霊深度

-6の、

ひとはしらねど

CridAgeT

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猫?

クリムがふと顔を上げると、いつの間にか目の前には白猫が居たのだった。

あなたは。誰かしら。名前を聞くべきなのかしら。

ひとのことなど気にする必要があるのかい?

猫はゆったりと青い目を細めた。
















ちりん。



















ちりん。














どこにも鈴はついていないのに、鈴の音がどこからか降ってくる。クリムは夢を見ているような顔で猫を見上げた。

君の名は?

クリム。

ふむ、クリム、か。良い名前だね。

白猫は優雅に飛び降りた。

猫神をまつる神社があるのだが、知っているか?
そこには黒猫と白猫の二つの神体がある。もちろん猫のミイラなんてものではないよ、代わり身の木彫だ。
なんせ本体は、こうして自由に飛び回っているからね

白く美しく、その目は青く。尾は2つに分かれていた。

神体の一部は、この山に眠っているんだ。悪くないだろ?

……おもしろいひと。

いえ、人ではないのね。

……そういえば、そんなこともあったかしら

……遠い目をしている

どうしたんだい?

いいえ。……ひとのことなど、そう気にするものではないわ。

香水♪ 香水♪ 
先生がくれた香水♪

カゲツは道なき道をふわふわと飛び回っていた。

なんか最近いつも素敵な気分です……もっと遠くまで行けそう

カゲツは普段、『先生』と呼ぶ人の家をそう離れることはない。あそこにいればすべてに満足がいく。



現世に留まって時を経た幽霊は、基本的に感情の起伏がなだらかになり、飽きにくくなる。






感受性まで擦り切れてゆくのかもしれないが、それを確かめる術は、ない。


だから、この日カゲツが家の外、それも見知らぬ道をさまよっていたのは、とても珍しい気まぐれ。奇跡に近い心境の産物だった。














そして、そこに彼が居たのも。


あれ、かりすすさん!

! カゲツちゃん!

カゲツは大きく手を振ってカリヤスのいる通りへと出た。しかし、

ちょっと元の道に戻って


カリヤスは彼女を見つけると焦ったような顔になり、小声で言うと大急ぎで脇道に入った。カゲツは不思議ながらもUターンする。

参ったなー

あ、いや気にしないで。それにしてもこんなところにいるなんて珍しいね

あー、ふわふわしてたらここに着いてました

ここらへんあんまり治安良くないから、気を付けないとだめだよ

……かりさすさん、なんか今日怖いです

ん?

今日、かりさすさんのまわりの空気が痛くてあんまり近づけないです。


私、今、ひとの考えていることが触覚で分かるんです……かりさすさん、もしかして

カゲツちゃん

っ!!

その声は大きな手で突き飛ばされたように感じられて、カゲツは思わずよろめいた。






オブラートに包まれていない言葉のように、
はっきりとした感触だった。

あぅ、ご、ごめんなさ

…………

『かりやす』だよ、カゲツちゃん

あ……

カリヤスは感情の読み取りにくい笑顔を見せた。

 こわい     

ごめんなさい、かりやすさん

……ちょっとこっち来ようか

カリヤスはカゲツのような幽霊は見えるが、触れることはできない。カゲツは手招きされた物陰に移動した。

しーっ

カリヤスは口に人差し指を当てる。


カリヤスもカゲツの近く……もう、くっついてしまいそうなくらいの位置に近づいてきて、耳元に普段は隠れている小さな赤いピアスが見えた。




くっつくことなど、できないのだけれど。

火みたいに赤くて、綺麗な石

……

……

……いつまで、このままなんだろう

……………………





……………………





……………………















……………………ん

さっきまでカリヤスの居た、通り。
そこに、だれかが現れたらしかった。

(かりやすさんのあたりがすごく痛い
……やっぱり、かりやすさん)

……

…………で、……

(かりやすさんの目的の人は、この人じゃない)

もしもし? ……切れてる

……

(この人も違う)

……

……!

(この人? 


いや、違う、かりやすさんが見てるのは、この人のもっと向こうの人だ!)

カゲツが気づいて目をやると、そこに一人の少女がいた。

その少女は、なにかカゲツにはよくわからないけれど道行くふつうの人々とは違う特別な格好をしていた。







すこしうつむき気味に、それでも少女は凛と立っていた。

チッ

とっさのことで、それが舌打ちだったのかどうか、カゲツにはよくわからないままだった。

かりやすさん、あの……あのひと、かりやすさんの知ってる人なんですか?

「知り合い」?

冷たい声に、カゲツははっとしてカリヤスの方を見た。

あんなヒト、知らないな

そのとき、少女が、ゆっくりとこちらを向いたのに、カゲツは気づかなかった。

あっ……ぁあああっっ!!

少女とカゲツ/カリヤスの間、

およそ10メートルあまり。

カゲ、ツ……ちゃん?

それでも関係なく、

人の感情を痛覚として感じ取ってしまうのが、

今日のカゲツだった。

意識が……飛んでる

少女が踵を返したところまでは、カリヤスも確認できなかった。

トキサクラ、君はいったい何をしているんだい? 
最近全然かつての縄張りにいるという話を聞かないが

ちょっと気まぐれで、ね。
人間に興味がわいたのよ。いろんなところを回ってるわ

へえ。おもしろいね

もしかしたら、あなたの『気まぐれ』にも関係があるかもしれないわね

今夜は久しぶりに神酒でも交わすかい?

悪くないわ

繰り越し マイナス2
繰り越し マイナス4
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小計 ゼロ

プラス5
マイナス#$&-ERROR!!!
****** **
小計 プ_ラス5


合計 プラス5 &”\
積算 推定プラス_5/,



霊深度 現在???







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     .?’  =-_

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