イジメはどうして起こるのだろう。
そもそもイジメとは何だろう。

それは他者を傷つけること。
肉体的、精神的に傷を負えば誰だって苦しい。
その苦しさの中、相手が笑っている。

ならそれこそがイジメなのだろう。

一体どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
赤坂優真は運命を呪った。

運命と自分を呪った。
呪わざるを得なかった。

どうして……

こんな運命など認めない。
悪いのは誰だ。分からない。
誰か、誰でもいい。教えてくれ。一体どうすればよかったのだ。

おい優真、なに絶望してるような顔してるんだよ。こんなの遊びだろ

面白可笑しく笑っていた。
笑う。嗤う。一体何に? どうして彼は楽しそうなのだろうか? きっといいことでもあったんだと思う

ギリッと優真は歯を噛み締めた。

有塚ぁぁぁぁぁぁッ!!

あン? 雑魚が何を吠えている。生意気だぞ?

そう言って、優真の腹を蹴った。
痛い。そりゃあ蹴られたのなら痛いに決まっている。

お兄ちゃん!?

妹が優真の名前を呼んだ。
悲しそうな、悔しそうな、そんな感情が含んだ悲痛。

有塚、もし僕の妹に手を出してみろ。ただじゃおかない!

あはははははは!

おいおい、笑わせんなよ。お前に何ができる?
今まで俺に媚びていたお前が。何も出来やしない。過去も未来も、お前は永遠に俺の奴隷なんだよ!

確かに昔からイジメられ続けた。それでも良いと思ったから。僕が苦しむだけならそれでも良かったんだ

だけど、妹に手を出すのなら話は別だよ。僕はキミを許さない!

お兄ちゃん……

あーうぜうぜ! うぜーよそう言うの! このシスコンがッ!

激情した男はさらに暴力を振るう。
そして運悪くみぞ内に拳を喰らい、優真は苦痛により地面に膝がつく。口から胃液が吐かれ、その中には血が混じっていた。

おらさっきの威勢はどうした!? 俺を許さないんだろ、ああ!? なんとか言ってみろよ!

もう止めて! 私なんでもするから! これ以上お兄ちゃんを傷つけないで!

大丈夫、だぞ。……お兄ちゃんはお前のためなら耐えて見せるから、な? 心配するな

優真ぁぁぁぁぁぁッ!

運が悪かったとしか言いようがない。
決して男にそのつもりはなかったのだ。
蹴られた顔は歪な音を響きかせて、それは首が折れたことを表していた。

い、いやぁぁぁぁぁぁッ!!

そうして優真はこの世で存在することが許されない者となった。

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