見張りの数を増やせ!

こっちに追加の人員頼む!

屋敷の周りが騒がしい。
警護服を着こんだ男たちが敷地の中を行ったり来たりしている。

全員の顔にあるのは、まぎれもない緊張だ。

ローテ

ピルツ伯爵、全員配置に付けました

ピルツ・シュランム

うむ、ごくろうだ

ピルツ・シュランムと呼ばれた男は下級貴族だ。
シュランム家は、この国が建国されてからずっと議会で重要な役職を担ってきた。

7代続くシュランム家の当主であるピルツも陪審員である。
古くからの名門であるため、下級貴族にまで落ちた今でもこうやって軍の一部を借り受けることもできる。

ローテ

しかし、本当に奴は来るのでしょうか?

ピルツ・シュランム

君も随分と疑り深いねぇ。私が来ると言ったら来るのだよ

ピルツ・シュランム

ご丁寧にこんなカードまで届けられたのだしね

ローテ

トランプ……?

ピルツ・シュランム

奴が怪盗シャムロックと名乗るわけだ。言いえて妙というわけじゃないか

ローテ

……失礼ですが、悪戯の可能性は?

ピルツ・シュランム

いやいやそれはない。カードの隅に小さくサインもあるし、実に本物くさくないか

ローテ

……確かに

ピルツ・シュランム

まぁ、来なかったら来なかったで結構じゃないか!奴も怖気づいたってことだ

ローテ

…………はぁ

隊長!上に誰かいます!

ローテ

何っ!?

ピルツ・シュランム

な、何者だ?あそこは屋根の上だぞ!

ローテ

しかし、思っていたより華奢だな。何者なんだ……?

そ、それより、あそこは例のものが保管してある部屋の真下ですよ?

ピルツ・シュランム

はっはっは!何を取り乱しておるのだ?屋根の上からいったいどうやって中に侵入しようというのだね?

ローテ

……ワイヤーやロープを使って体を固定すれば、中に入る方法はいくらでもありますよ

ピルツ・シュランム

何だと!何故それを早く言わないのだ!!誰でもいいから奴を屋根から引きずりおろせ!!

ローテ

……どうやら、遅かったようです

あ、あいつ何しようとしてるんだ?

ピルツ・シュランム

何をする気なのだ、奴は?屋根の上でジャンプなどして……

ローテ

……まさか!!

ローテ

やられた…………

け破った……?人の足でか……?

ピルツ・シュランム

わ、私の家が……私の家が……

ローテ

丁度いい。ピルツ伯爵が動転している間に部隊を編成しろ!すぐに確保しに行くぞ

伯爵はおいて行っても?

ローテ

たとえ名門でも後ろで喚き散らすだけの老人など邪魔なだけだ

怪盗シャムロック

……………………

そこまでだっ!

怪盗シャムロック

ローテ

驚いた。本当に女の子じゃないか

怪盗シャムロック

…………

ローテ

まさか、屋根をけ破るなんて想像もつかなかったよ。常人の足では決してできない芸当だ

ローテ

だが、君はそのせいで我々に気づかれてしまった。素直にワイヤーを使って窓を開けて入ればいいものを

隊長、あまりそういう発言は……

ローテ

そうだな。さて、怪盗シャムロックよ。君には12件の宝石窃盗の容疑がかかっている

ローテ

諦めて投降してはくれないか。我々とて、女の子に銃を向けるのはいい気分ではないのだ

怪盗シャムロック

…………

怪盗シャムロック

…………

ローテ

…………笑った?

怪盗シャムロック

…………

あいつ、壁に向かって歩いて行って何を……?

ローテ

……全員、奴を止めろ!!

えっ?

ローテ

またけ破っていったか……

隊長、すみません…………

ローテ

今はいい!外に待機してある部隊も気づいているはずだ!なんとしても怪盗シャムロックを追い詰めるぞ!

は、はい!

ローテ

とはいえ、屋敷の隣は大きな林だ。時間が経てば逃げられる…………

ローテ

……………………

ローテ

…………完敗、か

怪盗シャムロック

はあっ……はあっ……!

怪盗シャムロック

うっ……ゲホゲホ!!

クリエ・エーデルシュタイン

はあっ……はあっ……!

クリエ・エーデルシュタイン

…………やった

クリエ・エーデルシュタイン

純性宝石……だといいな

怪盗シャムロック

……休む前に移動しないと

怪盗シャムロック

捕まるわけにはいかないから……

1ct  怪盗シャムロック

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