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 現代の日本。大自然あふれる都市マラク町。
 フラフラ大学生のボクは今日も見習い魔法使い幼女の教育に勤しんでいた。









立派な魔法使いになる為だ! がんばれ幼女!

ピーマン嫌い!!

 第四次ピーマン戦争勃発。
 時刻は昼。昼食に用意したチャーハンに入ってるピーマンを頑なに食べようとしない幼女だった。

ピーマン食べないと立派な魔法使いになれないぞ

ならわたしはピーマンを食べずに立派な魔法使いになるよ~だっ!

 こんなやりとりをもう何度しただろうか。
 幼女は毎回こうはぐらかし状況は進展しなかった。
 そんな時だった。

 外から空腹音。

・・・・・・

・・・・・・

 ボクと幼女は部屋の扉を開けアパートの廊下をのぞき込んだ。すると――

あううぅ~・・・お腹空いたですぅ~・・・

 見習い魔法使いの幼女と同じくらいの幼女が行き倒れていた。

お兄さん、あの子がピーマン食べたいって言ってるよ!

空腹音はそんなこと言わない・・・

 かくしてそれがとある非日常の幕開けであった。



 1/

陽気な午後。テレビからお昼のワイドショーが流れていた。
そんなおんぼろアパートに住むボクの部屋に幼女が二名。
新たに加わった幼女はボクの作ったチャーハンを残さずたいらげた。

おおっ、完食してくれたか! うれしいぞ! 

い、いえ・・・その・・・

でもなんでウチの前で倒れていたのかなー?

え!? あの、その・・・美味しそうな匂いにつられて気づいたら・・・ごめんなさい・・・

気にするな。ボクの料理を完食してくれたから構わないさ。どこかの見習い魔法使い幼女は好き嫌いが激しいからなあ!! 見習ってほしいものだ!!

そもそも好き嫌いが魔法と何の関係があるの?

健全な肉体に健全な魔力が宿るんだよ!! あと大きくならないぞ!!

お兄さんちっちゃいもんね。好き嫌いダメだよ

こ、コイツ・・・っ!!

あ、あのっ!!

 ボクらの会話におずおずと交わるもう一人の幼女。

お料理ありがとうございます! とてもおいしかったです!!

 幼女は丁寧に頭を下げた。

自己紹介が遅れました。私の名前はアイルです!!

ほう・・・アイルちゃん、か。幼女と同じくらいの年なのにしっかりしてる・・・

い、いえそんなっ・・・

 ボクは幼女をあえてジッと見て告げる。

見習いなよ幼女

お兄さんはロリコンだから小さい子に甘いねえ

・・・

 そんな時だった。
 テレビから緊急のニュース速報が流れたのは。
 内容はとある人気アイドルが行方不明になったという事件だ。
 地方のイベントに参加するための待機時間にいなくなったらしい。
 現在マネージャーやスタッフが捜索している、とワイドショーの司会者たちが話していた。
 そして件のアイドルの写真と名前が映りボクと幼女は驚愕した。
 なぜならば――――

え!? この子って・・・

あああ、アイルちゃんだあああああっ!!!

 そう、アイルが映っていた。
 この子の正体はいま絶大な人気を誇る妹系アイドル【諸星アイル】だったのだ!!

・・・えへへ

  アイルは申し訳なさそうに笑った。



 2/

 事情を聴けば至極単純なことだった。
 アイルの目的は『友達』を作ること。
 アイドル業が忙しく友達がひとりもいないそうだ。
 さらに引っ込み思案な性格も手伝って。

 しかし今回少し時間(スキ)ができた、

 アイルは一大決心をし、友達を作るため飛び出した――――そんな経緯・・・しかし。

無茶したね・・・

えへへ・・・

なるほど、事情はよくわかったよアイルちゃん!!!!!

 幼女はバンと立ち上がり、

私がアイルちゃんのお友達になります!!!!

 力強く叫んだ。

アイルちゃん、私と友達になろうよ!

ひゃ、ひゃいっ!!

  二人は友達になったらしい。

よーし友達になった証に、さっそく面白いもの見せたげる!

お、おもしろいもの・・・?

こら幼女、まさかその面白いものというのは【魔法】ではあるまいな?

うん! あれ? ダメだっけ?

