それは突然やって来た。

かぐや姫にのしかかっていた重みが煙のように消える。彼女はそのまま畳に倒れ込んだ。

……

そして、ゆっくりと顔を上げる。
相も変わらず、太陽の光はかぐや姫を照らしていた。

光に眩む目をそれでも必死に開け、そうしてそこに、かぐや姫は見た。

……

一本の長剣を背負った、青い髪の少年を。

彼が持つ剣はシンプルで、それ故にかぐや姫をぞっとさせた。

たった今彼女を襲っていた男を切ったはずなのに、剣には全く血も汚れもなく。
さらには男の影も形もなかったのだから。

あるのは、燃えかす。
灰色の粉。

これは……灰? でも、どうして……

ああ、姫様。質問は一つずつにしてくれない?

困惑するかぐや姫に、少年は静かに言った。
青い髪にオレンジ色の瞳。

左頬に絆創膏を付けた少年は、けれどもかぐや姫には、見た目よりも大人びた印象を与えた。

え、あ。ええと……さっきの男はどうなって……

上手く言葉が出てこないかぐや姫に対して、少年は一言で答える。

俺が切ったよ

き、切った? だけどそれじゃ、あの男は一体どこに行ったのですか? 切られた体も血もどこにもないのに

ああごめんごめん。この剣は特別製でさ。『星渡り』って言うんだけど。まあ細かいことは言えないけどね

少年は言いながら、右手で軽く剣を振るう。

切った奴を無に帰してしまうんだ。さっきの男は灰になってしまった。まあつまり、人じゃない者専門に扱う剣ってところかな

人ではない者……

人ではない。人間ではない。
人外。すなわち……

そ。今回で言えば『吸血鬼』かな

化け物。もしくは妖怪とも言えるのか。

人と同じ世界に生き、しかし人とは相いれない存在。
想像やおとぎ話でしか登場し得ない者たち。
非存在。

だけどこの物語自体がその『おとぎ話』を軸にしているんだから、吸血鬼がいるのも当然だろう?

そういう……ものなのでしょうか

納得はできないが一応の理解はでき、かぐや姫は落ち着きを取り戻す。
ふと外の方へ目を向けると、大きな鳥が竹林を低空飛行で飛んでいた。

助けてくれたことは感謝いたします。それで、あなた様は何をしにここへ?

丁寧にぺこりとお辞儀をし、かぐや姫は少年に向き直った。

ああ。俺は姫様の残りの生活を援助するために来たんだよ

私の、援助?

きょとんとするかぐや姫に、少年は続けて言う。

姫様はあと一週間もすれば月に帰って来るだろう? その間に姫様を狙うような悪者から守ること。それと、最後の地球での生活を楽しんでもらうためのサポートをすること。それが今回俺が月から派遣された目的だよ

なんと! ではあなたも月の民なのですね!?

驚いた声を上げかぐや姫は言った。その言葉に少年は頷く。

聞けば、かぐや姫の世話役のキキが、地球でかぐや姫を狙う怪しいものの動きを突き止め、この少年を遣わしたらしい。

そう言われてみれば、あなたの持つその剣も月で見たことがあるような気がしますね

まあ、キキ様が言うには有名な剣らしいからな

それからはしばらく縁側に腰掛け、二人して月の話しで盛り上がった。
話しの中で少年は、自らの名前をライトと言っていた。

ライトがかぐや姫に月の話をし、今度は姫がライトに地球の話をする。そんなやり取りをしばらく続けた後、彼は立ち上がり彼女にこう言った。

ところで姫様。月に帰る前に何かやっておきたいことはないか? 俺はそれを叶えるために来たようなものだから、遠慮はしなくていいんだぜ?

だからかぐや姫はその目を輝かせ、元気いっぱいに答えたのだ。

私、『あるばいと』がしてみたいっ!!

* * * * *

こんにちは。ご覧いただきありがとうございます。

昨日までは地震の影響で水と電気が止まっていたので、友人宅での投稿だったのですが、本日電気が復活したので我が家に舞い戻った次第です。

でも水は止まったままだから色々と不便なの

やっぱり自宅は落ち着きます。一人で暇なので新しい話などが浮かんできたりして……まあ基本的にやることがありません。

余震が続くからって振るえてなんかいないよ

大学もなんと5月8日まで休みです。わーーい、と浮かれていた私ですが、すぐに気付いてしまったのです。

その代わり多分夏休みが減っちゃうの……

悲しいです。それと、やっぱり一人は寂しいです。
なのでいつもよりストリエに関わる時間が増えると思います☆ 

では、これからもよろしくお願いします!!

今日のクイズ(笑)

ヒナ

その日の放課後。ゆっくんは生まれて初めて女の子からの手紙を貰いました。

ゆっくん

こんなの生まれて初めてだよ!

ヒナ

その内容は『放課後、屋上で待っています。白石 未筝』。ゆっくんは屋上への階段を意気揚々と駆け上がります。

ゆっくん

どんな子が待ってるんだろうっ!

ヒナ

屋上に辿り着くと、ゆっくんはそこで待っていた少女に、またもや手紙を貰いました。

白石

受け取って下さい。返事は明日の放課後、またここで待ってるから。

ヒナ

そこに書かれていたのは『私と海と電話』という謎めいた言葉。

ゆっくん

僕は何て返事すればいいんだよー

ヒナ

さて、手紙にはどんなことが書かれていたのでしょう?
そして、ゆっくんはどんな返事を返すのでしょう?

白石

あんなこと書いちゃったけど、あのセリフどこかで見たことがあるんだよね。もう忘れちゃって覚えてないんだけど……

ヒナ

合わせて、どこかで見たことあれば、白石さんにも教えてあげて下さい。

以上。『ミヤコワスレ』より、白石未筝さんと。
『赤と銀のリード』より、ゆっくんとヒナからでした(=゚ω゚)ノ

03.姫様は○○がしたい!!

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