【ゼバル家領地の村 エクロン】


ゼバル家を滅ぼしてから数日…

今日も雨は降っている。
あれから連日のように雨が降っていた。
まるで五年分の雨を降らしているようだ。


夜の村を雨音が響く。

ん? 外が騒がしいな

村人が窓を覗くと、
そこには黒い影のようなものが近づいてきた。

なんだありゃあ…

 迫り来るハエの軍団に村人は恐怖した。

は、蝿だ!?

 窓をぶち破ったハエの群れが一斉に村人達に襲いかかる。


ハエは村人の口から耳や鼻、穴という穴の中に入り込み体内に侵入していく。


そしてハエが出す消化液で、村人の内部から溶かしていった。

ぎゃああああああ!!!


ドロドロに溶けていく村人。


村が混乱の中、殺人蝿の群れの中心に人の姿があった。

紫のローブ、その上にショルダーメイルを着け兜を被っている人間が平然と殺人蠅の中にいる。


いや…あれは、本当に人間なのか?


その兜はまるで蠅を想像させるようなデザインであった。


蝿のような兜を被る人物は口から大きな火炎を吹くと、村一帯は業火に包まれた。

ぎゃあああああああ!!!

 阿鼻叫喚の声が村全体に響いた。
 家は燃え盛り、村人は蝿に襲われる中、
あのリーダー格の男が蝿の群衆に襲われながら飛び出してきた。

リーダー格の男

ひ、ひいい!? た、助けてくれぇ!

 リーダー格の男は這うようにしながら目の前の男の足元にすがりつく。

リーダー格の男

だずげで…

 リーダー格の男は見上げると、そこにいた男は冷酷な笑みを浮かべていた。

ルシファー=サタン

・・・・・・・・・・・

リーダー格の男

お、お前は!?

ルシファー=サタン

・・・・・・・・・・

 黒き片翼を持ったその男の冷笑は背筋を凍らせるほどにおぞましかった。

リーダー格の男

だずげ…ぶへらっ!?

 蝿の群衆は消化液を吐き出しリーダー格の男を溶かした。
 


村人は全員死に絶え、燃えていく村を
ルシファーと蝿の兜の人物は静かに眺めていた。

ルシファー=サタン

気高き館の主よ、満足したか?

 ルシファーは蝿の兜の人物に問うた。

ベルゼブブ

いえ

ルシファー=サタン

・・・・・・・・・

ベルゼブブ

仇を討ったところで息子は帰ってきませんので...

ルシファー=サタン

そうか…

 村人に復讐を果たしても愛する者が戻ってくるわけではない。

復讐を果たした後にあるのは空虚だった。
そう考えるとルシファーも蝿の男と同じだった。

ベルゼブブ

ですが・・・

ベルゼブブ

人を救う義務を怠った神にも、私の苦しみを味あわせたいと今は考えております。

ルシファー=サタン

フッ、それならすぐ叶うことだろう。
我が道を共に歩めばきっとな

ベルゼブブ

天使様…いえ、堕天使様についていきます。

ルシファー=サタン

蠅の王ベルゼブブよ。今後は頼りにしているぞ。我が眷属よ。

ベルゼブブ

承知致しました、ルシファー=サタン、
我が主よ・・・・

ルシファーの旅に、また一人
神へ反逆する味方が加わった。



蝿の王ベルゼブブ



後に彼は悪魔王と呼ばれ、
魔王サタンの右腕として後世に語り継がれることになるだろう。

暴食のベルゼブブ  第五節 蠅の王

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