ルシファー達は崖の上から天使が殺される一部始終を眺めていた。
ルシファー達は崖の上から天使が殺される一部始終を眺めていた。
よもや天使を倒してしまうとはな
はい、彼女は一体何者なのでしょうか
さぁな。だが誰かは知らんが、おかげで手間が省けた。
我らの代わりに天使を仕留めてくれたのだからな。
それに相手が下級天使の雑魚とはいえ、ああもあっさり倒すとは中々興味深い奴だ。
お好みのタイプでしたか、お声をかけますか?
いや、いい。
通用するのはあくまでも下級の天使までだ。戦い方のセンスはいいが、戦闘技術に粗がある。あれでは上級天使以上の相手には通用しないだろう。
そういう意味で言ったのではないのですが・・・・
ハエ男・・・ルシファーノ奴二、ソウイウノヲ期待シテモ無駄ダ
・・・そのようですね
?
ともあれここでの用件は済んだ。この地にいる理はもうな・・・・・・
突如、ルシファーの足元にある足場が崩れた。
なに?
お?
なっ!
それもそのはず、ルシファー達のいる場所は本来人がいれる場所じゃない。
崖っぷしにいたからだ。
そんないつ崩れるかもしれない危ない場所にいたら、足場が崩れていてもおかしくない。
二人と一本の剣は崖の上から落下した。
チッ!
落下中にルシファーはダーインスレイブを崖の表面に突き刺した。岩をガリガリ削りながら落下のスピードを減速させる。
くっ!
落下の速度を殺してルシファーは崖の下に着地した。
オ前ホントヨク堕チルナ
うるさい
降りた先には例の祭壇があった。
ベルゼブブ無事か?
はい、私は大丈夫です。主は?
ルシファーはベルゼブブにテレパシーを送ると、ベルゼブブから返ってきた。
ベルゼブブは落下中に蠅に変身して難を逃れていたようだ。上空に巨大な蠅であるベルゼブブが飛んでいる。
俺も大丈夫だ
やはりいくら見晴らしがよかったにせよ、あそこに陣取るのはよくなかったですね。
ああ、今度から見張りの場所はもっと慎重にえらぼう、それよりも・・・
・・・・・・・・・・・
目の前には例の生贄の女が立って、ルシファーを不審そうに見ていた。
人が上から落ちてきたら誰でもそう思うだろう。
アカラサマニ不審者ヲ見テイルヨウナ目ツキダナアリャアWWW
見つかってしまいましたね。
ベルゼブブは上空でそのまま待機していろ。お前の姿を見られたら説明が難しそうだ。
御意・・・
ベルゼブブは上空からルシファーを見守ることにした。
誰?
通りすがりの旅人さ
そう・・・・・・
女は有無を言わさずナイフをルシファーに投げつけた。
ぬっ!
ルシファーはそれを避ける。
何をする?
いきなり崖から落ちてきた人間に
「私はただの通りすがりです、はいそうですか」・・・で誤魔化せるわけないじゃない!
ソレモソウダ
第一ここは、村の秘密の場所で村の人しか知らないんだから、それをよそ者がどうしてここにこれるのよ!
偶然だ。道に迷ったらここに出た
主よ、それはさすがに不自然すぎます。
周り見てわからない?
ここは断崖絶壁の岩の壁で囲まれていて、一つしか出入り口がない。あとは空くらいかしら入れるといえば
・・・・・・・・・
ここは天使に生贄を捧げる祭壇。だからここは空が見える場所にあるの。天使は空から来るから
・・・・・・・・・
あなた何者?
フッ、俺がその天使様にみえるか?
天使ジャン
天使ですね。
全然。でもただの人間にも見えないわ。というか普通の人間が魔力帯びてるわけないもの
混血なだけはある。どうやらこの女は俺の天使のオーラが少し見えるようだ
鋭い女だ。隠していたつもりだったが、ルシファーから流れる微かな魔力の残滓でも嗅ぎとっていた。
もう一度聞くわ。あなた人間?混血?それとも天使?
