【ヨハネスブルク大聖堂 教皇の寝室】
【ヨハネスブルク大聖堂 教皇の寝室】
教皇の寝所では一人の少女が薄い服一枚で震えている、目の前では裸で迫る教皇が息をあらげていた。
はぁ...はぁ...さぁ来なさい。君を天国に連れてってあげよう。
い、いや…
少女は恐怖で教皇から逃げる。
それを下卑た笑みで近寄る教皇。少女はドアの前に行きドアノブを回すが鍵がかかっていて開かない。
そんな…
ふっふっふ、捕まえた。
教皇が背後から少女を掴む。
きゃあ!はなして!
ひっひっひ!こりゃ粋がいい!朝までじっくりかわいがっ・・・・・
いでえ!?
少女は教皇の手に噛みついた。
ぐっ・・・・・このクソガキが!
怒った教皇は少女の顔を平手打ちした。
きゃあ!
大人しくしやがれ! このガキが!
教皇は少女を無理矢理ベッドに投げて、少女の上に覆い被さる。それは聖職者の仮面を捨てた醜い欲望につきうごされた人間がいた。
誰も助けにはこないぞ! さぁ私の慈愛を受け取りたまえ。
お楽しみ中のところ邪魔するぜ
ん?
後ろから声をかけられ振り向く教皇の顔を、衛兵が蹴り飛ばした。
ぐひゃっ!?
鼻の骨が折れて鼻血を吹き出させる教皇
衛兵は怯える少女に声をかけた。
おい
は、はい!?
突如現れた衛兵に声を掛けられビクリとする少女。
さっさと逃げろ。
は、はい! ありがとう!
少女は理解し衛兵に礼を告げると部屋から走って出ていった。
それを見ていた教皇は、忌々しそうに鼻を抑えて衛兵を睨んだ。
貴様!衛兵のくせに私にこのような真似してどうなるかわかってるのか!
知らんな
懲戒、いや! 不敬罪で極刑にしてやる!
それなら心配ない。俺は教会の人間じゃないしな
衛兵は着ている服を投げ捨てた。
そう、衛兵はルシファーだった。
な、何者だ貴様!
屑に名乗る名はない
え、衛兵! 衛兵! 賊だ!
しかし誰もこない。
な、何をやっておるんだ役立たず共が! 教皇である私が危ういというのに
無駄だ。この部屋には誰も入れない
チッ!
教皇は舌打ちして慌てて部屋から出ようとする。
ルシファーはそれを追いかけようともせずにただ見ていた。
そして教皇がドアに触れた瞬間・・・・・・
ぐへっ!?
見えない壁に教皇は弾き飛ばされた。
な!?なんらゃ!!!
お前が鼻血を出して唸ってる時に、
この部屋に防護結界を張らせて貰った。
なんだと!? そんな馬鹿な...
本当さ。この部屋は外界から完全に隔離されている。だから誰も入ってこれないし音も遮断されているからお前の声が外には漏れないわけだ。
ありえない!たかが人間がそんな高等魔法を使えるはずがない!
なんなら試してみるか?ちゃんと外の衛兵に聞こえるといいな。お前の悲鳴がな
ひい!?
ルシファーは剣を抜いて教皇に近づく。
く、くるな…
怯える教皇の目の前に立ちルシファーは剣を振り上げた。
じゃあな。
ルシファーが剣を振り下ろそうとした
そのとき…
その人間にはまだ利用価値がある。死なせるわけにはいかんな
なっ!?
ルシファーの背後から何者かがそう言った、
ルシファーは咄嗟に身を躱し迫るランスを避けてマントだけが串刺しになった。
くっ!
ほう、今のを躱したか。中々の手練れのようだな
白銀の兜と甲冑を身に纏い。
身の丈あるランスを軽々と扱う人物が目の前に立っていた。
しかし不自然なのは防護結界が張られてるにも関わらず、この人物はこの部屋に入っていたのだ。考えられるのは始めからこの部屋にいたということなのだが、全然気配を感じなかった。
うかつだった。まさか教皇以外の奴が、この部屋にコソコソ隠れていたとはな。
いーや。普通にあのドアから入ってきた。
なんだと?
ルシファーは防護結界をかけたドアをみると、いつのまにか結界が消失していた。
ふん、あの程度の防護結界で私を阻めると思ったか?
ルシファー、コイツハ...
