「時は金なり」とはよく言ったものだが、実際眠気の前には何もかなわない。
「時は金なり」とはよく言ったものだが、実際眠気の前には何もかなわない。
いくら前日に「よし、明日は早く起きよう」と思っても、起きたら余裕で時間が過ぎている。
仮に、しっかりその時間に目が覚めたとしても「んー、もう少し寝れる~」と、眠気に負けるものだ。
延彦には「早寝早起きしっかりしろよ」とはよく言われるが、実際にやろうと思って出来るものではない。
少し、ネガティブな思考から離れよう。
俺から言わせてもらうと「果報は寝て待て」という素晴らしいことわざがあるではないか!
みなさん。何事も慌てないで気長にまとうね!
という訳で、今日も時間ギリギリまで寝てました。
ぜーぜーぜー
お前、今日は随分と凄いパフォーマンスしてたな。俺さ、教室にスライディングして入ってくる奴初めて見たわ
だ、だろー
ゲホン! ゲホン!! 今は何をする時間か言ってみろ! 伊村!
げ! 何で俺なんすか!
お前は喋る理由がないだろ!
そ、そーっすけど…えっと、まみたんの話を聞く時間…って事でいいんですよね?
その通りだ。お前達はそんな時間にもかかわらず、話していたんだぞ? どうなるか、わかるよな?
責任とって、先生と結婚します
バ、バカ! 何でこのタイミングでボケるんだ! 罪がよけい重くなるだろ!
しょ、しょーだ! いいみゅら! お前ら後ろに立っとけ!!
はーい
はーい
罪重き俺達二人は、廊下では無く教室の後ろに立たされた。
てか、ごめんな延彦。
俺のせいでお前まで怒られて。
でもな、忠告で済むはずだった物を立たされるところまでもっていったのは、お前といって差し支えないからな。
でも、走った後すぐに据えあるるより立ってた方がいいのは確かだから、今日の所はいいとしよう。
よし、それじゃ~気を切り換えてホームルーム
をはじめるぞ
それから、先生は超簡潔に内容をまとめて話した。
正直、この人のまとめる能力凄いと思うよ。
これで、生徒の無駄な時間を削ってくれてるのか~。ありがとうございます。
…以上だ。質問はあるか? ないな。 よし、じゃあ解散
…うん、自分の無駄な時間を削ってるだけのようだ。
よし! 伊村達も座っていいぞ。あと、大野。 次、あんなギリギリに来たら切り下げアウトにするからな。覚悟しとけ
そんな…理不尽な…。
・・・
俺の睡眠時間を先生は制限すると言うのか!
寝る子は育つんだぞ!
信一、諦めろ。お前の言いたい事は全部わかる。でも、相手が悪かったな。まみたんの後ろには、委員君をはじめとするクラスの男子がいるんだぞ。‥俺も含めてな
くそ!
俺は唇を噛ましめ、人の靴を舐めるような思いでその場を後にした。
実際そこまで思う必要ないだろ。…と思ってる奴も中にはいるかもしれない。
だが、俺にしてみれば死活問題だ!
睡眠は俺のエネルギーなんだ!
絶対に負けない!
…何に? 先生に?
今になって冷静になったけど、たかが少し早く登校すればすむ話じゃん。
何で俺ってキレてるの?
…
まあいいか。
し、信一くん!
ん? 桜か。どした?
桜はどこか緊張してるのか、裏返りかけた声で俺の後ろから声をかけてきた。
何でそんなに顔が赤いんだ?
そ、その…
どうしたんだよ?
う~…
桜は黙りこんでしまった。
俺も俺で動く事ができず、凄く気まずい感じになっている。
だが、すぐにその雰囲気も壊れた。
桜~、調子はどう?
み、実さん!
あれ? 実どうしたんだ?
あー、ちょっと桜と話に来たんだ~
・・・・・・・あれ?
いつから仲良くなったんだ?