いや、一般人に対し魔法の秘匿義務はない。問題は「外に出る」ということだ

・・・あ

 アイルは気づいたようだ。

そう、外に出ればアイルちゃんのマネージャーや現場のスタッフに見つかってしまう。せっかく友達になって一緒に遊びたいならこの家で遊べばいい。だが時間は一時間だけだ。それ以上だと・・・

 ボクはスマホでアイルちゃんが今回出演するイベントの時刻を確認した。

アイルちゃんが仕事に間に合わないからな

あうううっ、お気遣いありがとうございます!

なるほど、わかったよお兄さん!!!

 お、今回はやけに素直だな。いつもなら自分の言い分を曲げないのだが、これもボクの教育の賜物だなあ・・・――――

あ、空に未確認飛行物体が飛んでるよーーーッ!!!!!!

なんだとぉぉぉおおおおお!!!???

 ボクはすぐさま窓から外をのぞき込んだ。なぜならボクは未確認飛行物体が大好きだからだ。なんだ、どれだ、どこにいる? 円盤型か? 球体型か? もしや新種か!? 興奮が冷め止まない!!!

どのあたりで見かけた幼女!! もっと詳しく――――

 ボクが一度目を離したスキだった。

 部屋の中はもぬけの殻だった。

くっ、あの幼女逃げたな!!!

 ボクはすぐさま外へと駆け出した。

 しかし外に出た瞬間、誰かに呼び止められた。

やあ、丁度キミに訊きたいことがあったんだ

 まさかの警官だった。

いま、「幼女が君の家に入った」と通報があってね~、詳しく事情訊かせてもらえるかな?

はっ!?

 それはつまり「諸星アイル」のことだろう。
 近隣の住民に見られたのかもしれない。

それに君はこの界隈でも有名なロリコンだそうだね

!? それこそ誤解だ!!

 ちくしょう魔法幼女育成で変なウワサが立っているぞ!!

ほう言い分があるのかね?

実は・・・っ!!

 ゆえにボクはその事情を説明しようとした。

・・・・・・ッ

 そして踏みとどまった。
 いまボクがすべてを話せばアイルの目的が実現しなくなる。
 ボクはアイルの言葉を思い出す。

友達がほしいんです!!

 そう、ならボクのすべきことは決まっている。

そうだボクがロリコンだ!! 捕まえてみろこのやろう!!

 ボクは全力で逃げた。

!? 本性を現しなこの悪童めっ!! 本部、至急応援求む!! 場所は――――

 一時間くらいなら時間を稼げるだろう。
 幼女よ、アイルと遊んでやってくれ。


 3/

 そこは芝生に覆われた公園であった。
 魔法幼女の教育担当の青年が時間を稼いでるころ、当の幼女と妹系アイドルの諸星アイルは楽しく遊んでいた。

お、お兄さんを置いて外に出てよかったのでしょうか・・・

問題ないよ~アイルちゃん! お兄さんはこういうのには慣れているから~

 それは本当に問題ないのだろうか・・・と思うアイルだったが、

それにもし、アイルちゃんに何かあったら私を守るから!!!

!? ありがとう幼女ちゃん・・・

 なぜかその言葉に安心ができた。

では突然ですがアイルちゃんに問題です!!

ひゃ、ひゃいっ!!

私の使える魔法はなんでしょうーっ?

え、えーと・・・空を飛ぶ?

ブブーッ、そのような高等魔法は私使えません

(空を飛ぶって高等魔法なんだ・・・)

正解は「変身魔法」だよ!!

変身魔法・・・?

うん! 見ててね? いくよ!

 幼女は杖を抱え、深く息を吸い込んだ。

【ウドツハ・ウホマンシンヘ・チイイダ!!】

 呪文を唱えた途端、眩い光に包まれる幼女。

ううっ眩しいです・・・ッ

 そして光が消えていき、そこに現れたのは―――

わわわっ!! よ、幼女ちゃんが!!!

 アイルも思わず驚くその姿。

どう、驚いた? これが変身魔法よ♪

 幼女が美女に変貌していた。

今回は10年後の自分に変身してみせたわ♪

あうううっ、とっても綺麗ですぅ・・・

アリガト♪ しかもこの姿なら空を飛ぶ高等魔法だって使えちゃうんだから! いくよアイルちゃん♪

・・・えっ!?

 ぐいっと幼女に手を捕まれるアイル。そして―――

それーーーっ!!!

きゃあああああっ!!!!!!

 二人は天高く飛び立った。


 ☆


 一分後。

どうだったアイルちゃん、はじめての飛行魔法の感想は?