ああ、この感覚...間違いない天使だ
甲冑の騎士は天使だった。騎士の天使は背中から白い翼を出して大きく拡げた。
教皇は慌てながら天使の膝元まで走ってすがりついた。
しゅ、守護天使様!どうか賊から私を御護りください!
そこの隅っこで大人しくしていろ
教皇は天使に言われ柱の陰に隠れた。
フン、この私がこのようなゴミの尻拭いをしなくてはならないのかと正直イラ立っていたところに、お前が現れた。これは僥倖とでもいうべきか
この佇まい、言動、余裕、なにより防護結界を破るほどの実力の持ち主、ルシファーは確信した。
お前、上級天使だな?
天使には三つの階級がある。
大天使
上級天使
下級天使
その中の上級天使は下級天使とは比べられないほどの戦闘力や魔力を有する。天使の中ではエリートの部類である。
いかにも、そういう貴様は我等神に楯突いているという噂のレイヴンだな…いや、ルシフェル=サタナエル!
何故俺のことを...
この前下級天使を一人殺しただろう? 太った奴だ
ルシファーには心当たりあった。
ああ、あの豚野郎か、確かに殺したな
いくら雑魚とはいえ、天使を殺せる人間はいない。それができるとしたら同族ぐらいなものだ。そうなると天使に恨みをもち、地上界にいるルシフェル=サタナエル。貴様ぐらいしかいない。
昔の名だ。エルの名はとうに捨てた。
今の俺はルシファー=サタンだ
どちらでもいい。かの有名な大罪人を殺れる日がこようとは、いい退屈しのぎになる。
上級天使は自慢のランスをクルクルと回して得意気に笑っている。
大罪人か、人との交わいに興じているような貴様に罪人呼ばわりされたくないな
交わいだと? 馬鹿をいえ、誰が下等な人間の牝などに劣情を催すか。他の天使共の馬鹿げた乱痴気騒ぎの後始末をするのがこの私の仕事だ。
屑の相手は、大変だ
ほう、私に共感してくれるのか?
上級エリートの私が下級の屑の後始末をしなくてはいけないこの苦悩が、堕天したとはいえ流石は同じ天使なだけはある。そうだ、エリートたる私が…
違う、お前のことを言ったんじゃない。
あ?
俺が大変だと言ったんだ。目の前の屑の後始末をすることがな!
き、貴様!!!
怒りに燃えた上級天使が襲いかかってきた。
ルシファーは即座に剣を構えた。
ぶつかりあう大剣とランス。
互いの武器が火花をあげ力は拮抗していた。
力は互角か・・・ならば!
ルシファーは手首を返して相手のランスを受け流した。
!?
この天使の得物はランス。
ランスは突きに特化した重量武器だ。
この武器は、剣より長い間合いや突き刺すことに特化している分、剣のように切り払いができない。
その上、これだけの大物だと取り扱いも難しく。懐にさえ入ってしまえば容易に斬れる。
相手の突きの力を利用し返したルシファーは一気に天使の懐に潜り込むんだ。上級天使も自分の武器の重さにとられ態勢が崩れている。今がチャンスだ。
ルシファーは敵のランスの特性を逆手にとったはずだった・・・・
フッ!
な・・・・に!?
ランスをいなしたはずなのに、攻撃を受けたのはルシファーのほうだった。上級天使の蹴りがルシファーの顔を蹴り飛ばしていた。
ぐっ!? こ、こいつ自分の武器の弱点を把握していやがる!!!
態勢が崩れたわけではなく、わざと崩したふりをして隙を誘ったのだ。それにまんまとひっかかったルシファーは、待ち構えていた上級天使の蹴りを顔面に受けてしまう。
シャア!!!
シャア!シャア!!!
シャア!シャア!シャア!!!
今度はルシファーの態勢が崩れた隙を天使は逃さない。上級天使はランスを構えて怒濤の突きのラッシュを繰り出した。
くそ!
ルシファーはなんとかそれを紙一重でそれを躱すが、頬と腕、そして太ももにランスの斬撃がかすった。
もらった!!!
させるか!!!
天使のランスがルシファーの眉間を貫こうと迫った瞬間、ルシファーは無理な態勢から剣を振り上げる。
そんなものに当たるか!死ねぇい!!!
なんだと!!!
