ジーク

グッ……。

- 詠唱妨害 -

 魔法の詠唱中に一定以上の攻撃を受ける、または単に攻撃を受けると、魔法の発動が妨害されてしまう。

 詠唱を伴わない通常のスキルについても同様の場合があるが、こちらは余程の事が無ければ妨害されない。

 大きく吹き飛ばされるようなスキルを使用された場合は、基本的に全ての行動が妨害される。

ジーク

クソッ、今度こそ!

レグルス

まあ待て。

 レグルスは、影の横まで戻ってきていた。しかし、影は完全にジークの目の前に陣取っているため、割って入ることはできない。

レグルス

次の攻撃なんだが、ヤクルトの目の前を狙うことはできるか?

 ヤクルトはレグルスの正面、その延長線上に立っている。

ジーク

ああ、できるが……。

レグルス

じゃあ、その地点に攻撃を頼む。

 敵の行動が始まり、影がジークを狙って武器を振り上げる。

レグルス

俺の方が早い。

 レグルスの一撃を受け、影が大きく吹き飛ばされる。
 吹き飛んだ先は、ヤクルトの目の前だ。

 待ってましたとばかりに、ヤクルトの連撃が影に叩き込まれる。

ヤクルト

トドメです!

ジーク

そういうことか……。
よし、任せてくれ。

 ジークが火球を放つ。
 影には側面への着弾となったが、トドメには十分過ぎる一撃だった。影はそのまま崩れ落ち、消滅した。

レグルス

やったな。

ヤクルト

ヘイトがジークさんに移った時はどうなることかと思いましたが、なんとか全員無事で終われましたね。

ジーク

あれは焦ったな……。
私の耐久力では、2発目を耐えきるのは不可能だっただろうからな。

ジーク

とにかく、これでクエストクリアだ。
報告を済ませるとしよう。

ありがとうございます!
おかげで助かりました。

あ、お母さん!

 大木の扉が開き、中から女性が現れた。
 女性は3人の前までやってくると、頭を下げた。

助けていただき、ありがとうございます。
見事な戦いぶりでした。

お礼というわけでは無いのですが、このペンダントを貴方に。
受け取ってください。

 女性が差し出したペンダントを、レグルスが受け取る。

レグルス

あれ、これ俺が貰っちゃっていいのか?

ヤクルト

安心してください。
僕の画面では、僕が受け取っています。

レグルス

なるほど。
それならいいか。

 メインクエストを無事終えた3人は、街へ帰還した。

ジーク

2人ともありがとう。
おかげでクエストを無事終えることができた。

レグルス

いやこちらこそ。
ジークさんが居なきゃクリアできなかったよ。

ジーク

また、君達と共に戦いたいものだ。
何かあれば、いつでも呼んでくれ。

 ジークはそう言い残し、酒場から出て行った。

レグルス

……本人の前では言い出しにくかったんだが、口調が妙じゃなかったか?
作ってる感じがするというか。

ヤクルト

感じというか、まさしく作っているんだと思いますよ。ロールプレイと呼ばれる遊び方ですね。

- ロールプレイ -

 文字通り役割を演じること。ゲーム内のキャラクターになったつもりで、振る舞いや発言をする遊び方を指す。

 アニメや漫画のキャラクターになりきりから、オリジナルのキャラ付けまで幅広く存在する。

レグルス

へぇ、そんな遊び方があるんだな。
俺達もしてみるか?

ヤクルト

なんとなくですが、僕達の振る舞いはキャラクターとそれほど乖離していないように見えますよ。

レグルス

……言われてみればその通りだ。
知らないうちにロールプレイしてるのかもな。

ヤクルト

そうかもしれないですね。

レグルス

ところで話は変わるが、さっきのペンダントって人数分あるんだよな。

ヤクルト

でしょうね。僕も持っていますし、ジークさんも持っていると思いますよ。

レグルス

仕方ないのかもしれないが、違和感あるよな。
普通のRPGなら別にいいんだが。

ヤクルト

確かに、特定の1人を対象としたストーリーは、ネットゲームとしては違和感があるかもしれないですね。

ヤクルト

レグルスさんが作るゲームでは、複数人いることを前提にしたストーリーにしてみてはどうですか?

レグルス

別に俺が話を書く訳じゃないだが。
まぁ、機会があれば相談ぐらいはしてみるよ。

ヤクルト

ともあれ、メインクエストはこれで終了です。僕はこれで落ちますね。

レグルス

ああ、俺もそうするよ。
またな。

- 落ちる -

 ログアウト、つまり、ゲームから切断することを指す。これが寝落ちになれば、ゲームを付けたまま寝てしまうことを指す。

 大抵どこにでも、寝落ちをよくしてしまう人が1人は居る。ちゃんと布団で寝ろ、と思われるかもしれないが、そういう人は布団でプレイしている。

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