さ、最高でしたぁ~・・・へろへろぉ~

 さすがにまだ混乱しているアイル。
 しかしその飛行体験は格別だったのは確かだ。
 なぜならそれは、現実では味わえない代物。

本当は大魔王とか炎神王とかにも変身できたり、その能力とかも模倣できるから見せてあげたいんだけど、ひとつだけ問題があってね・・・

問題・・・?

ううっ、眩しいです・・・っ

 そして再び幼女が激しい光に包まれると、

私の変身魔法は三分しか使えないんだよ~

 幼女が元の姿に戻っていた。

しかも一日一回!

えええっ、そんな大事なものわたしなんかに見せてよかったの・・・?

うん平気! だって友達だもん!

・・・幼女ちゃん

それにたくさん修行して変身時間がのびたら、アイルちゃんにもっとすごい魔法を見せてあげるね! だから楽しみにしててね!

うん! ありがとう・・・ありがとう幼女ちゃん

 アイルはようやく満面の笑みになった。


 ☆

 そのころ青年は。

(はあ・・・・はあ・・・ここまでくれば時間を稼げるだろう・・・)

見つけたぞ、ロリコン青年っ!!

なにィ!? ここ屋根裏だぞ!!?

覚悟ッ!!!

ちっ!!

 未だ逃げ続けていた。

幼女とアイルは楽しんだ。魔法やアイドルの話もした。一時間はあっという間に過ぎ去る。
幼女は公園の時計に目をやった。

アイルちゃん、もう時間だね。みんな心配してるから戻ろう?

・・・うん。でも私、幼女ちゃんともっと遊びたいよ・・・!!

また遊べるよ~? 連絡先交換しよ!

無理なの・・・お母さん厳しいから・・・

 今にもアイルは泣きそうだった。
 幼女は優しく語りかける。

ねえアイルちゃん・・・アイドルは楽しくないの?

え・・・ううん楽しいよ・・・でも・・・

でも、友達がほしかったんだよね? 遊ぶ時間もほしかったんだよね?

・・・うん

けど最初の願いは叶ったよ? わたしとアイルちゃんはもう友達! だから次はお母さんにアイルちゃんの気持ちを伝えよう?

・・・幼女ちゃん

アイルに笑顔が戻る。だが―――

アイル! こんなところにいたのね!!!

 気の強そうな女性が声を荒げ、肩で息を切らしながら現れた。

お母さん・・・

 アイルの声は震えていた。

 4/

 アイルと母親が向かい合って対峙する。
 母親は無言で近づいてきた。
 アイルは身体を震わせたままだった。

アイルちゃん、いまここで自分の気持ちを言わないと一生後悔するよ!!

 アイルの震えがとまった。
 後悔しないために、自分の想いを告げるために。
 いま、ここで母親から逃げてはだめだ。
 だが・・・。

でも・・・わたし無理だよ・・・

 心に刻まれた恐怖心でアイルはあと一歩踏み出せずにいた。

アイルちゃん・・・!!! ふぁいと!!!

やっぱり無理だよ・・・私、幼女ちゃんみたいに魔法も持ってないし・・・変わることなんて・・・

それは違うよアイルちゃん! 誰しも最初から持ってる魔法があるんだよ!!

!?

わたしも教えられた! 教わった! ある人から! それがあったから私は魔法を使えるようになった!! お父さんのような立派な魔法使いになろうと思った!!

・・・っ!!

大丈夫だよ、その魔法の名は―――『勇気』!!!

勇気・・・

うん! 一歩だけでいい。前に進んでみよう、アイルちゃん!! わたしアイルちゃんとずっと友達でいたいもん!!!

幼女ちゃん・・・わたし・・・っ!!!

 アイルは目の前にまできた母親の顔をみた。
 怒っている。当然だ。自分が悪い。
 でも、それでも。アイルは自分の気持ちを伝えねばと思った。
 ほんの少しの『勇気』があればいい。
 その『勇気』ならいま、大切な友達に貰ったから大丈夫だ。

お母さん、勝手にいなくなってごめんなさい!!! 私・・・

・・・あなたが無事ならそれでいいわ。でもせめて携帯電話くらい持ちなさい。心配するでしょう?

・・・うん。お母さん聞いて私・・・お友達が・・・

わかっているわ。お友達がほしくていなくなったのでしょう? あなたの気持ちに気づけなくてごめんなさい。大丈夫、お友達なら私が用意するわ

え?

