亀の恩返し

23.薬をもっていない。

























どれくらいの時間が経ったのだろう。

私は何処にいるのだろう。



目を覚ますと、そこは
光もなにもない真っ暗な空間だった。

私は……

おぼろげな記憶を探る。






そうだ。

私は乙姫様に太郎さんを帰すように言い、
それに乙姫様が激高し、

切られたのだ。
















でも痛みは感じない。

切られたであろう箇所を触ってみても
傷痕のようなものもない。


私は……死んでしまったのだろうか





そう、あなたは死んでしまったのです


独り言にまさかの返事が返って来た。

誰ですか!?
















































でも安心なさい。私は新たな命を持ってきました


光の中から現れた人は
あまりにも人外な恰好をしていた。

あなたは!?

私は地球から数千光年離れたとある星系からやってきました。……が、それは詳しく語りません

恩人に対する忠義、しかと見せて頂きました。
あなたのような者をこのまま死なすには惜しい。
もう1度生き返らせてあげましょう

この宇宙の何処かには地球では思いもよらないほどの文明が発達した星があって、そこでは生死も自由自在に操れると、そういうことですか!?

……

カメなのにやたらと詳しいですね

まぁいいでしょう


なにがいいのかはわからないが、
その人はなにやら光るものを取り出した。

命です

これが……命!!


虹色に光るそれは
やっぱり見たこともないもので



だからこれが命と言われても

「そうですか」

としか言えないのだが






いかにも神々しい感じを醸し出していた。

でも命を作れるなんて今流行りのips細胞ですか!?
人体錬成ですか!?

錬成なら等価交換が基本です!
こんな小瓶で魂は錬成できません!

……

……だからさ、その妙に賢しい言い方やめようよ。違う話になっちゃうから


その人はそう言うと
ぴたりと動きを止めた。




内蔵電源でも切れたのだろうか。
外部につなぐバッテリーケーブルとか
ないのだろうか。

……などと思っていると、




私は神様です。
そうです、そうしましょう


……などと言い出した。

は?

どうにもあなたはメルヘンが足りない。
これから私のことは神様と呼びなさい。


……接触不良で
初期化してしまったのだろうか。



とも思ったが、
どうやらこの宇宙人、もとい神様は
本気で言っているらしい。














こういう人は下手に否定すると
厄介だ。

どうせ今だけの付き合い、
呼び名くらい好きにさせよう。


はい、神様


宇宙人と神様の違いを
説明する気力は、私にはない。
























でも、これが本当に命なら

これで生き返れば太郎さんを、


太郎さんを、
地上に帰すことができる……?


それはできません





あっさりと否定された。



何故ですか!?

記憶は全てリセットさせてしまいます。
生まれ変わる時に前世の記憶を持たないのと同じことです

新たな命で新たな生を生きるか、このまま滅するか。
お好きなほうを選びなさい

神様はそう言う。




私は、
















A.命を受け取る。

B.命を受け取らない。

23.薬を持っていない。

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