責田 好(せめだ こう)

今日は外で体育か~。
はあ、かったりぃなぁ

美家 王子(びいえ おうじ)

うん……

美家 王子(びいえ おうじ)

(うー……。
寝不足で頭がボーッとする。
体育の授業キツイなあ……)

責田 好(せめだ こう)

おいっ、王子。
フラフラしてるけど
大丈夫か?

美家 王子(びいえ おうじ)

あー、だいじょぶだいじょぶ。
眠いだけだから

責田 好(せめだ こう)

最近、寝てないって
言ってたよな。
無理すんなよ?

美家 王子(びいえ おうじ)

わかってるって……

クラッ…

美家 王子(びいえ おうじ)

(あっ、やばい。
目の前が真っ白に……)

責田 好(せめだ こう)

王子?!

大丈夫か美家!

美家 王子(びいえ おうじ)

あ、先生……

責田。
美家を保健室に
連れて行ってやれ

責田 好(せめだ こう)

はい、わかりました!

責田 好(せめだ こう)

保健の先生~!
王子が倒れたんですけど……。
あれ?

美家 王子(びいえ おうじ)

どうした?

責田 好(せめだ こう)

先生がいない。
しょうがねえな、
先生が戻って来るまで
ベッドに横になってろよ

美家 王子(びいえ おうじ)

でも……。
ただの寝不足なのに、
ベッド借りていいのかな……

責田 好(せめだ こう)

寝不足のせいで
貧血になってんじゃねえのか?
いいから寝てろよ

美家 王子(びいえ おうじ)

うん……。
ありがとう、コウ

責田 好(せめだ こう)

お礼なんかいいって!
んじゃ、俺は授業に戻るから。
ゆっくり寝ろよ?

美家 王子(びいえ おうじ)

わかったよ

美家 王子(びいえ おうじ)

ふう……

美家 王子(びいえ おうじ)

(目が冴えちゃったな。
とりあえず目だけ
閉じておくか)

美家 王子(びいえ おうじ)

(ん?
先生が戻って来たのかな?)

喜連 稲仁(きれ いなひと)

王子くん……寝てる?

美家 王子(びいえ おうじ)

あれ、喜連先輩?
どうしてここに?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

窓から校庭を見てたら、
王子くんが倒れたのが見えて……
心配で来ちゃった

美家 王子(びいえ おうじ)

わざわざ俺なんかのために
来てくれたんですか。
すみません……

喜連 稲仁(きれ いなひと)

あはは、気にしないで。
授業サボりたかった
ってのもあるし

美家 王子(びいえ おうじ)

ははっ……

美家 王子(びいえ おうじ)

(今朝、冷たい態度を取った俺に
こんなに優しくして
くれるなんて……)

美家 王子(びいえ おうじ)

(藤吉さんのことで
くだらない嫉妬なんかして、
俺……馬鹿みたいだな)

喜連 稲仁(きれ いなひと)

倒れたから心配したけど、
思ったより元気そうだね

美家 王子(びいえ おうじ)

はい。
午後の授業までには
復活できると思います

喜連 稲仁(きれ いなひと)

そう? 良かった

喜連 稲仁(きれ いなひと)

…………。
ところでさ、王子くん

美家 王子(びいえ おうじ)

なんですか?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

あの藤吉さんって女の子、
王子くんの友達なんだよね?
友達を奪ったみたいに
なってごめんね

美家 王子(びいえ おうじ)

そんなこと無いですよ!
喜連先輩が
謝ることじゃないです

喜連 稲仁(きれ いなひと)

でも……。
ちょっと怒ってたでしょ?

美家 王子(びいえ おうじ)

うっ。
そ、そんなことは……

喜連 稲仁(きれ いなひと)

せっかく王子くんと
仲良くなれそうなのに、
距離置かれたら嫌だな
と思ってたんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

大丈夫ですよ。
そんなことくらいで
距離置いたりしませんって

喜連 稲仁(きれ いなひと)

本当?

美家 王子(びいえ おうじ)

(喜連先輩が、
俺の顔の横に手を突いた?)

美家 王子(びいえ おうじ)

(それに、
段々と顔が近づいてる
ような……)

喜連 稲仁(きれ いなひと)

顔が赤いね?
熱があるんじゃない?