答える義理はないな。
そう・・・・・・まぁいいけど、あんたが何者だろうか。嫌でも答えさせるから
女は鎖のついたチェーンナイフを構える。どうやら戦闘準備は万全のようだ。女から殺気が溢れ出ている。
待て、お前とやりあうつもりは・・・
問答無用!!!
女の再びチェーンナイフを投げた。
ルシファーはそれをまた避けた。
!?
避けたはずのナイフが方向転換し再びルシファーに向かってくる。
そうか、風の魔法でナイフを操っているのか
なら叩き落とすまでだ。
ルシファーは戻ってくるナイフを避けるのではなく今度は叩き落とそうとダーインスレイブを構え・・・・
ルシファーの立っている地面がいきなり揺れて足を取られた。
なに!!!
女はニヤリとしながら態勢を低くし左手を地面につけていた。ルシファーはそれに気づいた。
地の魔法で俺の足元の土を変化させたのか…
足元に注意がそれて態勢が崩れたルシファーにナイフが迫る。しかし、ルシファーの予想は外れてナイフはルシファーの頬を掠めただけで通りすぎた。
チョイサ!
女は鎖を操り、チェーンナイフの軌道が変わるとルシファーの身体を鎖が一回りする。
アラヨッ!
鎖はルシファーの身体の周りを回っていた。
鎖つきナイフはルシファーの身体を何重にも回って、鎖で身体をぐるぐる巻きにされた。
これが狙いか!?
ルシファーは全身を鎖で巻かれて身動きが取れなくなった。
これでミノムシの完成、さて話したくなった?
風の魔法でナイフの軌道を自在に操ったな
御名答、でも気づくのが遅かったわね
続いて女は詠唱すると手から巨大な火の玉を出した。どうやらトドメにそいつをぶつける気らしい。
これで終わり!
鎖に巻かれて身動きが取れないルシファに向かって火の玉が投げつけられた。
雷、水、地、風そして火まで使えるのか、まさか五大属性を使える混血種がこの世に存在するとはな
我が主よ、感心している場合ではないかと
それもそうだな
ルシファーは片翼を出現させた。そして身体に巻きつく鎖を強引に引き千切った。
なっ!?
目の前に迫った火の玉を、ダーインスレイブで真っ二つに斬り裂く。
グギャアアア! アチイイイイ! ルシファーテメェ絶対ワザトヤッテンダロ!
気のせいだ
生きてる剣ダーインスレイブにも痛覚があるようで、炎にあてられ怒っている。
炎の破片と黒い羽根が青年の周りに舞墜ちる。
黒い片翼を羽ばたかせた青年を見て女は一瞬動きを止める。
天使の羽根…
女はワナワナ震えだし憎しみの形相でルシファーを睨み付ける。
そうか・・・もう一人いたのか!
ルシファーの片翼を見て目の色を変えた女は次々と魔法を詠唱していく。
直線的過ぎて軌道が読めるな
女によって作られ飛んできた氷の槍がルシファー目掛けて飛んできた。それをルシファーは軽く躱す。
続いてカマイタチの疾風魔法も放ってくる。だがやはり直線的すぎて避けるのにわけなかった。
はぁ・・・はぁ・・・なんで当んないのよ!
レパートリーは豊富だが、コントロールがまるでなっちゃいない。
うっさいな! 当たれよ!
魔法とは自分の心に影響されるものだ。
この女、冷静さを欠くとコントロールが乱れるな。きっと真っ直ぐで感情的な性格なんだろう。
あんたが私の鎖さえ壊さなければ・・・
鎖? ああ、さっきのチェーンナイフのことか。
そうよ!
先程お前と天使の戦いを見ていたが、鎖で敵の動きを止めてから魔法を当てるのがお前の戦法だろう?
ぐっ!?
その顔、やはり図星か
さっきのやつ見てたの!?
一部始終な。一見自身の苦手を補った戦い方で悪くはない考えだが、欠点を自覚しているんなら魔法をコントロールすることも覚えろ。少しは弱点も克服もしたほうがいい
うっさい! うっさい! うっさい! うっさい! あんたは私の先生か!
女はナイフを取り出しルシファーの元まで走り出した。
接近戦をしかけるも斬りつけるナイフを剣でいなしなす。
死ね!!!