あなたにとって有益なお友達。当然よね、なぜならあなたは一流のアイドル、諸星アイルなのだから。まさか―――

 母親はアイルの隣にいる幼女を一瞥し、表情が曇る。

まさかこの得体の知れない人間とお友達になりたいと、言わないでしょうね?

そうだよお母さん・・・私は幼女ちゃんとお友達になりたいの!!!

なら『有益』さを証明しなさい。それが最低条件よ

アイルちゃんのお母さん! はじめまして、私は見習い魔法使いの幼女です!!!

 幼女は二人の会話にわりこむ。

有益さならお任せあれ、私は将来、トップ魔法使いになりますよ!

・・・魔法使い? あなたみたいな幼女が? 信じられないわ。じゃあ魔法を使ってみせてちょうだい

お任せあれ! では得意の変身魔法を―――発動!!!

 だが何も起きない。
 当然だ。幼女は自分で説明していた。

 魔法は一日一回三分間だけだと。

しまったミスったーーー!!! これは大ピンチーーー!!! ごめんアイルちゃん!!!

あ、謝らないで幼女ちゃん!!!

用件はすんだかしら幼女さん。じゃあ私たちは行かせてもらうわよ

 アイルの手をひく母親。
 アイルは涙目だった。
 幼女は思考をめぐらすが何も浮かばない。
 そう、なぜならこういう時は決まって―――

ちょっと待ったーーーっ!!!

 彼の教育が助けてくれたから。

 あの件の警官をボクの逃走術でまいた後、ボクは幼女のいそうな公園に向かっていた。
 そうしたら案の定、幼女とアイルちゃんがいて、それに見知らぬ女性も。ボクは駆け足でその場にむかい、いまにいたる。

ああ、大丈夫だ。話はだいたい推測させてもらった。遠くからでも読唇術ができたんでね

なにこの子・・・気持ち悪いわ

ひどい! だが今は有益性の証明だったな。ならこれを見てくれ。

 ボクは財布から一枚のカードを取り出し、アイルの母親に見せた。

魔法教師の証明書だ。ボクはこの幼女の担任だ!

・・・確かに本物のようね

ならば!

いいわ。幼女さん、あなたをアイルのお友達と認めしょう。お友達が魔法使い、それは有益だわ

!?

!?

 母親がアイルの手を放すと、アイルは幼女のもとへ駆け出した。感極まったのだろう。目に涙を浮かべている。そして幼女と抱きしめ合っていた。

あなた、まだ若いのに魔法教師なのね

ええ、そうですよ

それは茨の道ね。アイルがトップアイドルになる以上に、幼女さんをトップ魔法使いにすることは

ボクの使命ですので、ええ大丈夫です。ボクは幼女をトップ魔法使いに育てあげます

そう。でもあなたの後ろにいるお巡りさんは、大丈夫じゃなさそうよ

えっ!!?

やあ

 このあとボクはみっちり警官の取り調べにあった。もちろん無実と証明され解放されるのだが。
 まったく、幼女がウチにきてからトラブルの毎日だ。でも―――

 ふたりの笑顔がみれたので、これはこれでよかったのかもしれない。

 5/
 あれから数週間がたった。
 

 時刻は昼。
 ボクと幼女は昼食をとりながらテレビに映るアイドル特集を観ていた。もちろん諸星アイルだ。

幼女よ、アイルちゃんと会えなくて、さみしくないか?

大丈夫だよ、お兄さん。アイルちゃんは忙しいから会えないのは仕方ないの。それにたとえ離れていても友達はいつまでたっても友達だから

 そう言って幼女は昼食のピラフに入っているピーマンを食べた。

次にアイルちゃんと会う時はもっとすごい魔法使いになるもん! だから食べ物の好き嫌いはもうしないよ!

 涙目になりつつ幼女はパクパクとピラフを食べ進める。ううっ、その成長ぶりにボクまで涙目になるよ。

 その時、外から聞き覚えのある空腹音が聞こえ、玄関のインターホンが鳴った。
 幼女は心底驚いた様子だった。
 そして慌てて玄関に向かう。
 確かめるまでもない。
 相手は決まっている。
 
















久しぶりアイルちゃん!!!

遊びにきたよ、幼女ちゃん♪

 これはとあるトップ魔法使いの幼少期のお話。
 はじめての友達ができた時の物語だ。
 ふたりならきっと、この先もずっと、仲良く楽しく元気に過ごしていけるだろう。

 友達とは、そういうものだから。









END

はじめての友達

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