美家 王子(びいえ おうじ)

(おでこを
くっつけられた!
鼻の頭がこすれあって
くすぐったい……)

美家 王子(びいえ おうじ)

(こんなに顔が近いと、
間違って唇が触れちゃいそうだ)

美家 王子(びいえ おうじ)

ね、熱は無いと思います。
実は、ただの寝不足なんです

喜連 稲仁(きれ いなひと)

なんだあ。
心配して損したな

美家 王子(びいえ おうじ)

本当にすみません

美家 王子(びいえ おうじ)

(あ、あれ?
指の間に、喜連先輩の指が
滑り込んできた……?)

美家 王子(びいえ おうじ)

あ、あのっ。
この繋ぎ方、ちょっと
くすぐったいです……

喜連 稲仁(きれ いなひと)

くすぐったいって、
こことか?

美家 王子(びいえ おうじ)

わっ!
指の間、くすぐらないで
くださいよ!

喜連 稲仁(きれ いなひと)

あはは、ごめんね。
可愛くて、つい

美家 王子(びいえ おうじ)

喜連先輩って、
意外とスキンシップが
好きなんですね

喜連 稲仁(きれ いなひと)

王子くんを見てると
触りたくなっちゃうんだよね。
なんでかな?

美家 王子(びいえ おうじ)

(喜連先輩がベッドに
身体を全部乗せて、
覆い被さってきた?!)

美家 王子(びいえ おうじ)

き、喜連先輩?
気のせいかもしれませんけど
この体勢って……

喜連 稲仁(きれ いなひと)

僕が王子くんを
襲ってるみたいに見える?

美家 王子(びいえ おうじ)

ははは……。
ちょっと見えますね

喜連 稲仁(きれ いなひと)

嫌なら抵抗してもいいよ

美家 王子(びいえ おうじ)

なんで抵抗する必要が
あるんですか?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

だってこのまま、
変なことされてもいいの?

美家 王子(びいえ おうじ)

わ、わかってますよ。
ふざけてるんですよね?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

ふざけてる?

美家 王子(びいえ おうじ)

喜連先輩が、
俺に変な気を起こすわけ
ないじゃないですか

喜連 稲仁(きれ いなひと)

はあ……。
いくらなんでも
警戒心なさすぎだよ

喜連 稲仁(きれ いなひと)

わかってる?
僕だって男なんだよ?

美家 王子(びいえ おうじ)

……へ?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

可愛い子がベッドで
無防備に横になってたら、
イタズラしたくなっちゃうよ

美家 王子(びいえ おうじ)

イタズラ?!
俺が男だってこと
忘れてないですか?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

忘れてないよ。
でも、王子くんだけは
特別みたい

美家 王子(びいえ おうじ)

俺が……特別?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

うん、特別……

美家 王子(びいえ おうじ)

(頬を撫でられてる。
恥ずかしいような、
気持ちいいような……)

喜連 稲仁(きれ いなひと)

僕ね……たまに、
女の子みたいって
言われことがあるんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

た、確かに中性的で
綺麗な顔ですけど

喜連 稲仁(きれ いなひと)

だよね?
だからこれからすること、
女の子にされてるって
思ってもいいよ

美家 王子(びいえ おうじ)

ちょ! 何を?!
そんなとこに手を
入れないでくださっ……!

喜連 稲仁(きれ いなひと)

チュッ

美家 王子(びいえ おうじ)

んぅ……!

喜連 稲仁(きれ いなひと)

チュッ……んっ……

美家 王子(びいえ おうじ)

んんっ……

美家 王子(びいえ おうじ)

(唇……柔らかい……。
それにまつ毛、長いな……)

美家 王子(びいえ おうじ)

(喜連先輩が変なこと言うから、
本当に女の子にキスされてる
ような気分になってきた……)

喜連 稲仁(きれ いなひと)

チュッ……チュッ……

美家 王子(びいえ おうじ)

だ、ダメですって!
先生が戻って来たら
どうするんですか?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

安心して。
鍵はかけてあるから

美家 王子(びいえ おうじ)

そういう問題じゃなくて!

喜連 稲仁(きれ いなひと)

…………

美家 王子(びいえ おうじ)

…………?
急に黙って、
どうしたんですか?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

居るんでしょ?
出ておいでよ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

どうしてバレたんでしょうか?
息を潜めて完璧に
隠れてたはずなのに!