当然そんな態勢からでは天使に当たるはずもない。
ルシファーが狙ったのは大物であるランスのほうだった。
鈍い金属音をあげランスを弾き、上級天使の突きのラッシュを止めた。その隙にルシファーは槍の間合いから離れ距離をとる。
くっ、おもった以上に受けてしまったか・・・
あの態勢から我が槍を狙い突きを止めたか、中々やるな。
上級天使も下がり、両者一旦間合いを取った。
ルシファーは息を整え態勢を立て直す。
そしていつでも槍の迎撃にうつれるよう剣を脇構えに構えて相手の出方を伺う。かたや上級天使は不敵に笑うと手のひらを拡げ前につきだした。
白き炎よ! 聖なる極炎にて、かの者を浄化しろ!
上級天使は五本の指先から炎の玉を飛ばした。
それをルシファーは冷静に対処し、構えていた剣を振りあげる。
ハッ!!!
ルシファーは魔剣で炎を切り裂く。
アチィアチィアチィイイイイ!?
ダーインスレイブが怒っているが、今はそんなことを気にしている余裕はない。
目の前に迫る最後の炎を弾くと、そこには急接近していた上級天使の顔があった。
何!?
煙幕(フェイク)だよッ!
ッ!!!
再び天使は突きのラッシュを仕掛けてくる。
・・・・・・・・
ルシファーは黒い片翼を出して真後ろに飛んだ。
そして飛び様に片翼から羽の矢を上級天使目掛けて飛ばす。
しゃらくさい真似を!
上級天使は炎の壁を作り羽の矢を一つ残らず燃やし尽くす。ルシファーはそこで初めて相手の強さを認識した。
こいつ・・・・・・強い!?
ここまで苦戦を強いられた戦いは、地上に堕ちてきて以来だった。それだけこの天使は強かった。
やはり上級天使なだけはあって。今までの天使とは桁が違うか。
ふん、下級の雑魚どもと一緒にするな。
相手の剣技は勿論のこと、弾いてみてわかったが炎の魔法も強力だ。この前戦った妖術士のときのように捨て身でアレを受けるのは危険だな。
攻めをこまねいているようだな。
だが考えている暇はないぞ。
上級天使はそう言い、ある場所を指差す。
ルシファーは一瞥すると、そこには炎の塊があった。
一つだけではない、部屋全体いたるところに五つもある。
さっき弾いた炎か・・・まさか!まずい!?
ルシファーはハッとした。
自分が今立っている場所は五つの炎の中心にいることに気づき、その場所から急いで離れようとする。
察したな、だがもう遅い! 焼け焦げろ!
五方向から一斉に炎の玉がルシファーに襲いかかってきた。
チッ!
避けきれない。
そう思った瞬間、
黒き深遠なる炎よ! 聖なる炎を喰らいつくせ!
突如、ルシファーの周りに黒い炎の壁が現れた。その黒い炎の壁が、天使の豪炎が打ち消した。
なぁにぃ!?
そして、炎の壁の前には蝿の兜を被るベルゼブブが立っていた。
彼は主君の危機を察して、炎の防壁でルシファーを守ったのである。
御無事ですか我が主よ
助かったぞベルゼブブ
ルシファーの中で待機していたベルゼブブが、自分の主人の危機を察して飛び出していた。
その結果ルシファーの窮地を救うことになった。
我が主よ、今の貴方では火に対する抵抗力がありません。ここは私にお任せください。
わかった。ここはベルゼブブに任せた方が賢明だな。蝿の王の力を俺に見せてくれ。
承知致しました。
ルシファーは一旦後方に下がり、蝿の兜の男、ベルゼブブが上級天使の前に立ち塞がる。
チッ! 仲間がいたとは
これより我が主ルシファー=サタン様に代わり、私が貴方のお相手をしましょう。
いきなり現れたと思ったらなんだ貴様は? 貴様が私の相手をするだと!
いかにも、主の手を煩わせるわけには参りませんゆえ
先程の炎の防壁を出したのもお前か?
一体何者だ!魔法が扱えるということは、そいつと同じ元天使か!
警戒している上級天使にベルゼブブは口を開いた。
我が名はベルゼブブ。堕天使様の眷属なり。それ以下でもそれ以上でもありません。
おかしな奴だ。しかし妙だな。貴様からは聖なるオーラを感じられん。
天使には聖なるオーラというものがある。そのオーラを感じ取ることで互いに天使だと認識が備できる。
先程の魔力なら天使ぐらいしかいないと思っていたが、何か違和感がある。
混血児特有の混ざりもののオーラがあるわけでもない、ならば人間か? いや、人間が魔法を使えるはずが...もしや、
この感覚…そうか、奇妙だと思っていたが、お前元人間だな?
