人間界と魔界を繋ぐゲートの中心部から山側に向かい
そこから徒歩で片道約2時間かけた所にその屋敷はあった。
人間界と魔界を繋ぐゲートの中心部から山側に向かい
そこから徒歩で片道約2時間かけた所にその屋敷はあった。
はー.....スッゲー...
ここがそうなのかな
迎えもなし、徒歩以外の交通手段もなし、で
ほんとふざけんなっっと辿り着く途中まで文句を
言っていた僕はしばらくぼーっとしながら立っていると...
....どちら様ですか?
うわっっ急に背後から!!???
この屋敷に何か御用でも?
あ、いや、僕はー
ああー
申し訳ないですけど
受信料なら人間界と魔界の局はまた
別なので契約なら結構ですよ。
見ればまる分かりな程
全っっっ然違うッス!!!!!
はぁ、なら新聞は要りませんよ
うちの魔王新聞とか読み物が
あると食事中でも読むもんですから
バッサバッサうっさいんですよね。
新聞屋でもなっっっっ......
......
...........いまこの人
...........もしかして
魔王執事の.......ロウドウ、サン?
?もしかしても、もしかしなくても馬鹿
.....魔王の生活から仕事までサポート
させて頂いてる執事長ロウドウとは私の事ですが?
今自分の雇い主馬鹿って
言いかけた!!!!
......。
あなたは.....今日から執事見習いとして新しく屋敷に入るネムですね?
今の沈黙はなんだし。
ッス!魔王様直属の執事試験に見事合格して本日から働かせてもらうネムッス!
なんだ~知ってたんじゃないッスか~!
なんか色々おかしいやり取りはあったけど
そうッスよね、執事長なら今日新人が来るって
ちゃんと把握してるッスもんね!
きっとロウドウさんなりの歓迎の.......
...おかしい....もうちょっと大人な方と伺ってたのに......全然違うじゃないですか
..........よろしい。では屋敷を案内しましょう
かなり曖昧だった!!!!!!!
まぁ初日なので簡単に場所の説明だけ
していきます。細かい所はまた後日
回りましょう
は、はいッス!
よろしい。まずは1階は広間と客間がメインですね。滅多に泊まられるお客様は
いませんがここのベッドメイキング
も欠かさず済ませておくように
押忍!
こちらは魔王の仕事場......いや
元々応接間だったんですけどね
.....結構、きちゃないですね
案内された元応接間の床には書類らしき紙が
あちこちに散らばり机の上にも隙間がないほど
書類やファイル、難しそうな本が積み重なっていた。
壁にも走り書きの付箋があちこちに貼られている
来客はだいたい広間へ案内するので
ここも散らかり放題ですよ。
毎回毎回片付けろと言ってるのに
ここも僕達が掃除をするんスか?
んな面倒な事はしませんよ。散らかした
馬鹿にやらせればいいんですから
ここはノータッチで結構です。
だから雇い主に塩対応過ぎないッスか!!?
私は馬鹿は甘やかさない主義です。
...........。
もはや言い直す気0ッスね....ロウドウさん...
ふむ、少々時間をかけてしまいましたが
だいたいこんなもんでしょう。
外からだと大きく見えるけど回ってみるとそこまで広くはないんスねぇ...
昔住まわれていた城に比べたら確かに
それ程立派ではないですが
今の人数的には充分な広さですよ。
ロウドウさんもここに住んでるんスか??
そうですね、この職業は主に
常に付きっ切りで仕えないと
いけませんからね他の従業員も
皆住み込みです
通常の従業員は屋根裏部屋
我々が3階の執事専用の部屋
そして魔王とクロ様のお部屋が
2階になりますね
うわー、なんか執事専用の部屋って
なんか嬉しいッスね~
ちなみですが...クロ様のお部屋に入られる時は必ずノックと、2階の奥にある浴室は掃除以外立ち入らない事
へ?何でなんすか?
お馬鹿ですか!クロ様は女性ですよ
女性の部屋にずかずか入る気ですか?
そこの浴室もクロ様が使われる事が
多いので気を付けて下さい
な、なるほどッス...。
ところで、魔王様はわかりますけど
クロ様って.......?