美家 王子(びいえ おうじ)

(隣のベッドの下から
藤吉さんが出てきたー?!)

喜連 稲仁(きれ いなひと)

いつからそこに居たの?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

BL王子が来る前からです

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

先生~。
美術の時間に、彫刻刀で
指を切ったんですけど……

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

あ、先生がいない。
……と、いうことは

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

無人の保健室で
BL妄想を繰り広げる
チャンス?!

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

まずはベッドで横になって
妄想しよーっ♪

大丈夫か?

うん、大丈夫……

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

(はっ! 扉の向こうから
男子二人の話し声が?!
入って来る前に隠れなきゃ!!)

責田 好(せめだ こう)

保健の先生~!
王子が倒れたんですけど……。
あれ?

美家 王子(びいえ おうじ)

どうした?

責田 好(せめだ こう)

先生がいない。
しょうがねえな、
先生が戻って来るまで
ベッドに横になってろよ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

(BL王子と責田くん!?)

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

──というわけで、
ベッドの下で息を潜めて
隠れていました

美家 王子(びいえ おうじ)

なぜ隠れる必要が……

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

私の第六感が、
素敵な展開が待ち受けていると
訴えかけていたからです!

美家 王子(びいえ おうじ)

はい?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

私としてはBL王子と
責田くんのイチャイチャを
期待してたんですけど……

喜連 稲仁(きれ いなひと)

期待してたら、責田くんが
すぐに出て行っちゃったわけだ?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

はい……でも!
喜連先輩が来たので、
結果オーライです!

美家 王子(びいえ おうじ)

そんなことは物凄く
どうでもいいんだけど、
指の怪我は大丈夫なの?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

こんなの唾つけときゃ
治ります!

美家 王子(びいえ おうじ)

そ、そう

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

それにしても、
私は自分が恐ろしいです

喜連 稲仁(きれ いなひと)

恐ろしいって、何が?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

まさか本当に、
目の前で素敵な展開が
繰り広げられるなんて……

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

ひょっとすると私には、
妄想を具現化させる能力が
あるのでしょうか?!

美家 王子(びいえ おうじ)

藤吉さんが
一番持っちゃいけない能力だね

喜連 稲仁(きれ いなひと)

あはは、僕には藤吉さんの
言ってることが
よくわからないよ。
王子くんは動じなくて
すごいね?

美家 王子(びいえ おうじ)

実は俺もわかってませんけど、
いつもこんな感じなので
耐性ができました

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

さあ二人とも、
早く続きをしてください!

喜連 稲仁(きれ いなひと)

さすがにこの状況では
続けられないな。
ごめんね?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

ええ~!
もうちょっと根性だして
いきましょうよ!

喜連 稲仁(きれ いなひと)

あはは、何それ。
運動部のマネージャーみたい

美家 王子(びいえ おうじ)

(嫌なマネージャーだな……)

喜連 稲仁(きれ いなひと)

それじゃあ藤吉さん、
そろそろ行こうか?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

もう行くんですか?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

王子くんをゆっくり
寝かせてあげないと。
まあ、邪魔した僕が言うのも
なんだけどさ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

そうですね……。
朝から顔色悪かった
ですもんね

美家 王子(びいえ おうじ)

藤吉さんにも
心配かけちゃったみたいで、
ごめんね?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

いえ、いいんです。
それじゃあ失礼しますね、
BL王子

美家 王子(びいえ おうじ)

うん。
またね、藤吉さん

喜連 稲仁(きれ いなひと)

僕も行こうかな。
……あ、そうだ

美家 王子(びいえ おうじ)

ん?

喜連 稲仁(きれ いなひと)

王子くんが特別っていうのは
本当だよ。
王子くんにとって、
僕も特別になれたら嬉しいな

美家 王子(びいえ おうじ)

(ほ、ほっぺたに
キス?!)

喜連 稲仁(きれ いなひと)

おやすみ、王子くん

美家 王子(びいえ おうじ)

…………

美家 王子(びいえ おうじ)

(ほっぺたにまだ、
唇の感触が残ってる)

美家 王子(びいえ おうじ)

(こんなの、
寝れるわけないだろー!)

第17話 綺麗な人は百合系男子 - 後編

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