ん……

竹林を突き抜ける太陽の光が、開いた障子から差し込みかぐや姫の顔を照らす。眩しさに耐えかねた彼女は、目をこすりながらゆっくりと起き上がった。

お目覚めである。かぐや姫の耳には数羽の鳥の鳴き声が、自分の目を覚まさせてくれるかのように、温かな音色に感じられた。

月……ではなく出ておるのは太陽かの

のらりくらりと重い体を起こし、陽射しをその身に浴びせるために、かぐや姫はゆっくりと障子の方へ歩き始める。

と。

ぎにゃっ!?

盛大にずでーーん! と転んでしまった。

おー痛たたた。くそう、視界がぼやけて何も見えぬわ。……眼鏡メガネと

とりあえず倒れた体を起こし、かぐや姫は辺りを手探りで探す。
その手が何かに触れ、彼女は動きを止める。

暫しのシンキングタイム。

うーむ。これは……あ! なるほど、狸の置物じゃな

人型の大きなそれを狸の置物と断定し、しかしそれには大した興味を示さずに、かぐや姫は再び手探りで眼鏡を探し始める。

これは……月の欠片のペンダントか

正直月の欠片ともその辺の道端に落ちているただの石ともとれる塊に、金の鎖を繋げた普通のネックレス。かぐや姫はそれをさして価値があるようにも扱わずぽいと放り捨てた。

そのネックレスが偶然彼の、先ほどかぐや姫が触った『狸の置物』の頭の上に乗ったことに、彼女は気が付いてはいなかったが。

うーむ、ないのう。これはムーンセイバーじゃしこっちはタケコ〇ター。それにこれはムーンメイルにあれはムーンシールドか……

よく聞くとどれも耳を疑うようなものばかりだが、元月の民であるかぐや姫からすればそれらはガラクタも同然なのだろうか。

拾っては投げ掴んでは投げの繰り返しだった。もちろんそれら全てが『狸の置物』にバシバシぶつかっていることには気付かずに。

お、何じゃあれは! もしやわらわの眼鏡はおぬしが付けておるのか!?

そう言ってかぐや姫は、自分よりも少し大きな人型の、ついさっきまで物を投げてはぶつけていた『狸の置物』の方を向いた。

よく見えないからなのかそれとも単純に馬鹿なのかはさて置いて、数分前に探したはずのそれに、彼女はまた手を伸ばした。

どこじゃどこじゃ。わらわの眼鏡はどこに隠したのじゃ?

言いながら、かぐや姫は『狸の置物』の全身をくまなく触り尽くす。足の先から、お腹や背中。
顔のパーツに至っては、口、鼻、目、耳、眉毛にまつ毛と細かく調べて言った。

お! 置物のくせにリアルな髪じゃのう

そして最後に、かぐや姫がそれの髪の毛を触って遊んでいた時のことだった。

おい。いい加減にしろよ

そんな鋭くて冷たい声が、かぐや姫の耳に届いた。

ふぇ!?

慌てて飛び退き、何度も目をこすりそして目を凝らしかぐや姫は『狸の置物』をじっと見つめる。

時間と驚きによってしっかりと開いた目に、それはいきなり飛び込んできた。

さっきからじっとしてりゃ、次から次に物をぶつけて来やがって。俺様を助けたり傷付けたり、一体貴様は何がしたいんだ?

そう言った『狸の置物』を、銀髪のその青年を目の当たりにして、かぐや姫はようやくのこと事実に気付き、そして叫んだ。

はっ!? 思い出したぞ思い出したのじゃ!! そうじゃそうじゃったそうじゃったわ! わらわは何を今までこんなことにも気付かず忘れて、勘違いをしておったのじゃろうか

言って、叫んで、驚いて。両の手で自らの顔を抑え、その失態を恥じるように顔から耳まで真っ赤にして、そうして続けた。

かぐや姫は真実を言う。

わらわは元々眼鏡なんかかけてはいなかったのじゃわい!!

ガン無視だった。

その手でしっかりと男を触って。
その目でしっかりと男を見て。

それでもかぐや姫は男については一切触れずに、男の前でそう叫んだ。

おいこら貴様。ふざけるのも大概にしろよ

そしてそれは、かぐや姫のその行為は。彼にとっては侮辱そのものでしかなかった。

銀髪の男の、血にまみれた冷たい眷属に対しての、冒涜以外の何ものでもなかったのだ。

ん? 何じゃお前。狸の置物じゃなかったのじゃな。これは失礼した。あまりにその体が冷たいものじゃったからのう。わらわはつい置物かと思うてしまったぞ

彼の血が騒いだ。

……殺す

元々彼は人に対して関係を築こうなんて考えは持っていない。時折訪れるその殺人衝動にかられてただ人を殺すだけ。そうやって生きてきた。

たまたま昨夜倒れたところを助けてもらった恩を感じ、その情けで殺さずにいただけ。

だけどもうそれも終わった。かぐや姫の行動と言葉は、その恩を塗り潰すほどの憎悪を彼に与えるのには十分過ぎた。

人間。お前を殺す!!

だから彼は、そう叫んでかぐや姫の首元に勢いよく噛み付いた。

な、……きゃあああああああああああああああああーーーーーーっっっ!!!

静かな朝に、かぐや姫の叫び声が響き渡った。

昔話にこんな結末はなかった。
月に帰らずして死んでしまう運命などなかった。

何もかも。この現状の全ては。

昨夜この男を助けてしまったが故の物語だ。
昔話とは違う、しかしハッピーエンドではない物語。

かぐや!?

かぐや姫!!

彼女の叫び声を聞いて、廊下の向こうからお爺さんとお婆さんがやってくる。

だけどもう遅い。彼らが着く頃にはこの物語は既に終わっているだろう。

変わらず太陽の光はかぐや姫を照らしていた。

その光が一瞬影に遮られる。

そして、終わりが訪れた。

* * * * *

こんにちは。ご覧頂きありがとうございます...♪*゚

さて、私の住む熊本は大変なこととなっています。14日の夜に初めの地震があり、それでも何とか1日で荒れた部屋を片付け、16日の午前1時過ぎに、ちょうどこの話しを書いているところでした。
突然家が揺れ、昼間に片付けた物が倒れ、食器は割れ、電気も水も止まり、そして書きかけの物語のデータごとパソコンも消えました……( ˃̣̣̥ω˂̣̣̥ )
やばい死ぬ! と思って、とりあえず水と食べ物を近くから取って急いで外に逃げましたね(>_<;)

まあ何とか無事なので、最初からまた書き始めようやく更新できたことを嬉しく思います(๑>ᴗ<๑)私も楽しいし、1人でも読んで下さっている方いる内は、頑張って書き続けたいと思っています。更新頻度が遅くなるかもしれませんが、できるだけ早くなるよう心掛けるので、今後ともどうぞよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ

地震の影響は九州全体にあるようなので、九州にお住みの方も、また九州よりの方もまだ気を抜かず、気を付けて下さいね。お互い頑張りましょう!!!

ほんの気晴らしに、『赤と銀のリード』でやっているものですが、本日のクイズ(笑)を。『赤と銀のリード』から、雛森真美ちゃんに出して頂きます。

ヒナ

ワタシの周りには空気がある。では、キミの周りには何がある?

クイズが得意な方もそうではないと言う方も、時間があればやってみて下さい笑笑(*^^*)

02.運命から外れた姫の終着点

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