サラの入学初日、二人は馬車に揺られて魔法学校へ向かっている。
お兄さま
ん?
支度が整いましたわ
おう。俺も行くわ
今日はスミスが送ってくれるっていってます
お、マジで? ラッキー
サラの入学初日、二人は馬車に揺られて魔法学校へ向かっている。
お兄さまの処分は結局どうなったのです?
ああ、リリーの件を解決したからおまけで合格だってよ
なんだよおまけって、と窓の外へ目をやりながら毒づく兄はしかし、まんざらでもないようだった。
おめでとうございます! お兄さま
と、祝辞を口にしたものの、妹は怪訝な顔つきになって兄に訊ねる。
? じゃあお兄さまは何をしに行くのです?
卒業許可が出た者が入学式にいくのはどう考えてもおかしい。
なんでだと思う?
思わせぶりな兄の態度にサラはピンと来た答えを口に出す。
保護者、ですか?
んなわけねーだろ
ひゃあっ
でこピンをされて悲鳴をあげている妹に蔑みの視線まで投げてよこす兄。
痛いし、ヒドイですわ
おでこをさするサラの頭にぽんと大きな手がさすってくれる。
(笑)。あとでわかるよ
……
…では入学生諸君、これから有意義な学校生活を送ってくれたまえ
ヴォルフガング魔法学校長の挨拶が終わると、壇上に数人の男女が登壇した。その中に、サラの見知った顔があった。
さて、ここにいるのはこれから君たちと共に過ごす先生たちだ。魔法だけでなく、人生において大切なことを教えてくれるだろう
壇上の先生方が簡単な挨拶をしていく。そしてサラがよく知る人物の順番になった。
今年から魔法学校教師として赴任した、レイウェル・ジェラルディーンといいます。僕は去年までこの学校の生徒でした。だから、みんなの力になれることも多いかと思います。先生としては半人前ですが、精一杯頑張りますのでこれからよろしくお願いします
周りがざわつくのも無理はなかった。ついこの前までこの国の王子が魔法学校に在籍し、王国を危機から救って卒業したかと思ったら、今度はその妹である王女が入学することになったのだ。それだけでも大ニュースなのにさらに卒業した王子が魔法学校に教師として今まさに登壇している。
どういうこと?
当事者が戸惑うほどのことなのである。
帰りの馬車の中で。
本当に、どういうことですの?
きちきちの襟元をゆるめながら、レイウェルは言う。
ヴォルフガングがな、やってみないかって
ま、おまえの監視も兼ねているんだろ、と
申し訳ありません
え? なんで?
お兄さまはこれから執務もこなさなければならないのに
そんなのスミスがやるだろ
でも…
それに、オモシロそうだからな
お兄さま
サラはリリーに兄が言った言葉を思い出していた。
俺の望みは、みんながおもしろおかしく生きていられる世の中が、ずっと続けばいいってことです
それを聞いたリリーは、ガラスの靴と共に消えていった。次に現れるのはいつになるのか、それは誰にも分らない。
お兄さま
ん?
城に帰ったら、魔法教えてくださいね
……おう!
夕日が山の中に沈んでいく。
Fin