イースト王国・某所

……ん?

レウコン

…………

レウコン

こんなところでお会いするなんて奇遇ですね。
どうかされたのでしょうか? 隊長殿

仕事だ。
お前こそこんなところで何をしている?

レウコン

プライベートなことなので、お答えする義務はありません

……そうか

レウコン

…………

……人と人は、どこで繋がっているかわからんな

レウコン

隊長殿が何を仰っているのか、理解できません

頭のいいキミになら理解できぬはずはなかろう?

レウコン

戦場でイノシシの如く敵に突っ込んでいく者が賢いと?

部下の被害を最小限に抑えるため、身を挺して戦っている、の間違いだろう?

レウコン

…………

本当のうつけ者が騎士になれるほど、甘くはない

騎士と言っても、キミたちの部下はポーンなのも理解しているだろう?
だがキミはそう思ってはいない。
戦場ではただの駒に過ぎないというのに

レウコン

先程も言いましたが……今オレはプライベートでここに来てる。
……言ってる意味が分かるよな?

“第二騎士団長”でも“親衛隊の新入り”でもない、ということだな。
そこまで怒るとは思わなかった。
謝罪しよう

しかしならば何故、キミは自身を駒としか思ってない?

レウコン

……うつけ、だからですよ

レウコン

“人の繋がり”なんて言うくらいだから、あんたは知ってるんだろ?

…………

レウコン

あの人を失った日から……オレはただ復讐することしか頭になかった。
魔物をいくら狩ろうが、復讐心は衰えることはなかったけど……ある日突然疲れた。そして気付いた

レウコン

魔物を根絶やしにするより、あの人を守らなかった存在を消したほうが早いんじゃないかって

なるほど。それで騎士になったのか

レウコン

武勲を立てるのは簡単でしたよ。
今までと何も変わらない、ただ魔物を狩ればいいだけの話だったから

レウコン

……何故、メランと組ませたんです?

さて? それは私の知るところではない

レウコン

知ったときは、上手いやり方だと思いましたけどね

レウコン

メランがどこまでオレのこと知ってるか知りませんけど、多分何も知らないですよね。
そんな身内をオレに会わせ、斬ったところでオレを処刑。
斬らなければ飼い殺し

今でも隙あらば斬る、と?

レウコン

まさか。
言っただろ? オレはもう“知ってる”

レウコン

メランのことも、メランが家族を大切に思ってることも……知ってますよ

レウコン

メランが許しているのに……オレが許さないなんておこがましい

…………

レウコン

あんたらなんか信用しない。
オレが守るよ、今度こそ……

レウコン

それに、子供には罪はない……だろ?

……それでいい

……奇遇だな。
こんな場所で会うなんて

メラン

……何であんたがここにいるんだ?

妻の墓参りに来て何が悪い?

メラン

あっそ。覚えてたんだ

…………

メラン

言っとくけど、オレはプライベートでここに来てるから、あんたに敬意は表さないよ?

ほう? ではただの親子、でいいのか?

メラン

勝手にしろ!

お前はいつも不機嫌だな

それほど私が憎いか?

メラン

別に。
あんたがどうしようがどうでもいいし、興味もない

メラン

……母さんが死んだのは、あんたのせいじゃないし……

…………

メラン

…………

メラン

あんたこそ、オレのこと嫌いなんだろ?

何故そう思う?

メラン

騎士になりたいって言った時、特に反対しなかった。
騎士なんてあんたらにとってはナイトじゃなく、ただのポーンなのはオレだって理解してる

それは否定しない。
だが私が反対して、お前は騎士になることを諦めるか?

私が何と言おうと、お前は変わらない。
お前の母親をよく知っているからな

メラン

…………

騎士となって女性を誑し込んでるのは私の血かな?

メラン

さっさと死ねばいいのに

公の場ならお前の首を切らねばならんぞ?

メラン

公私の区別くらいつけますよ!

メラン

……何故、親衛隊に入れたんです?

王子様のつよーい要望でね

メラン

それは知ってる!
そうじゃなくて──

……お前は、レウコンをどこまで知ってる?

メラン

レン?
方向音痴の天然ボケ

一番能天気なのはお前だな

メラン

……何か隠してるのは知ってるけど、それが何かまでは話すチャンスはなかった

彼は孤児で、この教会に併設されている孤児院で育った

メラン

…………

この教会が魔物に襲撃されたときの生き残りだよ、彼は

メラン

……あいつが?

当時は彼も子供だった。今の彼に怒るのは筋違いだ

子供だった彼に……お前の母を守る力がなかったのは分かるだろう?

メラン

あんたが守れなかった罪滅ぼしに、レンをオレと組ませたのか……?

残念だが、私はお前の母とは違って、見ず知らずの子供を我が子のようには思えない

彼は私に強い憎悪感を持っているようだが、息子のお前には手は出さないと踏んでね。
むしろ良き友人になってくれることを期待した

メラン

何故?
あんたの息子だろオレは……

例え魔物でも、その小さな命を守ろうとする男が……妻の息子を斬ると思うか?

メラン

……ちょっと待って?
もしかしてレンって母さんのこと……

どのような想いだったのかは知らないが、好きだったのは間違いないだろうな

一人の女性としてか、血の繋がりはないが母としてか……そこまで調べるほど私は厭らしくないつもりだ

メラン

ああそう。
つまりオレの護衛に最適だと

メラン

“親衛隊の新入り”は実質的にオレだけってことか

任務は“王子の護衛”

メラン

……方向音痴はマジなの?

……頑張れ!

メラン

ふざけんな!
クソ親父!!

次期国王様に向かって酷い口の利き方だなぁ?

メラン

さっさと死ねばいいのに!

王位でも欲しいのか?

メラン

そんなくだらないもの欲しいと思ってないし、そもそもオレは正式な王子じゃないだろ!

…………

それでも、私の息子だよ

メラン

はいはい、そうですか

……彼が私を斬ると言ったら、どうする?

メラン

オレが盾になる。
そのために騎士になったんだから

メラン

だけど……オレは実力でその立場に行きたかったよ。
オレはまだ、あんたたちを守れない

そこは彼に補ってもらえばいい

メラン

その代わり、オレが面倒見ろって?

普通の者では手が付けられないのはお前も理解しているだろう?

メラン

ああうん、色んな意味でね

お前が彼をどうしようが勝手だ。
仲良くやるんだな

メラン

そうさせてもらいますよ

つづく

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