……
人間でもないのに魔力を感じる。
天使か混血児でもないのなら、あるとしたら一つだけだ。
禁忌を破ったなルシフェル=サタナエル。よりにもよって人間に自分の血を飲ませたな!
だとしたらどうする?
人間に天使の血を飲ませてはならない。
そういうしきたりが天界にはある。
それを破れば、人は人ならざるモノに変わり、世界の理から外れ、世界が乱れると云われている。
憐れなことをしたもんだ。この人間は未来永劫不死者として生き続ける。そんな枷を下等な人間に与えるとは
上級天使は忌々しげにルシファーを睨む。
どこまで天界の掟を破れば気がすむのかと
その罪、ますます赦しがたい! この罪を私が滅する!
上級天使がベルゼブブに襲いかかる。
ベルゼブブは口から火炎を放射して迎撃した。
天使のなり損ない風情が、神聖なる火の魔法もどきを使うとは…小癪な!
上級天使は掌から炎を放出し、ベルゼブブの炎と激しくぶつかる。
火は私の得意な白魔法だ。貴様程度の魔力で天使である私に勝てると思うな!
上級天使の言うように、ベルゼブブの炎は天使の放つ炎に圧されていた。
ぬっ!
ベルゼブブの炎は押し負けて四散した。
直撃は免れたものの、天使の放った炎がベルゼブブの周囲を焦がし、熱気で怯んだ。
その隙を上級天使は逃さず、一気にベルゼブブまで接近し間合いを詰める。
所詮は元人間、いくら不死者の力を得ようともこの私に敵うわけがない
!?
上級天使はベルゼブブの胸をランスで貫いた。
ぬっ・・・・
フン、他愛もない
その時、ベルゼブブの身体は一気に崩れ、蝿の群に姿を変えて上級天使の身体を通りすぎた。
ぬお!?
小蝿の集団が全身にパチパチ当たり、それに怯むものの上級天使はランスを振った風圧で蝿を吹き飛ばした。そして蝿の群が人の形作ると、再びベルゼブブはその姿を現す。
・・・・・・・
なるほど…それが不死者としてのお前の能力か?
ベルゼブブの身体は蝿の群集で出来ており、群集一匹一匹がベルゼブブの本体であった。
これが不死の秘密なら実にくだらんな。物理攻撃が効かないのなら、再生できないよう肉片一つたりとも燃やし尽くせばいい。充分殺せる
上級天使は手のひらから炎を出してベルゼブブに向けようとした時に、ベルゼブブが手を前に出してそれを制止した。
ふん、命乞いか?
勝負はつきました
ベルゼブブの言葉に不信感を露にする。
なんだと?
貴方の腕に小さな傷口があるでしょう?
上級天使は自分の腕をみる。
そこには小さな傷が確かにあった。
フン、この程度のかすり傷で勝った気でいるのか?ハッハッハッ! 笑わせるな!
上級天使は大笑いしていた。
戯れ言はもういい、死ね!
清浄なる聖なる炎よ、邪悪なものを討ち滅ぼ・・・
がっ!?
天使が炎を飛ばそうとした時、強烈な激痛が走った。
が・・・がが・・・なんだ......今の激痛は?
急な痛みでたまらず炎の魔法を止めてしまった。
貴様、何かしたのか?
言ったでしょう、勝負はつきましたと
ふん
気にする必要なんかない。
こいつらからダメージを受けてはいない
ただのハッタリだ。今の痛みも気のせいだ
清浄なる聖なる炎よ、邪悪なも・・・
再び炎の魔法を出そうとすると、また激痛が走った。
ぎゃうげぎゃ!?
無駄なことはお止めなさい。勝負はついたのですから
な、舐めやがって!
清浄ながはぉつぱべ!!!
上級天使は無理矢理炎を出そうとしたとき、
口から大量の血を吐血した。
ガフッ! ガフッ! ゲホッ!?
何故・・・俺は吐血している?
それにこの激痛は気のせいなんかじゃない。
天使は自分の身に何が起きたのか理解できず、吐血した口を手で抑えた。
そして血に濡れた手のひらをみると、そこには血の中でピチピチ跳ねている大量の蛆虫がいた。
ぐほっ…なんだ…これは…
何故俺の口から蛆虫が出てきた?
俺の身体に一体何が…
混乱している天使にベルゼブブは語り始めた。
貴方の傷口に私のハエが卵を産み付けました。貴方の中で成長した蛆が内部から食い破るでしょう
馬鹿な!? そんなわけグッガ!!!