って事で、ちょっと桜借りるねー
お、おう
そのまま、桜を教室の外に連れていってしまった。
~3分後~
ただいま~。じゃーね、桜
はい、さようなら
一体何を話してたんだ!?
めっちゃ気になる。
あの、信一くん!
ん?
今日のお昼、一緒に食べて下さい!
あ、いいよ
え! 本当ですか!?
うん、もちろん
ありがとうございます!
いや、どこにお礼を言う所があるんだよ
別にいいんです。私が言いたいだけですから
へー、変わってるな
変わってますよーだ
という訳で、俺は桜と昼飯を食べる事になった。
男子高校生なら一度はしてみたい夢の状況が…。
しかも桜と…。
凄いワクワクしてきたー!!
と言っても、俺の分を用意したとは言われてないんだけどね。
まあ、可能性はゼロじゃない。
少しでもあるなら、それにかけるか!
果たして、ラブの神様が舞い降りるか! コメの神様が舞い降りるか!
どっちだ!!
~昼休み~
…でですね! 日本とはだいぶ違って凄く困りました!
へ、へーそうなんだ
はい。僕の分のお弁当が見当たりませんね。
あの…信一くん? 私と一緒にお昼を食べるのはつまらないですか?
そ、そんな事はないよ!
そうですか…
桜はどこか不安げに、卵焼きを一つ口の中に運んだ。
卵焼きを舌の上に乗せ、卵焼きを崩さない様に舌で卵焼きを包み、口の中に運ばれる。
・・・
その仕草が色っぽいと思うのは俺だけだろうか?
うぐぐ…
桜は泣きそうな目をして、噎始めた。
だ、大丈夫?
は、はい。大丈夫です
落ち着いたのか咳を止め、持ってきていたお茶を流し込んで、一つ大きな溜め息をついた。
そんなに丸ごと食べるからだぞ
はい…ごめんなさい…
バカだな~
・・・
それにしても、卵焼きを口に入れるだけで噎せるなんて…なんでだ?
あの…卵焼き…信一くんも食べてくれません?
いや、悪いって。おかず減るじゃん
いえ、全然かまいません!
桜は強引に卵焼きを箸でつまみ、「あーん」と俺の口の前まで箸を動かし始めた…「あーん」!?
こ、これはまさか!
あの、「あーん」か!
しかも箸は桜ので、間接キスになる!
よし、 俺も男だ。
食べてやる!
でも、俺はチキンだから目を閉じて食べさせて頂こう。
嗚呼。
女の子から食べ物をもらうとか、何年ぶりだろう。
ん? 「実からチョコをもらったろ」だって?
あれはノーカウントでしょ。
しかも、お菓子じゃん。
俺のなかであれはただの残飯処理でしたないからな~。
おっと、そろそろ来るかな?
あー…ん?
あれ、いつまで経ってもお口に卵焼きが届かないのだが?
そっと目を開けると、俺の前には桜はいなかった。
あれ?
一瞬テンパりかけたが、すぐに状況を理解できた。
それで悪いんだけど…お願いできる?
はい。わかりました
先生に呼ばれて行っただけのようだ。
ごめんなさい。少し用事ができてしまったので、席を外しますね。…残りのお弁当…食べてもらってもいいですか?
喜んで!!
俺は即答した。
それじゃ! お願いします
桜は駆け足で、教室を出ていってしまった。
よーし! 何から食べよう
残っているものは、
卵焼きが一つに、ウィンナー、野菜とご飯が少々。
女の子のお弁当ってやっぱり小さいな。
まあ、まずはさっき食べれなかった卵焼きに手をつけるのが妥当だろう。
それじゃ、いっただっきまー…
ちょっとまった!!
ご、豪快食乃!!
お前、まさかその箸で食べるつもりじゃないだろうな?
ま、まさかな~
そうか、それは安心した。てっきり、口の前にあるからそのまま運ぶものだとばかり思ったぜ
っく!
