我が家の今日の献立は、麻婆豆腐をメインにして、唐揚げ、サラダ、豚汁だった。
いただきまーす
我が家の今日の献立は、麻婆豆腐をメインにして、唐揚げ、サラダ、豚汁だった。
兄さん、唐揚げ少し焦げちゃったんだけど…大丈夫?
おう、全然おいしいよ!
よかった~
美智瑠が作ってくれた美味しいごはんが食べられて、今日も私は幸せです!
あ! そうだ兄さん
どうした?
これ…
と、美智瑠は三枚の紙を机の上に置いた。
この紙って…
ホテルバイキングの招待券。今日、商店街の福引きで当てたんだけど…
三枚か~。親父抜きの3人で行くか~
私、その日に大事な用事があるんだよね…
えー、じゃあコレはどうしよう?
兄さんにあげるから、友達誘って行ってきなよ
いいの?
うん
何か悪いな…。
美智留がせっかくくれた招待券だし‥
行かないわけにはいかない!!
絶対お土産買ってくるからな!
うん! 楽しみにしてるね
まあ、貰ったのはいいけど…
延彦くらいしか誘う奴いないな。
という訳で、翌日の昼休み…。
…てな訳で、土曜日暇か?
あいにく、その日は予定があって無理だ
そっか…
延彦なら行けると思ったんだけどな~
俺なんかより、羽島さんを誘えばいいじゃん。 きっと喜ぶと思うぜ?
え? 桜? そうかな…
絶対にそうだって!
わかったよ。 誘ってみる
まさか、桜は食べる事が好きだとは思わなかった…。
あくまで、延彦情報だけど。
同じく、昼休み。
…てな訳で、土曜日暇かな?
はい! 暇です! 私でよければ連れて行ってください!
うわ! 本当だ! そんなに食べる事が好きなんだ。
わかった! 土曜日楽しみにしといて!
わかりました!
よし! って事で、あと一枚は誰にあげよう?…あいつでいいか。
…って事でどうですか? 実さん
時は放課後。
実との会話(罵倒)を中断して、どうにかこの話題に持って行ったという事は、君たちには話さないでおこう。
マジで大変だったんだぞ‥。
うん、私行きたい
はい釣れたー!
そのホテルのバイキングって、結構有名なんだよね~。この前もテレビに出てたし
へー、そんなに有名なんだ
そんな凄いホテルのバイキング招待券を当てた、家の妹マジ凄い!
そ、そんな所に二人で…
・・・え? 何か言った?
な、何でもないよーだ! ベー!!
…なんだコイツ?
そして迎えた、約束当日…。
午後6時を少し過ぎた頃で、空は茜色に染まっているがまだ少し明るい。
少し遅れはしたが、無事に目的地に到着することができた。
ちなみに、待ち合わせ場所はホテルの入口なのだが‥あ、もういるじゃん。
当たり前か。
ごめん少し遅れた~ …あれ?
俺が到着する前にすでに来ていた女子二人は、口を開けてピクリとも動かなかった。
どうした?
「どうした?」じゃありませんよ!
なんで、この子もいるのよ!
こっちの台詞です!
え? だって、みんなで食べた方が美味しいだろ?
はぁ~
はぁ~
なんで、二人そろって溜め息をつくんだよ!
俺、何か悪いことでも言ったか?
もういいから、とりあえず中に入ろうよ
そうですね
あ、ちょっと待てよ
先に行こうとした二人に着いていく俺。
何か立場が逆な気がするな…。
そこで俺は、あることに気がついた。
二人とも、いつもの制服姿ではない。
実は、肩を大胆に出した赤いドレスで、裾は足が見えないほどにながい。
一言で、とても色っぽい感じだ。
桜は、実ほどの露出度ではないが、そこそこ肩が出ており、スカートは膝より遥かに高いやつだった。
こちらも、なんとも言えないほどに色気がある。
・・・・谷間が凄く目立ってる。
・・・
べ、別にそんなやらしい目で見てねーよ!
ちなみに、俺は制服です。
笑いたければ笑えよ。
親父にスーツ借りるのがダルかったから、制服にしたんだよ! 文句あるか!?
…まぁ、それは置いといて。
二人のドレスに目を奪われる人は俺だけではなかったようで、横を通る人全員が、二人の姿に見惚れていた。
たぶん、半分は桜の谷間。
店に着き、椅子に腰を下ろした俺達は、休憩を少し挟み、食べ物を取りに行くことにした。
バイキング…それは戦いだと思う。
1回目から元を取るために沢山持ってくる奴はまだまだ素人だ。
一つ一つの量は少なめによそって、全ての食べ物を制覇することに、バイキングの意味があると俺は思う。
みんなはどうだろうか?
「うるさい、かってにやっとけ」だって?
ごめんなさい。一人でやってます。
一時間後…。
ふー、私はもういいや
私も十分です
桜と実は同時にギブアップ。
ふっ、だから俺のやり方に従えばよかったのに。
・・・とか言いつつ、俺もそろそろ限界。まだ、半分しか制覇してないのに…。
私、ケーキ食べよ
私はゼリーを持ってきます
…まだ食べるんかーい!!
さっきの「もういいや」はいったい何の「もういいや」なわけ?
流石は女子の別腹。恐るべし。
その後、俺は完全にノックアウトをくらって何も食べられない状態の中で、実と桜の食べっぷりを一時間弱、大人しく見ているのだった。
…女子の食欲ハンパネー。
ふー、食べた食べた。
美味しかったですねー
その言葉が聞けてよかったよ
ホテルのロビーを抜け、外に出たときには、すでに空は真っ暗になっていた。
…総重量は明らかに俺より食べてるよね?
帰ろっか~
そうですね~
よし、帰るか~
俺はホテルを後にし…
…てない!
すっかり忘れてた! 妹へのお土産!
ごめん! 用事思い出したから、先に帰ってて。あと、二人ともドレス似合ってたぞ! じゃーな
う!
あわ!
二人の顔が一瞬にして赤くなった。
別に照れなくてもいいのに。
そんな、二人をそこに置き去りにして、俺はホテルへ妹のお土産を探しに戻った。
何がいいかな
売店に入り、中を見回してみたが、沢山の商品の数々ですぐには決めることができなかった。
美智瑠と一緒に来たわけではないので、手に残るものより食べ物系の方がいいのだろうか…。
は~、何にしたものか
もう、ここはお土産の定番、「まるもっこり」でも買って帰るか…。
と、諦めかけたその時、目の前に素晴らしい物が飛び込んできた。
これは! バームクーヘン!
そう、バームクーヘン。
え? 何が素晴らしいかって?
それはもちろん、妹の好物だからですよ!
俺はバームクーヘンを野口英世2枚と交換した
よっしゃ! 好感度ゲッツ!
テンションMAXで二人と別れたホテルの外に戻ると、すでに二人は帰っていた。
「じゃあね」とは言ったけど…先に帰られると少し寂しいな…。
ただいま~
おかえり、兄さん
美智瑠、コレやるよ
なにこれ?
開けてみ
?
不思議そうに中をのぞきこみ、中の物を袋から出した。
え!? バームクーヘンだ!
約束したからね。お土産買ってきたぞ
ここのホテルのバームクーヘンってスッッッッゴイ美味しいんだよね! 兄さん本当にありがと!
バームクーヘンと知った時の美智瑠の顔は天使よりも可愛い笑顔で満ちており、ここまで喜んでもらえると、買ってきてよかったと心から思えた。
はー、幸せです。
その頃、二人の女子の間でとんでもない事が起きてることは、今の俺は知るよしもなかった。