床にぶちまけた血の中には蛆虫がいた。
やがて身体の中で何かが蠢いて、骨を削るような音が聞こえた。
ぎゃ...ぎゃあああああ! 俺の俺の身体の中に蛆がぁぁぁぁぁぁ!!!
やめろ! やめてくれぇぇぇぇ!!!
理解するしかなかった。
こいつは! この蝿野郎はッ!
よりにもよって蛆虫を俺の体内に埋め込んだんだ!
どうですか?身体の内側から喰われる心境は?
がふっがふっ...あがっ...き、貴様・・・卑怯だぞ!
古来より兵法には毒が使われます。毒とはまた違いますが貴方の内から死に至らしめる点では毒も蛆も大差ないでしょう。
が、があああああああ!!!
もう身体の自由が効かない。
上級天使は膝をついて、至るところから血を吹き出させていた。
あががが…俺が…上級天使である、あががが……この俺が…人間ごと……きに…人間如きにィィィィィ!
上級天使の上半身が破裂した。
中からでかい蛆が四、五匹天使の身体を食い破り表に出てきていた。
これが我が主の眷属たる私の戦い方です
上級天使の下半身だけが床に倒れる。
天使はベルゼブブの前に敗れた。ルシファーは微笑みかけた。
見事だったベルゼブブ
お褒めに預かり光栄です
その光景を見ていた教皇が絶叫していた。
て、天使様が!?そんな馬鹿な!
上半身がなくなった死体を見て怯える教皇。
そんな教皇の前にルシファーとベルゼブブは立っていた。
さて
・・・・・・・
ひい!?
二人は教皇を見下ろしたまま、黙っていた。
わかるのは命乞いしても無駄なことぐらいだろう。
わ、私は教皇なんだぞ!凄く偉いんだぞ!お前らわかっているのか!私に手を出せば死ぬまで追われる身だ!
教皇としてのプライドの高さ故か、この状況でも虚勢を張っている。
ほんと、酷い豚だ。
ベルゼブブ
なんでしょうか我が主
お前レアとミディアムどっちが好きだ?
レアですね。蝿は焼いた肉より生のままのほうが消化がしやすいので
じゃあ生きたままジワジワと弱火で頼む。あっさり死なないように
承知しました
ベルゼブブから放たれた炎か教皇を焼いた。
ぎゃああああああああああ!!!
魔女狩りで殺された者たちが味わった苦しみをその身でもって味わえ。
ルシファー達は教皇に、生きたまま火あぶりにされた娘たちの苦しみを身を以て教えた。
【広場】
翌日、北東の街の広場には人だかりができていた。
号外!号外だよ!教皇様があの悪名高いレイヴンに殺されたよ!
またレイヴンか、これで何人目だよ
だけど教皇が死んだことにより魔女狩りもなくなるんじゃないか?正直、魔女とはいえ女子供が張りつけにされて火炙りされてるのは見ていて嫌だったよ
おい、滅多なこと言うと教会騎士団に反逆罪で取っ捕まるぞ!
でも、教皇様不在でこれからこの世の中はどうなってしまわれるのか...
なんでも新しい教皇が選任されるそうだ。歳は18と随分若いそうだが
おい見ろレイヴンの懸賞金がまたハネ上がったぞ!
へっへへ、レイヴンの首を取れば一生遊んでくらせるな
また一つ、レイヴンの悪名が広まっていた。
そんなことも露知らず、遥か上空にはベルゼブブに股がったレイヴンこと、ルシファー=サタンがいた。
ルシファー様、次はどこに行きますか?
そうだな、西の方角に強い人の嘆きを感じる。もしかしたら我らの仲間に加わってくれる者がいるかもしれない。
巨大な蝿のベルゼブブは旋回し西の方角に向けて空を飛ぶ。そんな中、ルシファーは手に携えた剣が珍しく茶々を入れてこないことに気づいてダーインスレイブを見ると、ダーインスレイブは不機嫌そうにしていた。
なんだまだ怒っていたのか?そんなに不機嫌なら上級天使と教皇の血を飲めばよかったじゃないか
アンナ蛆ガ混ジッタノト、丸焼ケノ血ナンカ飲メルカ
全く、剣のくせにグルメだな
気難しい魔剣を放っといてルシファー達は西の地を目指した。いつの日か神を討つために一行は旅を続ける。