

今日の放課後、校舎裏まで来てください

その言葉を言った桜の目は、どこか遠くを見ているよいうな気がした。

俺‥嫌な予感しかしないんだけど‥‥‥。

昼休みが終わろうとしている時間に、一通のメールが入った。

早川実

桜から?

放課後、校舎裏に来てください

あっれ~、もう告白するの~?

進行が早い気がするな~。

・・・

やらせない。

絶対に告白なんてさせないから。

桜と信一がくっつくエンドなんて存在させないからね。

そんな事になったら‥‥。

五時間目の予冷のチャイムが鳴り、次の授業の準備を始めるのだった。

第8話 手作り弁当だけど、美味しければ関係ないよねっ!

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