俺の口止めは何か分かってるよな?
この飯の半分か?
いいや、全部だ
な、なんだって! 俺がもらった弁当なのに!
嫌ならいいんだぜ? クラス中にこの事を少しもって広めるだけだからな
く、くそ!…わかった
わかればいい
ただ、この卵焼きだけは見逃してくれ!
うむ、いいだろう。俺もそこまで鬼じゃねー。そいつだけはお前にやらー
ありがとう
よし!
卵焼きだけは守れたぞ!
いただきまーす
俺は卵焼きにかぶりついた。
待つことなんてできない。
とにかくほしかった。
ゲホッ!!
なにコレ! しょっぱい!
この卵焼き、絶対に塩入れ過ぎでしょ!!
おい、俺の所に飛ばすなよ! 汚ねーな!
豪快は、俺が噎せたのを助けることもなく、ただただ弁当の中身を必死に守っていた。
ふー、汚かったな。よし、俺もいただくか。
豪快が口の中にご飯を運んだ瞬間、俺の顔にそのご飯が飛んできた。
ゲホン! ゲホン!
きたねーよ。 何で飛ばすんだよ!
塩が! この飯しょっぱすぎだ!
ご飯にまで塩を振っているのか。
よほど塩が好きなんだな。
どうしたの? 二人とも?
そこに、外から見ていた花形君がやって来た。
てか、クラスにいる人ほとんどがこっちを見てるじゃん。
こいつの飯がしょっぱすぎるんだよ。もういらね~!!
豪快は吐いた飯をそのままにして、逃げてしまった。
なんだよアイツ。
とりあえず、あいつが吐いたものを片付けるか
僕も手伝うよ
花形君優しいな~。すごい嬉しい。
残り物どうするの?
食べるしかないだろうね
でも、全部しょっぱいだろうな。
わかった。僕も食べるの手伝うよ
いや、花形君にそんな仕事任せるわけには‥
あん
言ってる側から食べちゃった。
うん、しょっぱいけど僕好みで美味しいよ
え、しょっぱいけど大丈夫?
まあ、普通はそう思うのかもしれないけどね。僕の家の味付けって少ししょっぱいんだよね
じゃあ‥!
僕が食べるよ
ありがとう!!
と言うことで花形君に桜のお弁当を食べてもらい、しょっぱくないと思われるものを俺が食べた。
しょっぱかったけど。
ただいま~
仕事が終わったのか、桜が帰って来た。
お弁当どうでした?
う、うん。美味しかったよ
僕も美味しそうだったからもらっちゃった。‥ダメだった?
い、いえ。でも、大丈夫でしたか? 信一くんの舌に合うようね、塩をたっぷりかけたんですが‥
・・・・・へ?
ナニソレハツミミ。
何で俺でも知らなかった俺の事を知ってるの?
それってどこ情報?
はい。実さんです
うわ!
やられた。
あいつ、俺の事が嫌いだからって桜を使ってまでやってくるか!
ひで~。
桜。俺あんまりしょっぱいの得意じゃないんだ
‥‥え?
実に嘘の情報を流されたみたいだな
嘘‥情報‥
あ、でもご飯事態はすげー美味しかったぞ!
騙された‥
桜?
やられ‥た‥
桜!
‥‥信一くん
ん?
今日の放課後、校舎裏まで来てください
その言葉を言った桜の目は、どこか遠くを見ているよいうな気がした。
俺‥嫌な予感しかしないんだけど‥‥‥。
昼休みが終わろうとしている時間に、一通のメールが入った。
桜から?
放課後、校舎裏に来てください
あっれ~、もう告白するの~?
進行が早い気がするな~。
・・・
やらせない。
絶対に告白なんてさせないから。
桜と信一がくっつくエンドなんて存在させないからね。
そんな事になったら‥‥。
五時間目の予冷のチャイムが鳴り、次の授業の準備を始めるのだった。