ああ、これから挨拶に行きます
その時に恐らく魔王と一緒だと思うので
お会いできますよ。
窓を見るとあんなにオレンジ色だった空は
すっかり夜に変わり
昼間見えた大きな樹からは柔らかい光が
木の葉みたいにちらちらと降っていた
人間界じゃ見れない、不思議な光景だった
ロウドウさんが言うにはあの樹が魔界の
様々なエネルギーを補ってるだとかで
「どういう仕組みなんですか??」と聞いてみたら
「ふーむ....あー....魔法の力ですよ」
と、説明を面倒臭がられた。
この先が広間ですね
僕ちょっと緊張してきちゃったッス...
魔界トップの方にお会いするなんて
よく考えると凄い事ですよね
そんなに畏まる事はないですよ
魔人は血の気が多い、なんて言われて
ますけどうちの魔王はちょっと.....
いや、だいぶ抜けてますけど
優しい方ですよ。色々慣れない事も
あるでしょうが自信を持ちなさい
は、はい!なんか言い直し方に
トゲが見えましたけど僕、頑張るッス!
この扉の先に今日からお仕えする魔の王様がいる....
...どんな人なのかな
ドキドキする気持ちと少しの不安が
入り混じってる
けどやっと受かった執事試験!
立派な執事になってみせるッス!
僕は満を持して扉をノックした
失礼するッス!今日からこちらに仕えさせて頂く執事見習いのネ......
ズパァーーーン
ズパァーーン
ズパァーン
..........................
ええぇぇぇーーーーーーーーーーー!!!!!???
入った瞬間修羅場に出くわした!!!!
ネム、どうしたんですか?
ちゃんと挨拶なさい
えっ!?いやっっ挨拶たって
だって今あの人もの凄いビンタっっえぇぇぇーーーーー!?
まったく....ホラ!何やってるんですか
新人がきてますよ!
スルー!!!?
ロウドウさんは僕のツッコミを軽く流し
強烈にビンタを喰らった頬を涙目で
さする魔人に、これでもかという呆れた目線を送った
うぐぅ....超痛いのだぁぁぁ....
ムスーーーーーー
もーーー、ちょっと
今度は何をしでかしたんですか
ロウドウさんが諌めると同時にその魔人は
ワッと訴えるように泣き出した。
も、聞いてくれなのだロウドウ~~!!!クロってば酷いのだーーーーー
どうせアンタの事ですから過剰な
ちょっかい出したんでしょう
だってだってだって!!!ただ
今日も可愛いクロ可愛いって
愛でただけなのにっっ
..........ほっぺでぐりぐりされた...
...それは確かに鬱陶しい。
鬱陶しいってっ!スキンシップなのだ!!!
ボーゼンと立ち尽くす僕の目の前の光景に
ただただ見てるしかできず
しばらく経ってじわじわと
余り言いたくない台詞が
頭に浮かんできた....
え、と.....ロウドウさんその人
もしかして.......
ああ、あなたの事をすっかり忘れていました
む、そう言えばロウドウ
そのガキっちょは誰なのだ??
今日から入る新人執事の
ネムですよ、魔王
やっぱりビンタを喰らってたこの人が魔王だったぁぁぁぁぁあ
そうなのかー!よく来たのだ!
俺が魔王のリュドなのだ~宜しくなー
そして、こちらが
先程言ってた魔王の...
.....
えっと......妹さん、デスカ....????
違いますよ。魔王のおくさんです
えぇぇえええええええええええええ
いもうと.........
確かに人間からすればそう見えなくは
ないというか......
クロが妹.........
それもいいかもしれないのだ
なんか危ない人だ
.............ネム、アナタなら
大丈夫です、きっとどんな事があろうと
乗り越えられますよ
ロウドウさん明後日の方向を見ながら言うの止めて下さいよッッッ
ていうか僕今もの凄い自信ないッス!!!!!!
.....今後ともよろしくってことで....
おにいちゃん....おにいちゃん....
ああ。これさえなければ
長い一日を終えて
こうして僕は正式に見習い執事として
迎えられる事になったッス
執事を目指すため試験を受けて
合格して、初めて訪れた魔界
正直想像していたものとは
違ってたけど.......
根性なら誰にも負けないッス!
また明日も頑張ろうと
僕はそう心に決める事にした
なぁなぁクロ、試しに俺の事
「おにいちゃんっ」って呼んでみて
くれなのだ
なんの試しにですかっっ
.......消えてなくなればいいのに.....
......やっぱりちょっとめげそうッス...。