女は接近戦をしかけるも、斬りつけるナイフをルシファーは剣でさばいていく。
キシッシ! イイ匂イガスルゼェ。コノ女、処女ダ!プリプリシテ実ニ旨ソウダ!
なっ!? 何いってんのよ!この変態!
誤解だ、俺が言ったんじゃない
殺意むき出しの女はルシファーを攻めたてる。
とりゃあああ!
女の放つナイフの連続突きをルシファーは躱していく。
うりゃあああ!
くっ、これならどう!!!
女は蹴りも織り混ぜてきた。しかし空しくも蹴りは空を切っただけで終わる。
と見せかけて、本命はコレだ!!!
ぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・
女は全力の一撃を繰り出した。
今までの単純な突きではなく、最高の一撃と言っても過言ではない。だがルシファーは軽々といなしていた。女は息を切らしていた。
さっきから避けてばっかで私を舐めてんの!!!
前に言っただろう。お前と戦うつもりはないと。
やっぱり馬鹿にしてる!!!
やれやれ、どうしたものか
主よ、彼女はかなりプライドが高い性格のようです。ここはひとつ、主との力の違いを見せつければ向こうも引きましょう。
そうだな、そうするか
男だったら反撃のひとつもしてみなさいよ!!!
わかった
右腕のガントレットの拳で女の顔面を思いっきり殴り飛ばした。
べふっ!!!
女はぶっ飛び、壁に叩きつけられた。女はピクピクと痙攣して動かなくなった。
相手が女性でも容赦がないですね・・・
手加減はした
て、手加減…ですか。アレが?
女の前歯と鼻の骨が折れて、鼻血をダラダラ流しながら白眼を剥いて気絶していた。
ちょっとやり過ぎたか
それを気にすることもなくダーインスレイブははしゃいでいた。
ヒッヒッヒ! 食事ダ食事ダ!
何をしているダーインスレイブ
何ッテ食事二決マッテンダロ!本来食ウハズダッタ天使ヲコイツガ粉々二シチマッタ。ダカラ代ワリニコノ女食ウ!
気絶している女の元へ引っ張ろうとするダーインスレイブ。それをルシファーはダーインスレイブを鞘に納めた。
ナンノツモリダルシファー! 混血シカモ若イ娘ノ血ハ滅多二ナイ御馳走ダ! 早ク俺二飲マセロヤ!
怒り狂うダーインスレイブ。しかしルシファーは首を横に振った。
それは聞けん。
ルシファー…テメェ
不服か? ダーインスレイブ
当タリ前ダ! テメェガ何ト言オウガ俺ハコノ女ノ血ヲ吸ウゼ!
やめろダーインスレイブ
ダーインスレイブの目から触手が伸びて気絶した女の身体に迫る。しかし、触手は女の動脈の手前でピクピクとしながら動かなくなった。
グッ…ググググ・・・・・!?
やめろと言ったのが聞こえなかったのか?
グッ…ルシファー貴様…
ルシファーは右腕のガントレットでダーインスレイブの柄を握っていた。
ダーインスレイブは力が抜けたかのように大人しくなる。
テメェ…コレハ重大ナ契約違反ダ…
最初の契約の時にこう言ったはずだ、悪しき者しか討たんと
コノ女ハ魔女ダ! 天使ノ血ヲ引イテイル敵ダ! 悪ダゾ!
この娘からは負の感情が感じられなかった。悪しき魂の持ち主ではない。それでもまだ納得いかないのであれば、この右腕にお前の自我を完全に封印して、ただの剣にしてもいいんだぞ
チッ!
ルシファーの鬼気迫る気迫に圧され、ダーインスレイブは諦めて大人しくなった。
ただ、そんな中でベルゼブブだけは、そこまでわかっていながら平然とぶちのめした自分の主に汗を垂らした。
せっかく整った顔立ちなのに、前歯が折れ鼻がひんまがっている。今後一生の傷物にならないか心配だ。
混血児は天使の再生能力があるから大丈夫だろう
当事者の我が主は気にしていないようだった。
・・・・・・・・・・・・
さて、このままここに捨て置くのも悪いか…
ルシファーは女を担ぎ一旦村に向かった。